のぼりとさん
のぼりとさんなのか、のぼりどさんなのか、遂にわからなかった。彼女は赤い月を突き破って消えたのだ。タコのようだと言ってもよかった。が、それが蛸なのか凧なのかもよく
わからない。秘密の卑彌呼。それが彼女の最後の言葉。ちょっとエロい言葉だなと思った。それが私の最後の思考。のっぴきならない。のっぴきならない夢を、私は思う。夢は
思うものだろうか? 花は咲くものであるように? 薬罐がピイピイ哭き出しても、私の耳に、それは聞こえているだろうか? 届け、届けよ、宝くじ。病気のように、いつか、町へ。
商売をはじめよう。さて、私の前には転校生がある。いつか遠い昔に忘れ去られた転校生だ。それを文字通り、転がして、学校で、生にする。夏だ。暑い。寒い、言葉。言葉は、
寒い。
音のくねくね
あはん
音のくねくねくね
あはっはん
宝くじは届いたか? そろそろ届く頃だ。ころころと、転がって、届いてくる頃だ。ナポレオンフィッシュがどんな姿をしているか私は知らない。私は知らないことだらけだ。
坂道を下るように頑張って、登って、つまりは、夕陽の向こうから、彼女がやってくる。噂の彼女だ。つい先日までTVで持て囃されていた、彼女だ。それは私ではない、悔しいことに。
夕焼け空から降りてきた、タコのような物体と、彼女が合体する。だからつまりは登っているのか、下っているのか、わからなくなる。そこへ飛び出したたぬき。
思わず声が出る
フォア!
お裁縫が終わったら、お弁当を食べませんか? 何が入っているかは開けてみてのお楽しみ。パンドラの匣によく似たそのお弁当箱に、もしかしたら中身は食べ物ではない
かもしれないと思ったその時、空を見よ! 何もない!
坂道を登るように、やすやすと、スピードが出すぎてしまう、その心配もなさそうに、汗を拭くこともなく、足を動かすこともなく、彼女がやってくる。そんな彼女が、
のぼりとさんなのか、のぼりとさんなのかは、遂にやっぱり、わからない。
そして
秘密の卑彌呼は
繰り返す