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最弱の街を担当する女神様は次の転移を絶対に成功させたいのです!   作者: 野寺 いぶき
第一章 街の繁栄と初めての同盟
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第6話 洞窟②

「現在洞窟内ではA級危険指定モンスター〝トロール〟が上層に出現した為、入場規制を行っております」

「では、内部にいる冒険者はどうなるんだ?」

「直に討伐隊が突入しますので、それまで隠れてやり過ごしていただくしかありません」


 俺たちには実績が無いという理由で門前払いを受けた。


「どうする?このままじゃ時間が経つのを待つしかないが…」

「侵入するにも警備が厳重ですし、もし見つかったら私達の街の立場が無くなってしまいますので…」


 為す術なく無力を感じされられていた俺達を前に、運命で引き合わされたかのように一人の女性が通りかかる。


「あれ?ベニトアイト?」


 他の街の住民に女神とバレるのを防ぐため、ベニトアイトにはローブとフェイスベールを着用させ正体を隠していたが、彼女は一発で見抜いた。


「え?ヒスイ?」


 どうやらベニトアイトの知り合いのようだ。

 ・・・ん?知り合い?ベニトアイトは俺がこの世界に来るまでずっと引きこもっていたはず。人違いか、そうじゃなければヒスイという方は…


「引きこもり生活はやめたの?」

「ヒスイこそ女神なのに、よくそんな堂々と街を歩けるわね」

「コソコソと隠れて人の街に来るよりはましよ」

「なに〜!」


 彼女はどうやらこの街の女神で間違えないようだ。ベニトアイトと対等に渡り合う彼女は、青と緑が混ざったポニーテールで大人の女性という雰囲気が漂う。色白の肌はベニトアイトと同じ女神だということを彷彿(ほうふつ)させる。


「それで引きこもりのベニトアイトがわ・た・しの街になんの用かしら?」

「私の街の住民が今、洞窟内にいるのよ。それを聞いてここにいる今年の転移者である彼がどうしても助けに行きたいって言うから私が一肌脱いであげたわけよ」

「へ〜。それで一肌脱いだベニトアイトは何か役に立ったのかしら?」

「ぐぬぬ…」

「ヒスイさんの力でなんとか洞窟に入れたりしないですか?」


 ベニトアイトでは交渉にすらならないと思った俺は彼女にお願いをする。


「構わないわよ」

「えっ、良いのですか?」

「私から警備の者に伝えておくわ」


 思ったより素直に了承してくれた彼女に呆気をとられる。つかみどころがない彼女が何を考えているのか俺には分からなかった。これぞ神の気まぐれというものなんだろうか…


「それじゃ、早速洞窟へ向かおう」

「ちょっと待ちなさい。洞窟に入るのは構わないけど、一つだけ条件があるわ」


 ヒスイさんは俺たちを呼び止めると、一人の女性を呼ぶ。


「彼女も一緒に連れて行って頂戴」


 やはりヒスイさんの考えていることが分からない俺は彼女をジロジロと見つめる。


「心配しなくて大丈夫よ。ただの監視役と思ってくれればいいわ。あなた方がトロールに手を貸して街を襲う可能性も捨てきれないからね」


 心配性なのか、それとも別の目的があるのか。最終的に俺たちは5人で洞窟に入ることになった。


「みんな、準備はいいか?」


 トルピカの街の北端に位置する洞窟は歩いて30分程で到着する。


「まぁ、女神の私がいれば楽勝よ!」

「僕も足手まといにならないように精一杯頑張ります」

「私は攻撃魔法を少し嗜んでいる程度なのであまり期待しないでください…」

「・・・」


 各々が意気込みを掲げる中、ヒスイさんの連れてきた彼女だけは終始無言だった。


「あの〜、お名前だけでも聞いていいですか?」

「・・・サキよ」


 寡黙な彼女の一言目だ。


「なんか日本人みたいな名前ですね〜」

「・・日本人なので」

「えぇ!サキさんも俺と同じ転移者だったんですか!?」

「・・・そうよ」


 この世界で初の転移者と出会ったので色々と語ってみたかったが、彼女とは上手く会話のキャッチボールが続かない。


 そうこうしている内に洞窟の入口に到着した。洞窟は地下へと続く構造となっており、地上部には入口しか見当たらなかった。入口で立っている門番は事情を分かっているようで俺達には何も触れてこなかった。


 俺はその場で陣形を決める。


「えぇーと、マルツは剣を持ってるから前衛で、俺とシグーナが後方から支援。その後ろにベニトアイトとサキさんでいいかな?」


 マルツとシグーナは問題ないと頭を縦に振る。サキさんは相変わらず無口だが、反対では無い様子だ。そして、問題のベニトアイト。


「なんで私が最後方なのよ!」


 案の定駄々をこねる我が街の女神。

 もう!他の街の人に見られているのに恥ずかしくないのかしらっ!


