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魔物娘と不思議な冒険  作者: ねこがみ
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第二十話 塔




サキュバス先生による魔族史講習の翌日。


しんしんと降り続いていた雪は止み、穏やかな風。

絶好の冒険日和だ。


朝食をいただき、丁寧に礼を言い出発する冒険者達。

昨夜は暗がりで気付かなかったが、目的地である『塔』はサキュバスの家から十分近くに目視できた。

数時間も歩けば辿り着ける距離だろう。



出発の際に何かお礼ができないか、とサキュバスに尋ねた。

雪夜を越せず全滅寸前の冒険者達を救ってくれた彼女には感謝してもしきれない。

いいのよー、とにこやかに微笑む彼女と頼み込む冒険者。

最後にはサキュバスが「握り拳を作ってみて?」と折れてくれた。


手を?

困惑しながらも従い、手を握りしめる冒険者。

サキュバスはスライムとルルに目配せすると、その手を取り自分の…サキュバスの頭にコツンと当てていた。


どうやらニンゲン退治に伴う『労災』を受給するための行為らしい。

「やられたー」と棒読みでセリフを放つサキュバス。

…いいのだろうかこれで。


買い物ついでに受給申請を出してくるわ♡と喜んでいたので、恩返しにはなったのであろう。

不正受給と言ってはいけない。


ともあれ、誰一人欠けることなく雪原を抜け『塔』へと辿り着けたのだ。



『塔』

冒険者を結界に捕え、力を奪わんとする魔術師メルトが住まう場所。

その高さは、大人が100人縦に並んだよりも高く見える。

石造りで真新しくしっかりとしており、冒険者がお世話になっている魔族の村が1つ収まるぐらいには広さがあるようだ。

裏手には崖。ここが陸地の終着点となっているようで、海を挟んだ遥か彼方にうっすらと別の大陸が視界に入った。


海から吹き上がる風に目を細めていると、スライムがぷるぷると駆け寄ってきた。



「塔の入り口が動いているみたい」



見ると塔の根本、重厚な石扉がガゴゴ…と音を立て開け放たれたところだった。

奥の暗がりから「もう来たみたい〜」と聞こえたが気のせいか。

罠の可能性はあるが、重そうな石扉を開ける手間が省けた。

行くしかないだろう。



塔の一層部分はシンと静まり返っていた。

無骨な石畳に椅子やテーブルが雑多に置かれている以外に人影は無い。

ルルが「何奴か!!」と唐突に矢を放つ以外の音は無い。

ビックリするのでやめてほしい。


上へと続く階段を見つけ警戒しながら歩を進めるも、二層部分も同じように無人の空間が広がるばかりであった。



「ボク達が強いから皆逃げちゃったんだよ!このままボスの所までまっすぐいけそうだね!」



ぷるぷると嬉しそうに言うスライムに緊張が緩む。

しかし、そんなうまくはいかないようだ。


何度目かの階段を登った時、それは風のように現れた。



「約束も無しにいきなり来るなんて…ニンゲンってやっぱり非常識な奴ね!」



ヒュウ、と風が吹き抜ける。



「皆でピクニックを楽しんでいたのに…あなたのせいで予定が狂ったわ!ニンゲン!」



蒼い髪をたなびかせ、風を受けハタハタと揺れる薄着に身を包んだ魔物が一人。

その顔は怒り心頭といった様子で頬を膨らませていた。



「皆が帰ってくる前に終わらせるわ!ニンゲンなんて私一人で十分よ!」


「私は風の精霊エアリアル!ピクニック中止の報いを受けなさい!」


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