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ポンニチ怪談

ポンニチ怪談 その27 JQノン武装蜂起参加船

作者: 天城冴

凍えるような寒さの港から深夜に出向する船。そこには合衆国の大統領選で負けたT大統領の支持者たちが乗り込んでいたが…

「これでニホンも見納めかな」

深夜のとある港。しんしんと冷える真冬の岸壁から人々が人目を忍んで船に乗り込んでいた。最後尾に近い二人が手を温めながら話していた。

「今からいって間に合うのか、大統領就任式は現地時間の明日だろう?」

「就任式が終わった後も戦いは続くんだぞ、なにしろ合衆国の正規軍との戦闘だ、いや真の大統領に逆らうんだから、Bを新大統領だとする奴等の方が逆賊なんだ」

「そうだな。しかし、われわれニホンのT大統領支持組織であるJQノンをすんなり参加させてくれるのか、俺たちは確かにT大統領の熱烈な支持者だが」

「だから時間がかかったんだろ、船が来るのに。我々の熱意と本気を信じてくれたからこそ、向こうのT大統領支持派もこうやって迎えをよこしてくれたんだ」

「そうだな、こんな何十人も収容できる船を要しするのだって大変だ。客船じゃないようだが」

「貨物船の中を改造したらしい。我々は非合法に合衆国に入国するんだからな。あそこの政府はすでにBに乗っ取られているんだ、T大統領がわだったK党でさえ、“B氏こそ新大統領、議会に暴徒を送り込むようなTは弾劾すべき”とか抜かす裏切り者が出てるんだから。客船なんかで言ったら目立ちすぎる」

「そうだな。それに遊びにいくわけじゃないんだ!T大統領を不正に追いやるやつらとの戦争だ!」

「そうだ武装蜂起だ!」

熱っぽく語りあう男たち。他にも物騒な会話があちこちでなされていた。

そんな彼らを上部の手すりから船員たちが覚めた目で眺めていた。

『おいおい本気でTのクーデターに加わるつもりらしいぜ、あいつら』

『ロクに銃も扱えないんだろうに、人間の盾とやらにでもなるつもりかね』

『さあな、にしても、いくら英語がわからないとはいえ、奴等を検査するときにはもう少し気を付けるべきかな』

『いいや、どうせ、“ウイルスの検査だ、必要だ”とでも繰り返しておけば素直に従うだろう。やつら、この船がTの支援者がよこしたものだと本気で信じてる』

『確かにTの側近とニホン国の密約だけどな。ただし、別にクーデターに加わるわけじゃない。太平洋のど真ん中で選別して、両国の役に立ってもらうだけだ』

『まあ、Tの娘夫婦とかもいい加減、自分たちの劣勢がわかったんだろうが、肝心のTがすでにテロリストの親玉みたいになってるからなあ。これぐらいやらないと後がどうなるか』

『ただでさえ、大統領を退いた後はあの一家は全員訴追、裁判、一文無しのうえ刑務所行きと言われてるんだ。しかもウイルス騒ぎのなかの贅沢三昧で相当顰蹙も買っている。コアな支持者な狂信的な連中ばかりで、マトモに生き残るすべなんてないからなあ。だから親と身内というか、支持者を売るような真似をしたわけだ』

『それで、ニホン政府が持て余したバカどもを引き受けることにしたのか。まあニホンも奴等を政権維持のために扇動してたっていうからなあ。そいつらが迂闊な動きをしてウイルス対策が疎かになったことや、奴等を誘導して政権擁護に世論を捻じ曲げたことなんぞがバレたらヤバいんだろうな』

『おまけに他国の大統領のためにデモやってウイルス拡散しかねない危ない連中だ。こんな奴は、実験体とかにでもして黙らせておくしかない』

『臓器提供もだろ。不適合者はワクチンと治療薬開発のための被検者か。で、用済みになったら海に放り込む』

『海のど真ん中、なんならサメのウロチョロする海域に行ってもいいだろうな。俺も含めこんな任務でストレスたまっている奴が多いからな。Tを持ち上げたバカな連中が喰われるのを見れば少しは気が晴れるかもしれないな』

『おいおい、野蛮なことをいうなよ。俺たちは本来誇りある軍なんだが。しかし確かにTがついてロクなことがないな。お仲間のニホンのAだのSだのも似たようなものだし。国民を苦しめて何がおもしろいんだか。Tの奴の政策はうまくいってるように見えて実は長い目で見ると間違っているものが多いんだが、なんでわからんのかね』

『昔の国が繁栄したころのやり方をやればいいって思ってるんだろうな。時代が変わりすぎたことがわからないんだろう。もう一国でどうにかできることじゃない、特にウイルス対策はそうだろ』

『ま、そうだな。つまりは古い用済みの奴等か、それを始末する口実がTの武装蜂起ってわけか』

『そうだ、国にいる奴等は生物兵器まで使って奴等を根絶するつもりらしい。まあ、国のガンみたいなものだからな。ウイルス以上に厄介だし』

『こちらは人体実験に使いつぶして、誰にも邪魔されない海の真ん中で始末か。しかしあいつらの家族とか、騒がないのかな』

『家族がいないか、見捨てられた厄介者なんだろうな』

『ニホンでも困窮者支援の組織があったとおもうが、野党の幹部も参加したとか』

『そういうのに頼りたくないらしいな、ロクなこともできないのに自分たちが偉い凄い他の連中とは違い真実を知ってると思いたいアホどもだからな』

『本国のTの支持者と似たようなもんか、それなら確かにいなくなっても誰も気が付かないな』

『そういう奴等だから、ニホン政府も喜んで差し出すんだろ。ワクチンや治療薬で成果があげられれば、政府の連中に薬と金が手に入る。Tの側近連中も逮捕だけは免れる。Tは無理だろうがな』

『もうシナリオはできているってわけか』

『そうだ、あとは実行だけ。ほら、奴等の検査がはじまるぞ。誰をしばらく生かすことになるんだか』

船底近くの広い空間に収容されたT大統領支持者たちの検査が始まった。みな目だけがらんらんと輝き、あるはずのない戦いに身を投じる自分に酔いしれながら待っていた。


どこぞの国では外国のトップ選挙が不正だーと証拠もないのにデモまでしまくる奇特というか物騒というか方々がおりますが、いったいどうするつもりなんでしょうかねえ、次のトップの就任式。当のお国では厳戒態勢らしいですが、そこまで乗り込んで闘いに加わるつもりなんでしょうか。銃殺されれば本望とか言い出しそうですが、空港やら港で検疫うけて足止め喰らったり、怒られて強制送還されるのがオチのような気もしますが。

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