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先の関白二条晴良

永禄十一年 五月 京都 二条邸


いや、ごめん。そんな隠れた有名人とは思わなかった。お義父さん。


ぶっちゃけね。いや藤子は大事にしているよ!?もちろん。そういう意味ではなくて、面倒くせえなあって感があって、そこそこお偉いお公家さんだろうってレベルだったんですよ。実は。


いやあ、藤子を悲しませるわけにもいかないから、見た事ないお義父さんでも必死で守ります。たしか、近衛前久の政敵で、信長の不興をかって、入れ替わる様に前久が朝廷にもどってきたんだ。


要するに好き嫌いで人事を異動できる力を信長が持つ前に、根回ししておこうって事だ。今のところは四月に越前一乗谷で、足利義昭(秋)の元服式に招かれているから、義昭の心証はいいはずだ。


昨年、永禄十年の八月に藤子と結婚してからだから、約一年ぶりになるのだろうか。藤子にも会わせてやりたいな。すぐ近くだし、問題はないだろう。


「おおお、藤子よ!心配しておったぞ。何度も文には書いておったが、息災であったか?不自由はしておらぬか?」


過保護っぷり丸出しの義父上、二条晴良である。先の関白だろうが准三宮だろうが親は親。かわらないなあ。


「ええおもう様、弾正大弼様にはよくしていただいておりますのよ」。

ん?どうしたお藤。別人か?なんだかおかしい。横にいる常陸介も苦笑いしかない。なにせ「ひい」だからな。笑える。


「弾正大弼どの、藤子はこう言っているが、本当か?」


「もちろんです。准三宮様。藤子はわたしにとってかけがえのない女子にございます」。

「それから准三宮様。弾正大弼は堅苦しいので、純正とお呼びください。義父上なのですから」。


義父上はニコニコと笑顔だ。父上とはまったく違う。気苦労を重ねているが、公家としての矜恃を保つために、その立ち居振る舞いはいっそう気品に満ちていた。伏魔殿の朝廷で、あの近衛前久とバトルを繰り広げるんだ。暗愚であろうはずがない。


「そうか。それでは遠慮なく純正と呼ばせていただこう。詰め所の他にもなにやら鐚銭を集めたり、店を洛中いたるとこに開いたりで大忙しじゃな。何か考えている事でもあるのか?」


「はい、京の町をより一層華やかに元気にしとうございます。そのためには人が必要です。乱にて都を去った人たちに戻ってもらい、賑やかにするために銭をたくさん使ってもらおうかと考えております。使う銭が増えれば店も商人も潤います。そうやって銭をどんどん使ってもらう事で、商人が集まり町民が集まり、さらに良い流れにて都が栄えるのです。日の本の都が安全であれば、それは必ず地方にも波及しますゆえ」。


それから、僭越ではございますが、これからも天下安寧のため、朝廷への貢献を続けて参りとうございます。五月はもう終わりますゆえ、六月の御贖物(みあがもの)から今後すべての年間の宮中行事の費用を御用意いたしましょう。


他に都度必要があればご用意いたします」。


「純正の忠義、誠に感謝する。しかしありがたい話だが、麿にはそこまでしてもらって返す物がない。官位を帝に上奏して、叙任が叶うようはからうくらいじゃ」


「勿体ない事です。それで充分でございます。つきましては、今後の朝廷とのやり取りが行いやすい様、わが叔父常陸介に従六位上治部少丞、わたしの補佐をしていただきよく領内をまとめている、わが父兵部小禄に従五位下弾正少弼を賜りますようお願いいたします」。


「あいわかった。その様に上奏いたそう」。


終始円満に終わった。

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