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07.植物王女とメロンハウス

「ただいま戻った!」

「デっ、デメテルさん! ちゃんと入口で入ってくださいよ! それに、メードさんがビビっていますよ。大丈夫ですか?」


 ギルドへと近づいていく際に、二階の窓が開いたままを見るため。着陸さえもせずに窓に入ってしまった。


「ごめんごめん~ もう行き着いたよ。リリス」

「デメテル様! あのスピードでは危険です! 禁止です!」

「アハハ…… わりいわりい、早く戻りたいだもの、つい……」


「それでは、デメテルさん、その物件はいかがでしょうか?」

「すっごくいいものだ。結構気にってるぜ」

「それは良かったですね。それでは、契約について、説明します」

「土地の使用年数はありません。値段は120000ギルでございます。デメテルさんは本ギルトに在籍する商人のため、9割の優遇を享有します。良ければ、今すぐ契約の書類を用意します」

「わかった、お願いね」


 ハンコを押して、やっと自分の土地を持った! 早く帰りたい際に、ミリアが疑問を口にした。

「デメテルさん。農具と人件について、大丈夫ですか? あれほど広がる土地で農園を作るため、かなりの人力を必要ですよね」

「それは大丈夫よ~ そのようなものは必要がないよ。行くよ、リリス!」

「はい! デメテルさま」


 リリスと再び窓から飛ばした。後ろにミリアの苦情を叫ぶ声が町に木霊していた。


 買った土地に戻る。


「それじゃ、まず家を建てましょう」

「デメテル様、二人で、どうやって建てますか? はやり、人件が必要ですよね」

「安心しな、あたしはいいものがあるもの」


「収納ボックス!」


 収納ボックスから種見たいなものを取り出して設置する。

【メロンハウス】という500円で一発大当たりの課金アイテムである。


「デメテル様!」


 出てきた物に対してリリスが叫ぶ。

 あたしのメードとして、そろそろ慣れてくれて欲しいよ……


 家…… いいえ、丸いメロンが二人の前にある。

 外見は…… 網紋がついている大きく薄い緑色のメロンである。

 ハウスの周りが藤の柵に囲まれている。

 これ、一応、庭と認めましょう。

 玄関の両側に左右各三本のギリシャ風の台座が立っている。その上には、メロン様式の照明を設置している。


「とりあえず、中に入って見ましょう」

「……はっ、はい」


 一階は居間、台所、食堂、お風呂場、トイレになっている。

 二階はあたしの部屋と四つの空き部屋が用意している。

 三階以上は未開放状態のままにしている。

 開放するため、金が必要だった。


「デメテル様」

「なに?」

「どうして部屋の中にはこんなに明るいですか? 明かりがないのに」


 リリスが部屋を見渡して、聞いて来る。

 うん…… どうやって説明したらいいかな? 

 いくら『課金アイテム』と言ったら、彼女も理解できないよね。

 この部屋は料理、お風呂、照明、温度などのことを全て自動化管理している。

 でも、これがどんなエネルギーを消耗するかな? 

 確か、説明書には太陽エネルギーで発電と書いている。水と食べ物などのことも太陽エネルギーで合成してきたそうだ。

 すなわち、太陽の光があれば、何もかもできるような意味だよね。


「あたしの魔法で明るくなったのよ」

「デメテル様、凄い!」

「こわい(疲れた)でしょう? さぁ、一緒にお風呂に入ろう」

「お風呂って、何のこと?」

「入ったらすぐ分かるよ、早く早く」


「ふんふん、お風呂はいいな、まるですべての疲労が一気になくなったそうだ」

「気持ちいい! やはり、デメテル様は全知全能の女神ですよね」


 全知全能の女神? 女神様は今、あたしのメロンを待っているのよ。

 ところで、リリスの体が本当に色気っぽいね。胸はあたしより大きい、Bぐらいかな?

 蒸気を透り、ツルツルしている体に神秘さを感じられている。

 ちょっといたずらをしてもいいよね。あたしも女の子だしね。


「あの、デメテル様?」

「なに?」

「体は腫れてしまう。大丈夫ですか?」


 不味い! あたしは植物族プラントのことを忘れちゃった!

