奮闘!深沢義太夫勝行
永禄八年 十一月 小佐々城 主殿 深沢勝行
「なに!有馬と大村が伊佐早の西郷殿を攻めているだと?」
俺は総司令官代行で小佐々城に詰め、いわゆる城代として総司令官の任についていた。純正には、俺がいない時は全権を委任する、と言われている。
全身に緊張がはしり、手に汗握る。もう、沢森城で冗談を言い合っていた頃とは違うのだ。お互いに責任のある立場にいる。
海軍卿で海軍総司令、そして今は陸軍も含めた守備軍全軍の総責任者だ。
「よし、まずは小佐々砦の第二艦隊、陸軍の兵はおらぬが、水兵を陸戦隊として三城城の攻略に向かわせろ!艦砲で叩き伏せて、その後上陸、そして占拠だ!水兵でも陸戦ができるところを見せてやれ!いかなやつらとて、本拠が攻撃されれば浮足立つであろう。艦砲射撃と水兵の上陸が終わったら、攻城戦が始まり次第七ツ釜へ向かい、陸軍兵を乗せて再度大村湾へ。もっとも近い津水村から上陸して高城城をめざせ。」
まずは余剰戦力である大村湾の艦隊を動かした。
「よし、次は第一艦隊、漕手と操船人員のみ残して全員降ろせ!そして第四、第五連隊の兵を乗せられるだけ乗せろ!歩兵と弓兵・鉄砲隊だけでよい。津水村上陸後、高城城救援に向かわせる!」
「それから船で平戸の第三艦隊にも連絡!急ぎ七ツ釜に向かい、第四第五連隊の残りを乗せて津水村に上陸させよ。高城城へ行かせるのだ。」
「急げ急げ急げ!三歩以上は駆け足!急げ!速さを最優先にしろ!」
俺は檄を飛ばす。
間に合ってくれ!頼む!間に合ってくれよ!
「申し上げます!旧平戸家臣らによって箕坪城落城!反乱軍はその勢いをもって川内峠を越え、平戸湊に向かっております!」
(なに!?純正の言う通りになったか!)
兵を残しておいて良かった。何とか踏みとどまってくれ!
時間を稼いでくれれば、兵を上陸させた後、海軍の艦隊で援護に向かえる。
「申し上げます!五島の宇久純定、水軍を北上させている由にございます!」
「なに?!宇久が?間違いないのか?」
宇久は俺たちと盟は結んでいないものの、関係は良かったはずだ。目立ったいさかいもなかった。なぜ敵対するのだ?
「もう一度確認してこい!誤報ではないのか?」
「はは!」
(頼む、誤報であってくれ!たらればを頼みにするなんて俺らしくはないが、もし本当だったら、平戸の第二連隊は孤立する。武器の差ではじめは優勢かもしれんが、時間がたてば不利になる。)
(すまん、今すぐ兵を回す事はできんのだ。頼む、踏ん張ってくれ。)
三個艦隊のうち、第一艦隊は往復して七ツ釜の残りの砲兵・騎兵を津水村へ上陸させる。残りの二個艦隊は七ツ釜で水兵を乗艦後、第二艦隊は平戸の救援に、第三艦隊は南下、有馬の口之津、日野江城の攻略に向かう。
(純正、こっちは今できることはやった。後で追求するならしてくれ。後悔は、ない!)
※津水村
つみずむら
長崎県:諫早市津水村 [現在地名]諫早市津水町
真崎村の南に位置し、東大川河口部に位置する。大村湾に臨み、近世は諫早の交通の要衝であった。文禄の役では龍造寺家晴が当地の津より乗船したと伝える。
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出典:国土地理院ウェブサイト (https://maps.gsi.go.jp/#10/32.883624/129.865265/&base=blank&ls=blank&disp=1&lcd=blank&vs=c0g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1)