№6 ドキドキ、お義父さんとのファーストコンタクト。お嬢さんを僕にください!
挨拶はムズイ。
大助は電車に揺られ、彼女のマンションへ向かう。
お義父さんとの初対面の日、芽衣の妹さん家族も招いて、ベランダでのざっくばらんなBBQをしながらの食事会となった。
おそらくお酒も飲むだろうからと、今回は車ではなく電車となっている。
大助が駅に着くと、芽衣が徒歩で向かいに来ていた。
「・・・・・・」
すーっ。
彼女に気づかずスルーし通り過ぎる大助。
「あの」
「ああ、芽衣ちゃん」
「気づいてなかったよね?」
「ああ、ごめん」
「んもう、大丈夫?緊張していない?」
「・・・少し・・・だいぶ」
マンションに着き、部屋に通されると、お義父さんはまだ帰って来てなかった。
芽衣の父は小さな自動車整備工場を営んでいる。
家へ戻るのは18時ぐらいとのこと。
大助は仏壇に手を合わせると、今は亡きお義母さんに挨拶をする。
それからベランダへ出て、妹さん夫婦と話したり、お子さんと遊んでいるとお義父さんが帰って来た。
途端に緊張が走る大助、直立不動で起立する。
「お義父さん、はじめまして」
「ああ、俺はまずこれば飲まんとはじまらんけんね」
と、お義父さんは焼酎を片手に笑う。
「はい、今日はよろしくお願いします」
「うん」
お義父さんが晩酌をしはじめると、BBQがはじまった。
気さくに話しかけてくれるお義父さんに、大助は感謝しつつも、なかなか緊張し食事が喉を通らない。
愛想笑いを武器にへらへらとなんとか夕食を終える。
「じゃ、そろそろ」
大助は長居をするのはいけないかなという思いと、若干おうち帰りたいの気持ちも重なりお暇する。
「送ってくね」
芽衣は家族に伝え駅までの帰り道2人は並んで歩く。
「どうだった?」
「うん、お義父さん優しそうで良かった。妹さんたちも」
「でしょ」
「でも緊張した~」
「だね」
「お義父さんと話せて良かったよ」
「そうね」
大助は夜風を吸い込み、ほろ酔い気分で伝える。
「今度は」
「うん?」
「ちゃんと結婚の挨拶を」
「うん」
日を改めての数週間後、芽衣のマンションに大助はお義父さんに結婚の挨拶をしにきた。
仏壇でお義母さんに報告とお願いをする。
それから鍋をつついて3人での夕食が終わりると、当然そういう雰囲気となる。
しばし、妙な無言の間がつくられる。
大助はカラカラの喉をお茶で潤し、今か今かとタイミングを計る。
芽衣は正座をし、その時を待つ。
(言わなくゃ、言わなくちゃ・・・早く、君の家で言わなくちゃ(by陽水さん、でもそれは行かなくちゃ))
テンパる彼を察した彼女が、
「お義父さん。大助さんが言いたい事があるって」
と、助け舟をだしてくれた。
「ああ」
お義父さんが姿勢を正す。
ごくり、大助は唾を飲み込み、意を決す。
「お義父さん、芽衣さんを僕にください。結婚したいです」
「あ、うん、ああ」
お義父さんはゆっくり頷いた。
「あ~いや~芽衣が結婚するとは・・・」
「僕も(親に)言われました・・・ふう」
大助はお茶を一気に飲み干す。
「ありがとうございます」
「うん、よろしく」
「ふふふふふ」
芽衣はにこり微笑んでいる。
これにて、お互いの親への挨拶が成り、着々と結婚への道を歩む二人だった。
いや~良かった、良かった。
と、ほっと一息もつかの間、動きだした暴走機関車は止まらないっ。
初夏のある日、両家の食事会が執り行われたのだ。
その時、大助と芽衣は・・・。
次回「シャレオツ気分DE両家の食事会」西洋館で繰り広げられる数々の怪事件を2人は解決できるのか。「旦那ちゃん、嫁ちゃんの名にかけて!」って、そんな話ではない・・・そ~でした、はいっ!(笑)では、また~。
両家ともすんなりでした・・・それはね、2人が年をとり過ぎているからだよ(笑)。