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魔物娘と不思議な冒険  作者: ねこがみ
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第十七話 魔物の家




旅の終着点である、帰還の塔の眼前に広がる豪雪地帯、ミース雪原。


氷漬けのスライム、夏服のエルフ、備えの無い冒険者、という全滅手前の状態だった彼ら。


雪原の洗礼を痛烈に受ける一行に、手を差し伸べる者がいた。



「貴方達、私の家の前で何をしているの?」



寒さにやられ青白い表情で俯いていたルルの、肩を叩く一人の魔族がいた。


悪魔を連想させる二本の巻き角と整った顔立ちの魔族『サキュバス』が、肩に外套を着込みながらその身を抱いていた。


背後から伸ばされた手に驚き、素っ頓狂な悲鳴をあげたルルは、そのまま雪の中に突っ込みぴくりとも動かない。



「ピクニックの最中だったなら邪魔してごめんなさい。

でも、そんな薄着だと氷漬けになってしまうわよ?

一旦私の家においでなさい」



薄着に外套というアンバランスなサキュバスと、かじかむ手を交互に見つめ……とりあえず氷柱と化したスライムとルルの搬入作業に取り掛かることにした。




*****




魔物達にもニンゲン同様に文化があり、生活があり、家がある。


遭難しかけていた冒険者一行はそんな魔物、サキュバスの住処へと案内されていた。



「正しい処置?

そんなの分からないけど、お湯をかけておけば大丈夫よ」



サキュバスの言葉通りお湯を掛けては流しを繰り返した冒険者だったが、スライムもルルも特段の怪我なく復活を果たした。


カラダの内側からスースーして楽しかった!とは解凍されたスライムの感想である。



「逃げ込んだ先が貴女のような話の分かる魔族の所で助かった。礼を言う」



キリリと表情を作ったルルに対し、家主のサキュバスは笑いを呑み込む事で一杯だ。


外でのルルの、情けない悲鳴との対比がおかしかったのだろう。

ひとしきり笑いを堪えた後で、ようやく口を開いた。



「お礼なんていいわよ。今日はオフの日だったからね。

お仕事モードだったらあなたたちなんてこう!よ」



軽く拳を握り、空を殴る真似をするサキュバス。

ニンゲン達からは夢魔と呼ばれるその魔族は、華奢な体つきではあるが、雪に埋もれた冒険者達を打ち倒すことぐらいは造作もないだろう。


温かな空気に体力の回復を感じていた冒険者だったが、サキュバスの一言に頭を捻った。



オフの日?



「オフの日はオフの日よ。あなた、私達が年中無休でニンゲンに襲いかかる狂戦士か何かだと思ってるの?」



サキュバスが目を丸くして冒険者を見つめ言う。

スライムとルルも同じ表情だ。


だが、冒険者もまた同じ表情。当然だろう。

ここまでの道中、話し合いに応じ仲魔となったスライムや、話し合いとはならずとも意思の疎通は出来た魔物を除き、殆どの魔物達がニンゲンに対して交戦的で、幾度も戦いを挑まれた。


ニンゲンと魔物は争いの関係にある事は、記憶を失っている冒険者でさえ、道中身に染みて理解してきていたのである。


だが、その戦いの理由までは考えを巡らせる余裕は無かった。

いや、塔の魔術師メルトはニンゲンに対しての復讐と言っていたか。


ともかくも、オフの日は戦いませんよ、と。

まるで敵対行為はお仕事ですと言わんばかりのサキュバスの言動に、冒険者は戸惑っていた。



「仲魔を連れているから知っているものだと思っていたのだけれど…。

もしかして、私達がニンゲンを襲う理由も知らないの?」



こくり、と頷く冒険者。

スライムとルルは「えっ、一般常識じゃないの?」と言いたげな顔で互いを見合わせている。



「…記憶が?そう…。なら、お茶が入るまでまだ時間かかるでしょうし、魔族の社会勉強、していっちゃう?」



思えば、記憶が曖昧なまま魔族領土に行き倒れていた冒険者は、この冒険の理由も、自分が成そうとしている結果も、理解しているとは言い難い状況だ。


受けろ受けろ、と促すスライムとルルに促されて、サキュバスに講師を頼む事となった。



「じゃあ、基本から説明していくわね。質問は最後にまとめて。

お手洗いは先に行っておきなさいね♡」




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