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最弱の街を担当する女神様は次の転移を絶対に成功させたいのです!   作者: 野寺 いぶき
第一章 街の繁栄と初めての同盟
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第8話 洞窟④

「な、なんだ…」


 この状況に理解の追いつかない俺は、敵の顔を確認する事も叶わず、右方へ大きく吹き飛ばされた。


「くそっ、なんだアイツは…」


 脇腹に食らった一撃は、丸太に殴られたような感覚だった。朧な視覚は仲間の無事を確認すると、ゆっくりと瞼を閉じる。


「おいおい、これぐらいでくたばっちまったのか?」

「起きて…起きてよ秋人!」


 ベニトアイトの必死の叫びも彼には届かない。

 ピクリとも動かなくなった秋人の元へモンスターが歩み寄る。トロールよりも一回りも二回りも大きいモンスターを誰も止めれない。マルツとシグーナは操られ、ベニトアイトは恐怖で腰が抜けている。

 最早助かる術はない。


「おいおい、起きてくれよ。ホントにくたばっちまったのか?」


 そのモンスターは動かない秋人に声をかけるが、勿論反応はない。


「おいおい、人間とはこんなにもろい生き物だったのか?俺は万全の体制で人間たちを制圧出来るように準備してきたというのに、これじゃ拍子抜けではないか」


 モンスターは微かに苛立ちを見せる。

 片手で持っている1m程の大きな棍棒を振り上げ、秋人の倒れているすぐ横の壁を強く打ち付ける。

 砕け落ちる岩にも反応を示さない秋人を見てモンスターは興味を無くした。


「秋人!避けて!!」


 モンスターが棍棒を振り上げると、ベニトアイトが持てる力を振り絞って叫ぶと共に聖魔法〝ライトニングレイピア〟を放つ。

 先端が鋭く尖り、眩い光を放つ矢のような魔法がモンスターへ向かって放たれる。


 ブスリ。


 ベニトアイトは自身の魔法がモンスターの背中に刺さる音を確かに聞いた。しかし、そのモンスターは何事も無かったかのように棍棒を振り下ろした。


 洞窟内が揺れる。天井から砂や小石が降り注ぎ、今にも崩れ落ちそうな鈍い音が響いた。


「おいおい、止まっちまったじゃねーか」


 ベニトアイトの放ったライトニングレイピアが、モンスターの重心を僅かに前へ移動させた。それにより、本来秋人の脳天を直撃する予定だった棍棒は、奥の岩壁を抉り彼の頭上僅か数cmの所で止まった。