「ベニトアイトは女神だから危険には晒せないよ。最後方で祈ってくれていれば十分だよ」

「…まぁそうよね。私は女神だもんね。分かったわ!私は最後方からあなた達に加護を与えるわ!」


 単純な女神はなんとも丸め込みやすい…じゃなくて、聞き分けが良くて助かる。


「それじゃ、洞窟へ突入だ!」

「「「おぉ!」」」



「暗いな…」


 洞窟内は一定間隔で松明が設置してあるが、外と比べると格段に薄暗く、視界が狭くなったように感じた。

 下り道を進むと、広めの空間に出た。剣を振っても問題ないほど高い天井に、教室ほどの広さの空間にはあちこち血がついていた。


「あの血は…」

「あれは負傷した冒険者のものよ。ここで手当をして地上に帰還してるわ。それよりもトロールの目撃情報は4層で最後だから、とりあえず下まで降りるわよ」


 洞窟に詳しいサキさんがルートを教えてくれる。

 2層3層とほとんどの魔物が狩り尽くされていたため、なんの障害もなく進めた。

 そして、問題の4層へ到着。下り道を進み小部屋に入ると、3本あるうちの1番右側の道からトロールと思われるうめき声が響いた。

 俺たちは恐る恐るその道を進むと、奴は姿を見せた。

 肉の塊を彷彿とさせる圧倒的な存在感。1つ目で棍棒を持つその生き物は2m以上の巨体からお叫びをあげた。


「うわっ!これは…」


 叫ぶトロールの風圧が俺たちの元まで届く。


「臭い!!!」


 そう。何を食ったのだ!と言いたいほどトロールの口臭が臭かったというのが第一印象だった。

 だが、怯んではいられない。


「マルツ、いけるか?」

「だ、大丈夫です!」


 少し弱腰のマルツだが、闘志は失っていない。


「俺がサポートするから精一杯戦ってこい!」


 俺の掛け声と共にマルツが駆け出す。


「さぁ!女神様の加護のお時間よ!!」


 ベニトアイトはどこかから杖を持ち出した。


「スピードアップ!!」


 掛け声とともに青いオーラがマルツの体を纏い、目に見えてわかるほどスピードが上がる。


「すげぇな、本当に能力向上の魔法を使えるとは…」


 俺はベニトアイトの豊富な魔法に感心しながら弓を構える。


「くらえっ!」


 マルツの一撃はトロールの肩を捉えたが力が足りない。肩という名の肉の塊に数cm剣先が食い込む程度でトロールの動きは止まらない。

 マルツの攻撃を諸共せず棍棒を振り下ろそうとした瞬間、俺の矢が手を貫く。トロールは棍棒を落としながらよろける。


「よし!腕は訛ってないようだ」


 俺が喜んでいる隙にマルツが追撃をする。


「どりゃあああ!!」

「パワーアップ!…これじゃ足りないかな?ん〜、パワーエンチャント!!」


 同時にベニトアイトは2つの魔法を使う。パワーアップでマルツの体を赤いオーラが纏い、パワーエンチャントで武器に濃い赤のオーラが宿る。

 そのまま振り下ろされた剣は、トロールの肩を見事に切り落とし大ダメージを与える。


「よぉっっしゃぁ!!」


 大喜びするマルツ。だが、トロールの動きは完全には止まっていない。


「危ないマルツ!」


 シグーナが小さな火球でトロールの動きを僅かに遅らせる。その隙に離脱するマルツ。俺は第2射を構え、放つ。魔力の宿った矢は見事にトロールの心臓を貫いた。


「終わった…のか?」


 初戦闘を無事やり遂げた俺は放心状態だった。ベニトアイトもマルツも実感が湧いてないようだ。

 これから何をすればよいのか分からない俺たちを前に、サキさんがトロールの元へ歩いていった。


「お見事です」


 そう言うと彼女は慣れた手つきでトロールの首を切り落とす。


「私はこれを持ってヒスイ様に報告します。皆様は用事が済むまで洞窟内にいて大丈夫です。トロールを倒せたのであれば10層までは問題ないと思います。それでは」


 彼女はアドバイスを言い残すとその場を去った。


「はっ!?」


 ここで俺は本来の目的を思い出す。いや、忘れていた訳では無いがトロールに必死で二の次にしていた。


「アジールパーティを探しに行こう!」


 俺たちは地上に戻ることなく、その足で更に奥、5層へ向かった。

エムール大陸

1位 ダイタリス

2位 ヘアタイトス

ターコイズ・・・?

デムルド・・・使者

11位 トルピカ

ヒスイ・・・トルピカの担当女神

サキ・・・転移者

12位 ダキア

ベニトアイト・・ダキアの担当女神

日下部秋人・・固有能力(豪運、視野強化)

イリネス・・住民、次の捧げ者

エルマス・・・街唯一の男爵家当主

サルフィル・・・街の長

マルツ・・・14歳の戦士

シグーナ・・・女冒険者

アジールパーティ・・・不明

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