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堕ちた天使

志乃の心の奥から、染みでたもの…。


(お姉ちゃん…)


裸の百合子。


そして、だんだんと暗闇から姿を現す。



啓介。


二人は絡み合う。


百合子は志乃を見、フッと笑うと、


啓介とキッスをした。



(いやーーーーーっ!!!)


小さな子供となった志乃が、絶叫する。


いや…


お姉ちゃんとなんて…。


いや、


いや、


いや、いや、いや、いや、いや、いや、いや。


志乃涙を流しながら、


堕ちていく。


憎かった。


殺したかった。


お姉ちゃんを…。


あたしの愛する


男を奪った女。


あたしを選ばなかった…


男…。



みんな…


憎かった。





絡みつく…サックスの音が…


志乃の全身を包んだ時、


志乃の心は、秘めていた思いとともに、


堕ちていった。






「志乃…」


ギターを持ったまま、大輔は倒れた。


他のメンバーも、気を失っていた。


手を伸ばす大輔の目に、


サックスを吹き続けるKKと、

崩れ落ちる志乃が映る。


「志乃…」


目がぼやけ、視界が真っ白になる。


意識が消える瞬間…


大輔の目の前に、啓介がいた。


その向こうに、


マイクを持った明日香が…。



LikeLoveYou…。


そうか…。



俺は、LikeLoveYouのステージにいるのか…。


明日香が、大輔の方を見て、微笑む。


今まで…


夢だったんだな…。


何だ…。


俺は、LikeLoveYouにいるじゃないか…。


よかった…。


明日香を見つめながら、


大輔は、夢の中に墜ちていった。






「KKの音は、心の傷に話しかける。深い傷をもつ者程、墜ちやすい」


ジャックは、耳栓を確かめた。


これがなければ、自分とて危ない。


「これでほしかったものが、手にはいったわ」


ティアは、ステージを見つめながら、


「KKと演奏ができるバンドと…全面に出て、バンドの顔となる」


「歌姫という…傀儡」


崩れ落ちた志乃と、


大輔たちが立ち上がる。


「さあ!始めなさい」


ティアが、ステージに近づく。


「今、全米で流れているあなたたちの曲!」


志乃は、マイクを握りしめる。


「KKを加え、新たなるステージへ!」


志乃たちは、演奏を始める。


KKのサックスが、演奏に参加した。


それは、とても素晴らしい音だった。


音だけを、感じることができたら…。







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