「おいおい、これはないだろう」


 モンスターはようやく背中に刺さった魔法に気付いたようだ。


「・・・聖属性!?貴様っ!女神か?」


 永続的に刺さっていた魔法を、まるでおもちゃのように抜いたモンスターはベニトアイトの正体を見破った。

 モンスターから溢れ出る強大な魔力に押され、意識を保つのもやっとのベニトアイト。聖属性まで使った彼女には言葉を放つ元気は残っていなかった。


「おいおい、貴様も無視か?」


 モンスターは標的を秋人からベニトアイトに変える。


「まぁ良い。話はそこに立つお仲間から聞かせてもらうとしよう」

「しゅ、秋人…たすけて…」


 モンスターは無抵抗のベニトアイトに棍棒を振りかざす。

 棍棒には紫色の禍々しいオーラが群がる。


「貴様は簡単には死なせない!俺の呪いを受けながら後悔して朽ちてゆくんだな!」


 そう言い放ち振り下ろした棍棒を一本の細い剣が受け止めた。


「なに?!」


 巨体のモンスターから放たれた重い一撃を、力関係など無視したかのように跳ね返す一振。

 驚きと同時に、後ずさるモンスターを前に2人の冒険者が現る。


「大丈夫ですか?女神ベニトアイト」


 モンスターの一撃を軽々と跳ね除けた刀を持つ女性がベニトアイトに手を差し伸べる。

 まるで魂が抜けたかのように彼女を見つめるベニトアイトは動くことすらままならないようだ。


「こりゃ、面白い奴が居るじゃないか」


 彼女の後ろからもう1人の冒険者が姿を見せる。武器も防具も身に付けていない男性は、筋肉のみで構成されたようなたくましい体をひけらかす為なのか、半裸だった。


「敵の殲滅は俺の役目だ。カズナは4人の救援を頼むぞ」

「言われなくても分かっるわよ。それよりも早く片付けてよね。私、これからマッサージの予約あるんだから」

「まかせろ!」


 その男は目にも留まらぬ速さでモンスターとの距離を縮めた。


「よぉ?俺の事覚えてるか?」

「誰だ貴様!」


 モンスターは棍棒を振り回すが、男は視線を動かすことなく手で受け止める。


「寂しいなぁ、俺だよ。ダイゴだ」


 自己紹介をしながらダイゴの身に纏う雷がモンスターの棍棒を砕く。

 粉々に砕けた棍棒を手放すと、モンスターは後方へ大きく退く。


「くそっ!何なんだ貴様は!」


 モンスターは明らかに苛立ちと焦りを見せながら地面を足で強く叩きつける。


「来い!ゴーレム達よ」


 号令と同時に、奥の部屋から秋人達が先程倒した氷を纏ったゴーレムと同じ型のものが30体以上現れる。


「皆殺しだ!!」


 そう言いゴーレムが動き出すのと同時に、モンスターは奥の部屋に逃げ込むように駆けていった。


「へぇ、ゴーレムがこんなに居るのか。面白い!」


 男が両手の拳を突き合わせると、稲妻が体中を駆け巡った。


「そら1匹目!」


 またしても、目に留まらぬ速さで距離を縮めると、大きな拳で一発。まるで雷が走る衝撃と威力でゴーレムを一撃で粉々にした。


「楽しいな!」


 男はそう言いながら、辺りに雷を撒き散らし次々とゴーレムを粉砕する。

 秋人達が手を焼いたゴーレムはまるで岩を砕く作業のように次々と壊され、僅か1分程で全てのゴーレムを撃破した。


「さて、あいつを追いかけるか!」


 ダイゴはモンスターの逃げた穴をロックオンすると、タイミング良く穴が崩れ落ちた。


「はぁ?嘘だろ」


 彼は現実を受け止められず崩れ落ちた岩を砕くが、どうやら入口部分だけではなく奥まで崩れたらしい。

 これは捜索隊に頼んで何日もかけて穴を掘るしかないと判断した2人は秋人を背負って帰還することにした。


 モンスターの逃げた穴が崩れ落ちたことでマルツとシグーナの洗脳は解け、ベニトアイトも動けるぐらいまで回復した。



「・・・ここは?」


 モンスターに吹き飛ばされ気絶していた俺が目を覚ますと、目の前には一人の男が立っていた。


「おぉ、起きたか少年よ」

「あれ…服は…?」

「はっはっは!何を言っておる。少年よ、自分が服を着ていることすら分からなくなってしまったのか?」

「いえ。俺ではなく、貴方に言ったのです」


 そう。俺の前には筋肉質な半裸の男が立っていた。


「まぁ、少年よ。そんな事より、隣の部屋でヒスイ様がお待ちだ」


 そんな事なんか…


 体を起こした俺は、痛みなど全く感じないことに感心しながら隣の部屋に向かった。


「秋人!無事だったのね」

「秋人さんご無事で何よりです」

「本当に良かったです」


 俺が部屋に入ると、3人は既にピンピンした状態で待っていた。


「秋人様。この度はトロール討伐ありがとうございました」


 ヒスイさんから感謝の言葉を告げられると話は本題に入った。


「それで、起きたばかりで申し訳ないのですが洞窟内で何があったのか聞かせていただいてもよろしいですか?」

エムール大陸

 1位 ダイタリス

 2位 ヘアタイトス

  ターコイズ・・・?

  デムルド・・・使者

 11位 トルピカ

  ヒスイ・・・トルピカの担当女神

  サキ・・・転移者

  カズナ・・・刀を持つ冒険者

  ダイゴ・・・半裸の冒険者

 12位 ダキア

  ベニトアイト・・ダキアの担当女神

  日下部秋人・・固有能力(豪運、視野強化、解析)

  イリネス・・住民、次の捧げ者

  エルマス・・・街唯一の男爵家当主

  サルフィル・・・街の長

  マルツ・・・14歳の戦士

  シグーナ・・・女冒険者

  アジールパーティ・・・無事

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