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乞丐
坊主が憎い。坊主が憎い。
そう言って睨んでくるーーもんだから、往来の人々は困っていた。
すると一人の青年が、
「彼奴の側を横ぎる時などは、匂いの強い食物を持参すると良い」
と吹聴した。しかし効果は無くーーそれどころか、彼奴はいっそう敵意を向けた。
この臭いさえも袈裟さえも……憎くて憎くて堪らん。酷く、非道な、昔を顧みる悲しき臭い。それが俺に。
彼奴の声は泣いていた。
しかし人間には、
「うるさいわね、全く」
「この犬畜生が」
「可哀想に」
ワォォォンとしか聴こえない。