 体が水を吸い込んでしまった! 流れ出さないといかん!

 腰の後ろから藤の蔓が生えて、オーバーした水分を浴槽の外に出した。


「うわ! デメテル様が魔法のように元に戻りました。とこれで、デメテル様は植物族プラントですよね?」

「そうよ」

「なのになぜ服を抜いたら、人間族ヒューマンとそっくりなの? この触感も」

「あそこは、ダメ! さわるな! おかしくなったのよ!」

「嫌だ、昨日の借りを返しますよ。くすくす」


 その後、めちゃくちゃくすぐられた……


 今の体は擬態である。本物の姿は昨日使っていた【水仙スイセン】より更なる恐ろしい力を持つ植物の一種であった。

【SWO】の中にも一度しか使えなかったのだ。


 お風呂場から出て、台所にいって、冷蔵庫から冷えたメロン牛乳をリリスに渡す。


「リリス、これを飲んで」

「ピンの中に、オレンジ色の液体はなに? 冷たい」

「メロン牛乳っていう飲み物よ。あたしの故郷で皆さんは入浴後にこれを飲む風儀があるよ。美味しいだよ」

「うわ! 昨日食べていたメロンの甘味です! また飲みたい」

「それはダメよ。飲み過ぎなら、お腹が壊れてしまうよ! さぁ、晩御飯も出来たわよ」


 今日の晩御飯は玉ネギ入りハンバーグ、彩り野菜のサラダ、そして焼き立ての食パンである。

 リリスはやはり肉食の種族、三人前のハンバーグをあっという間に食べていた。


「リリス、ちゃんと野菜を食べないとダメよ!」

「私は野菜嫌いです! メロンください」

「野菜を全部食べたら、もっと美味しいデザートを食べさせるよ」

「デザートって、なに?」

「うん…… 甘いお菓子の意味だ」

「わい~ 今すぐ野菜を食べます」


 食後のデザートはあたしの定番——メロンプリンなのだ。

 初めてプリンを見るリリスはゴクリと唾を呑み込む。

 リリスはプリンを一口食べて、顔は咄嗟に幸福の笑みを浮かべた。


「この濃厚な甘さ、柔らかい食感。今までずっと一人でこんな美味いものを独占したデメテル様ズルイ!」

「ウフフ~ これから美味しいものをリリスと一緒に楽しむよ。もちろん、この世界にもな」

「ホントウ? 嬉しい」

「その代わり、ウフフ~」

「なに?」

「あたしはリリスを独占するよ」

「ぎゃー!」


 居間のソファにもたれ、リリスの頭を撫でている。

 窓から夜空を眺めて、ある閃きが脳裏をよぎった。


「リリス、あたしについて」

「どこに?」

「海よ! 星の海よ! 早く!」


 翼を展開し、爽やかな風を乗って、夜空に舞い上がる。

 空気を裂いて自由に夜空の海に泳いでいる。


 これは! お待ちかねの自由だ!

 かつて、あたしを束縛していたつまらない社会は既に過去になった。

 初めて、自由に生きている感覚を見つけた。


「ふうう~ や~ほ~! あはははは」


 ふわふわの雲を貫いた。

 見渡す限り果てしがない夜空が目に映る。


 無数なキラキラしている星々と月がキラキラ輝いて、まるで花束を解きほぐしたように燦めいている。


 リリスがやっと追いつけた。顔が赤くて、息が荒そうだ。


「デメテル様は速過ぎますよ!」

「リリス、これを見て」

「うわ! 綺麗い」

「この美しいものは、もうあたしたちのものよ。一緒に楽しもうよ」

「はい! どんな場所でもデメテル様にお供します!」


この度、自分の拙作をお読み頂き、誠にありがとうございます。

『面白い』『続きが気になる』と思われましたら、是非ブックマークの登録をお願いします。

拙作を評価していただけるととても励みになりますので、大変嬉しいです。

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