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決意

「アキ先生、僕決めたよ!」



エドワードは衝動的に、アキ先生を呼び止めた。

これで彼女とお別れになってしまう。

そのために、彼女に言いたいことはたくさんあったはずだ。


でも、この場で彼が彼女にどうしても伝えたいことは、一つしかなかった。



「先生……僕、最強のスライム使いになります!」


「え?」



突然の弟子からの宣言にアキはきょとんとした顔を浮かべる。

最強のスライム使いだなんて、何という矛盾な言葉か。

しかし、愛弟子は冗談一つない表情でアキのことを見つめていた。


彼は本気だ。



「……先生はこれから、きっと僕のせいで周りの使役者から笑われてしまうかもしれないんです。僕が先生の弟子が、こんなスライム使いだから」


「そんなこと……」



気にしないで、そう言いかけたアキの言葉をかき消すように、エドワードは決意を口にする。



「だから、僕は先生が誰からも笑われないくらい強くなって、先生のことを笑おうとした奴らを見返してやります!! 先生が胸を張って僕のことを『自慢の一番弟子だ』って言えるくらい強くなります!!」


「だから、だから……もし、それまで待っていてください」



最後の方はエド自身もなんて言葉を言えばいいのかわからなくなってしまった。

勢いで発してしまった宣言は、最後の方は涙でうまく言葉が出てこない、


ただ、自分のことを救ってくれたアキ先生を安心させたかった。

自分が使役者として歩んで行くことの目標を彼女に捧げたかった。

エドワードの中にある思いはそれだけだった。


だからこそ、エドの恰好つかない宣言でもアキの心にはしっかりと届いていた。



「エド……ありがとう」


「アキ先生?!」



アキはもう一度エドのことを優しく抱き寄せると、そのまま彼の額に優しく口づけをした。

エドは額に、これまで味わったことのない体温を感じる。

その感触は、彼の冷静さを完全に崩壊させようとしていた。


そんな彼の姿を見ながら、アキは愛くるしいように笑う。


エドの涙に誘われて、アキの瞳からは温かい涙が頬を伝っていた。



「それじゃあ、それまでエドのこと待っているね」



顔を見合わせる二人。

別れの瞬間に似合わないほど優しく笑い合っていた。



「スライムちゃんも、エドのことをよろしくね」


「もきゅ」


「エドのこと……守ってくれるんでしょ」



アキの手が、エドの肩に乗っていたアリエルの頭に移る。

自分たちのピンチを救ってくれたスライムのことを、アキは深く聞かなかった。


エドが何かを隠しているというのをわかっていたとしても、彼女はすでに弟子のことを信じる選択をしていた。



(この人ならまあいいか)



その思いがアリエルにも伝わっていたからこそ、彼女は一瞬だけアキの前で変身の姿を解いた。


白い光がアキの目の前でまばゆく光る。



「……これって!」



アキの目の前に移るのは、白い光の中でぼんやりと映る人影。

幻化と思うようなその現象の中で、アリエルはかすかにアキの頬を触れた。



「……ありがと」



誰にも聞こえないようにひっそりと囁いたつもりだった。

でも、アキはその声に応じて何も話さずにうなずいた。


やがてアリエルはもとの姿に戻る。

アキの目の前に居るのは、変わらず丸っこい見た目をしたスライムだけだった。



「それじゃあ私はもういくね」


「え、先生……」


「スライムちゃんと一緒に私のこと迎えに来るんだよ!」



それだけ言うと、アキ先生はフェネットに乗って颯爽と去っていってしまった。


エドは彼女の様子を呆然と眺めることしかできなかった。

彼の額にはまだアキの優しい感触が残ったままだった。



「行っちゃった……」


「行っちゃった……じゃないわよ! いつまでぼーっとしているのよ!!」


「うわ!!」



ようやく人前で声が出せるようになったアリエルは、呆然とするエドの耳元で大きく騒ぐ。

もうすでに、彼女の気持ちは次へと進んでいる。



「まったくエロガキめ……まあ、今はあなたの決意に免じて許してあげることにするわ」


「決意って」


「最強のスライム使いになることをようやく決意してくれたお祝いよ」


「あ、あれは……」


「なによ? まさか嘘をついたっていうの、愛しのアキ先生に?」


「い、いや」



自分から言ったこととは言え、勢いで宣言してしまったことがアリエルに聞かれてしまった。

もう後には戻れないエドは困ったようにため息をつく。


アリエルはすっかりご満悦だ。



「アキ先生のことを悲しませちゃだめよ……エド?」


「そ、その呼び名」


「いいじゃない、私たちはもう相棒なんだから」



気持ちよく羽を伸ばすアリエル。

エドの横にいるときは不思議と気持ちがよかった。


ずっと洞窟の奥に身を隠していたかもしれない。

しかし、彼女の胸の中には確かに、エドと一緒に世界最強を目指す未来が見えていた。



「彼を強くすることができれば、たとえあいつらが来たとしても……」


「……? 何か言った?」


「ううん。なんでもないわ」



アリエルはあわてて首を振ると、またスライムの姿に戻ってエドの肩の上に乗った。

もうすっかり彼女の定位置となってしまった。



こうして、スライムと使役者の新たなコンビが誕生した。

世界最強を目指す二人の冒険がここから始まるのだった。

お読みいただきありがとうございます!


これにて序章完結です。

ここまでお付き合いいただきありがとうございます。


次回から新しい冒険が始まってまいります。

ぜひ、これからもよろしくお願いします!


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