この話は虚構に相違ありません
「死体転がる戦場で、服の裾をもって笑顔で走り回るーー女の子。それが私にとって一番の恐怖でした」
「死ぬ事よりも、ですか?」
「死は停止と変わりません。なので怖くありません」
「だから帰国した後も、殺人を繰り返した?」
「恐怖を知った時、私は思いました。恐怖の対象となれば、僕に恐怖は及ばないーーと」
「被害者について謝罪の気持ち、又は自責の念はありますか?」
「ありません」
「遺体はどのように処理しましたか?」
「人相、歯型、指紋」
「と言うと?」
「顔ーー皮を剥がし、燃料をかけて焼く」
「続けて」
「歯ーー工具や刃物などで一つ残らず抜き取る。指ーー手だけではなく足も根本から切断」
「どこに遺棄するの?」
「災害、天災が起こった場所です。大きな事件が起こった場所でも良い。無かった場合は食すか、隣人に分け与えます」
「待って待って。それは被災地に死体を遺棄したって事?」
「はい」
「隣人は人肉だと理解してた?」
「さあ。ただ貧乏だったので喜んで受け取ってましたよ」
「人間の味を教えて」
「雑食だから不味い。けど菜食主義の人間は外人でも美味い」
「貴方はこれからどうするつもりなの?」
「乖離した私を、僕にします」
「今になって何故自白したの?」
「生きている事を後悔する程の痛み。それが、寝ても覚めても消えません。なので腹でも切ろうと思います」
「そうですか。自首は考えないのですか?」
「ええ。間然するところの無い犯罪ですから」
「真の完全犯罪ですね」
「どうですかね。最後に、私から質問しても宜しいですか」
「どうぞ」
「私は人間ですか」
「殺人鬼という言葉の『殺人』の部分は、被害者を示す。そして『鬼』の部分は加害者を示す。つまり貴方は、人間じゃない」