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盗撮と盗聴
彼に知り合いはいません。
『息災だった? そう、それは良かった』
彼は義務教育を受けられませんでした。
『学校ではしっかりやってるの? 駄目だよ、遊んでばかりいては。けどまぁ、友人は大切にね』
彼の身体は襤褸々々でした。
『ああ、これ。色々とね。気にしないで』
彼は孤児でした。
『じゃ、いくよ。あ、優しいご両親を大事にね……左様なら』
自殺した彼は、最後に誰かと話していました。
ですが、その部屋には彼以外存在しません。
努々理想の自分がーー
彼唯一の訪問者だったのではないでしょうか。