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魔物娘と不思議な冒険  作者: ねこがみ
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第五話 無断欠勤ゴブリン




ニンゲンの冒険者 対 ワーキャット の毛まみれプロレスから一夜明けたのどかな昼下がり。


ここはニンゲンが仮の住まいを与えられた魔族の村。

メルトに打ち倒された冒険者を介抱し、彼が帰還の塔を目指す拠点となっているこの場所は『はじまりの村』というらしい。


意外な事に、この村の住人である魔物達はニンゲンである冒険者に敵意を持たず、滞在を歓迎しているようであった。


その村の外れの一軒家……大きな槌に薄褐色の肌をもつゴブリンの『リナ』はテーブルの書置きを手に震え上がっていた。



【一人で行く。鉱石まとめてカタチにしておくこと。 オヤカタ】



「やっちまったっす…」



村に居を構えるリナは鍛冶仕事を担っており、昨日と今日は鍛冶素材の収集日。


本来であれば書置きの主であるゴブリンの『オヤカタ』と同行すべきリナは、前日の深酒がたたり見事に寝坊。

起こしに来たオヤカタも諦めるほどの爆睡っぷりにより、予定をすっぽかしてしまった。



「やっちまったっす…」



酒好きなゴブリン族ではあるが、それでも飲みすぎてしまった。

枕元に転がる濁酒の空瓶が恨めしい。


今から追うべきか、書置きの指示通りとするか。


どのみち鉄槌を食らう羽目になる二択に頭を抱えながら、屋外の鍛冶場に足を運ぶ。



救いようのない未来にうんうんと唸るリナ。

もういっそ仮病を使おうかと禁じ手に縋ろうとしたところで、俯いていた彼女の正面に気配を感じた。


まさかオヤカタが戻ってきたのでは!と、必死に適当な言い訳を唱えながら顔を上げると、そこには鈍金色の短髪の青年が心配そうにこちらを窺っており、目が合うと丁寧に挨拶をしてきた。


昨日村長と晩酌時にした話を思い出す。

村にニンゲンが滞在するから、困っていたらチカラになってあげてね、と。


村長が言っていたニンゲンとは目の前の青年のことか。


あどけない顔には似合わない大きなひっかき傷がある。

ネコにでもじゃれつかれたんすかね、と酒の残る頭で考えていると、ニンゲンは今困っており、ゴブリンが得意とする鍛冶……ものづくりのチカラを貸して欲しいと協力を求められた。


なにやら道中の崖を繋ぐ橋が落ちており、渡れるように橋を架けてほしいらしい。


橋づくり!やったことないけど面白そうっすね!

と反射的に了解をする寸でのところで、オヤカタの書置きが頭をよぎり、リナは言葉を引っ込めた。


遅刻してでもオヤカタのもとへ向かうか、指示通り鉱石を鍛冶作業で使用できる状態にしておくか。


さっきまで頭を悩ませていたこの問題を、どちらも放り出してしまっていいのだろうか。


以前にも酒気帯び作業を咎められて罰を受けたのは記憶に新しい。

あの時は半日間の断酒となったが、今回はいかほどであろう。

どのみち本来の予定をすっぽかすというお叱りボーナスがあるのだ。


罪が一番軽くなる選択はどれだ…合流…指示…やけ酒…


寝起き酒気帯びのリナは正常な考えができず

──そのうちリナは考えるのをやめた。


しかし、諦めかけたリナに一筋の光が差し込む。



「村にニンゲンが滞在するから、困っていたらチカラになってあげてね」という村の長の言葉。


閃いた。これだ。


目の前の青年を助けろとの村長からの依頼です!と。


村長にはお世話になってるから仕方ないっすよね??と。


最適解を得たリナの行動は早かった。



「先にダンジョンに行っててくださいっす。秒で合流するっすよ!」



きょとんとするニンゲンに向かい軽く手を振ると、秒で合流すべく走り出すリナ。


酒を買っていかなくては!架橋作業の後の一杯はきっとおいしいぞ!


駆ける彼女の顔には悩みなど微塵も感じられない。清々しい笑顔だ。


願わくばダンジョンの中でオヤカタに鉢合わせしませんように……。




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