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回り始めた歯車

広い店内で、営業の為の、仕込みをしていた里美は、いきなり、


扉を叩く音に、驚いた。


まだ4時だから、お客が来るはずがない。


恐る恐る扉に、近づき、


「はい…どちらさまで…」


用心深く、少しだけ、扉を開けると、


そこには、初老の男が立っていた。


きちんとしたスーツ姿で。


老人は、微笑みながら、


「こちらに、香月明日香さんは、ご在宅かな?」


(香月…)


里美は、眉をひそめた。


それは、明日香の旧姓だった。


余程の知り合いでないと、香月と呼ぶものはいない…。


里美は、訝しげに老人を見、


「生憎、留守にしておりますが…」


その言葉に、老人はさらに微笑み、


「まだアメリカから、戻っていませんか…」


(アメリカ!?)


里美は、心の中で驚いた。


「もう帰ってきてると、思ったのですが…いやはや…早すぎましたな…」


里美は、まじまじと老人を観察した。


老人も、里美を見る。


里美は、老人の瞳の奥に、鋭いものを感じた。


それでも、老人から笑みは消えない。


「それでしたら…」


しかし、老人の瞳の奥の鋭さは、増していく。


「香月香里奈さんは、いらっしゃらないかな?」



「香月…香里奈…」


里美は、名前を呟き、


その言葉の響きと、老人に危険なものを感じた。


「そ、そんな人はいません!」


里美は、頭を下げると、急いで扉を閉めた。



しばらく、扉を押さえていたけど、外から反応は、なかった。


何の反応もないのを、確認しても、一応、里美は、店の鍵を閉めた。


ほっとして、カウンターに座り込む。


だけど、


ガチャガチャと音がして、


なんと、扉が開いていく。


里美ははっとして、身構える。


扉が、ゆっくりと、開いていく。


建て付けが悪いのか…ギギィと音をたてながら。



里美は、息を飲んだ。


閉めたはずなのに…


扉が開く。




まだ明るい光が、外から入ってくる。


「ただいま…」


店に入ってきたのは…


香里奈だった。


「おばさん!いたんだあ!」


香里奈は、里美を見つけ、


「鍵閉まってるから…どこか出かけたと、思った」


里美は、安堵の息をつくと、カウンターに腰を下ろした。


「脅かさないでよ…」


香里奈は、首を傾げる。


「どおかしたの?」


里美は、ズボンの後ろポケットから、タバコを取り出すと、火をつけた。


「ちょっと…変なおっさんがいたから…」


「おっさん?」


「いや…大丈夫よ…」


里美は、つけたばかりのタバコを灰皿に置くと、


少し落ち着いたようで、席を立った。


「おかえり…コーヒー飲む?」


「うん!」


香里奈が頷くと、


里美は、カウンターに入り、コーヒーの用意を始めた。



(だけど…誰だったのかしら…)


里美は、コーヒーをいれながら、考えたけど…


(明日香の知り合い…?)


里美は首を捻り、


(あんなおじさんが…)


ファンではなさそうだった…。


(親戚の方かしら…)


いや…


明日香には、お母さんしかいなかった…。


親戚がいると、聞いたことはない…。


母子家庭だったはずだ…。


里美は、カップから、コーヒーが溢れそうになるのに気づき、慌ててポットを上げた。





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