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№10 大助、ブルガリの時計を買う

 日程がおぼろげで、イベントの順番が逆転してるかもーです。


 電話は相変わらず、慣れない二人だが、少しずつコミュニケーションが上達(笑)している。

「結納品さあ」

 大助が気がかり事項を言う。

「いいよ、いいよ。お互い、いい年なんだし・・・それに・・・」

 芽衣は含みを帯びた言い方をする。

「うん?」

「ううん、なんでもない。あっ、来週は衣装合わせで、また福岡ね」

「うん」

「よろしくね」

「はい・・・ところで」

「何?」

「婚約指輪なんて渡すじゃん」

「私・・・指輪いらないよ。食品関係の仕事だから、付けられないし」

「そういう訳にはいかないよ・・・じゃ何か代わりの・・・おっ時計なんてどう?」

「うーん、いいかも、でも別にねぇ、いらないよ」

「そうはいかんよ。んじゃ、衣装合わせの帰りに、探してみようよ」


・・・・・・。

・・・・・・。


 当日はちょいと慌ただしい一日だった。

 午前中、ワタベのブライダルカウンターで、芽衣のウェディングドレスの衣装合わせ。

「えー、私、あるものでいいよ」

 と、平静さを装っていた彼女だが、いざ、衣装合わせとなると、4着のドレスに着替えると、目を輝かせ乙女となっていた。

 大助はそれをカメラ小僧のように激写する。

 今でも、その大量の写真がアルバムに重ねて膨らんで入れられているのは、ご愛敬である。

 

 ドレス選びは二転三転する。

 一旦、大助とスタッフの方がすすめる可愛いい系のウェディングドレスを選んだ芽衣だが、後日、土壇場で大人っぽい方のドレスへ変更した。

 彼女曰く「私、大人だもん」だそうだ。


 ランチを済ませ、デパート巡り、フェ〇ディ、カルテ〇エ、シャ〇ル等、一度も足を踏み入れたことのない高級ブランド店に大助は足を踏み入れる。

 最もそれは芽衣も同じ事で、そのラグジュアリーな雰囲気、それとゴージャスな金額にお互い目を丸くし萎縮してしまう。

「私、国産でいいよ」

 ぼそり彼女は言う。

「な~に、言ってんだよ~」

 彼の声はうわずる。


 そして訪れた博多大丸にあるブル〇リで、シンプルでお値段そこそこの時計を見つける。

 互いに気づかれ歩き疲れもあり、顔を見合わせると、どちらからともなく頷いた。

「これ、お願いします」

 震える手でお目当ての時計を指さす大助。

「ありがとうございます。畏まりました。お支払いはいかがしましょう」

「カードで」

 彼はすっと、車を購入した時に作ったVI〇Aカードを取り出す。

 ほどなくして、

「あのカードが通りませんけど」

「えっ、そんなことは」

 実は初めて、そのカードショッピングする大助、いろんなことが頭を過ぎる。

(金額の条件が決まっている?期限が過ぎている?・・・そんなことは・・・)

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 しばし、お店の人と彼はにこやかに冷や汗をかきながら微笑み合う。


「私が払います」

 芽衣はそっとカードを差し出す。

 安堵する彼とスタッフ。


「ごめんね。後でお金お返しします」

 店を出ると、平謝りする大助。

「ううん、ありがとう。大事にするね」

 芽衣は微笑む。

「あー、カッコ良く渡したかった」

「らしいね」

「そ・・・ね」

「ははは」

 2人は笑いながら、街中を歩いた。

 そんな夏のある日。



 着々と結婚への道を歩く2人。

 だが、いろいろな懸案事項もクリアしなければならない。

 妥協すべきか否か、揺れるふたりは、次回「久留米で結婚指輪を。大助マスオさん?になるの」の豪華2本立て(笑)でお送りします。

 いたしまーしゅ(笑)。

 



 じゃんけん、(ちょき)、うふふふ~、また読んでくださいね~。

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