滑稽裁判
満廷したる安座の程、傍観しますは極悪非道の犬畜生にも劣るーー鬼であります。願わくば、刑事法違反者の逝去を所望致すところ。
「裁判官殿、どうぞお納め下さい」
「足りん、死刑ッ」
「不当だぁ! もう一度やらせろ!!」
「法に背いた者の言葉とは思えんな。ハハッー、次の者」
人らしき何かは入廷する。
「裁判官様、こちらを……」
「ほう。三億と二千万か。して、他に申すことは?」
「はい。その、これでご尽力ほどお願い致します」
「つまらん、死刑」
「ちくしょうぉぉお」
「来世では面白くなァ。次の者」
新たな人外が入廷する。
「裁判官、あっしはあんたにねェ、七十八円ーー払いますよ」
裁判官は受け取ると、
「某の生命、廉価に相違ない。して、何か申す事は?」
「はい。まず申しておきたいのは、七嘴八舌の見解を愚かな人々から聴いたーーという事です。
その七嘴八舌が、あっしを七転八倒の絶望的境地におきました。
ですから報復に、その人達を惨殺しちまいました。しかし、その人達は無知ではなかったと見え、あっしに七難八苦の現状を残し、死んでいきました。
ですがあっしは、七転八起の心待ちで、無罪になる努力をーー惜しみません」
「文学的遊戯に見合う恩赦は免責なりーー無罪!」
罷免すべき裁判官は憲法第七十八条の恩寵により、見事その老衰の日まで職務を全うするのであった。