表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不幸はいかが  作者: たらず様
6/14

ならく知らず


幸福はいつの間にか死んでいた。

不幸だけが生きていた。だから幸せになる為に私は。

『今度ばかりは乏しい、幸せを。どうか』

安楽とはいかないが楽になろう。左様なら。

『飛び降りるんですか』

篤志家のご登場だ。はぁーー

『止めないで下さい。慈善活動は他でやって下さい』

『止めるつもりなんて一寸もありません。けれども、君に言っておきたい事があります』

命の尊さ、命の大切さーーこう言う言葉は聞き飽きた。いい加減辟易する。

『私の命に責任を持てますか。助けたなら、一生救ってくれますか。……中途です。半端な救いが、最も辛い結果を生みます。なので、止めないで』

『ふっ』

鼻で笑いやがった、なんだこいつ。


『何ですかア』

『いやね、君は面白い考え方をするな〜と思って』

『もういいです。邪魔しないで下さい』

『まあ待ちなさい。飛ぶのは、もうちっと待ちなさいーーでなければ後悔しますよ』

『死ぬのに後悔するんですか?』

『ええ。ーー君は地獄を信じますか』

『信じません。あれは、現代倫理に脳を侵されたーー大人達の戯言です。都合のいい妄言です』

『そうかも知れない。だがね、そこは確かに地獄なんですよ』

『どう言う事ですか?』


意味不明、本当になんだこいつ。

『生きている人間も、生きていた人間も、あまり変わらない。君が集団にイジメを受けるようにーー死んだ人間もまた、集団にイジメられる。いや〜、心理ってのは恐いですよ。ことに集団心理は』

『……死んでも終わらない』

『寧ろ『始まり』ですかね。しかも死ねんので本当に地獄ですよ。ーー唐突ですが、ちと例を挙げてもよろしいですか』

『はい……』


イジメを受けていた何々君は自殺しました。

何々君はこれで楽になると信じてました。しかし現実は違いました。死人になった途端、そこには存在しない筈の人達が。その人達は幽霊に違いありません。

ですが白装束などは着てません。

それどころか、随分ハイカラなーー現代的な服装でした。そして突然始まりました。終わりのないイジメが。

でも大丈夫。次の自殺者が来れば、そいつをイジメれば何々君はーー

『ーー僕は救われます』

『……それなら、まだマシな、逃げ道のあるこっちの世界に残ります』

言って隣に首をやったが、彼はもういなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