02.植物王女と初商売
「あなた、大丈夫か? 顔色が真っ白で……」
再び目を覚めたら、既に知らない町に身を置いている。商人のような身なりをしている猫耳の獣人族少女は心配そうな顔であたしに声を掛けた。
「ありがとう。あたしは大丈夫よ。ここは?」
「ここは亜人の町・シリスティアよ。私は雑貨屋のミユー」
初めて見た町を見渡す。広場には綺麗な噴水がある。広場は大通りに繋がており、レンガと木材で造った建物が両側に並ぶ石の道を、いろいろな種族の人が歩いていた。空から青く澄んで絹のような光は噴水の水をキラキラと光らせている。
「ところで、植物族は珍しいね。あなたは?」
植物族? まさか!
腕の周りが光を溢れさす葉に覆われている。
間違いなし! あたしはデメテルになった!
「ごめんなさい。あたしはデメテルって言い……」
「いけない! 早く行かないと、お姉ちゃんに叱られるよ!」
自己紹介がまだ終わったのに、彼女は既に物凄いスピードで行っちまった。
何と元気なドジ子なのだ。
見たところように、ここは女神様が言っていた異世界——— ギルディランド。そして、あたしはデメテルとして、生まれ変われだ。
「ステータス!」
半透明のパネルが浮かび上がる。この世界にもステータスを確認できるそうだ。
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名前:デメテル
種族:植物族
称号:植物王女
レベル:100
HP:24000
MP:15000
STR:200(+200)
VIT:300(+300)
INT:800(+3200)
AGI:400(+2000)
DEX:1000(+5000)
装備
頭:【豊穣女神の冠】全ステータスを1.5倍にする、MP消耗を50%軽減する、破壊不可
体(上):【豊穣女神のローブ】INTを2倍にする、ユニックスキル【栽培】、破壊不可
体(下):【豊穣女神のスカート】INTを2倍にする、ユニックスキル【日光】、破壊不可
左手:【薔薇王女の短剣】DEXを3倍にする、ユニックスキル【茨の舞】、破壊不可
右手:【薔薇王女の鞭】DEXを3倍にする、ユニックスキル【精神転換】、破壊不可
装備品:【かぐや姫の涙】INTを2倍にする、ユニックスキル【豪雨】、破壊不可
装備品:【紅葉の翼】AGIを4倍にする、MP消耗を80%軽減する、破壊不可
装備品:【植物王女の指輪】全ステータスを1.5倍にする、すべての植物に変身できる、破壊不可
スキル
S;【薔薇光束】【水仙】【風華陣】【植物王女】
A:【タンポポ爆弾】【寄生】【キノコ地雷設置】【竹召喚】
B:【合成】【酸素生成】【風耐性・大】【地耐性・大】
C:【風耐性・中】【地耐性・中】【鞭熟練度上昇】【短剣熟練度上昇】
ユニックス:【栽培】【日光】【茨の舞】【精神転換】【豪雨】
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「収納ボックス」
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金貨:6877432ゼニ
装備:【323/500】
回復アイテム:【480/500】
料理:【500/500】
生産アイテム:【500/500】
貴重アイテム:【420/500】
課金アイテム:【25/500】
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レベルや、スキルと装備、そしてアイテムも全部そのままに持ってきたそうだ。
町の中に武器を取り外しましょう。
そもそも、女の子が鞭と短剣を持つことを見ったら、誰でもアレを連想してきたよね。
早速、ゲームのように、情報を収集しよう。
空からの光で地面に何をピカピアと光らせている。
これは…… ポケットティッシュ? 後ろが何を書いているそうだ。
【雑貨屋ニャーニャー堂へようこそ】
…… 異世界にもポケットティッシュで店を宣伝かよ?
さっきの子が落としたそうだ。なら、このニャーニャー堂から情報を集めよ。
ところで、さっきからずっと気になっている。
異世界の言葉と文字は日本語と全く違っているが。あたしははっきりと理解している。そして、喋った日本語もはっきりと異世界の言葉に翻訳されているそうだ。
さっきはきちんと確かめていた。獲得した新しいスキルもなかった。
すなわち、これは女神様からもらえた転生特典のようなものだよね。
ありがとう、食いしん坊の女神様。
ポケットティッシュの地図により、しばらく歩いていき、にぎやかな商店街に来た。
通りの両側に一軒一軒の店舗が並んでいる。店のショーウィンドウ映ったあたしの姿を目にした。中に様々な見掛け倒しの商品を陳列している。
真ん中の店舗はニャーニャー堂だよね。店の入り口にあんなにでっかい招き猫があるだしね。
地図を見なくてもわかるよ。
この店にはさっきの贅沢なイメージと違い、飾り気の無いが、人に落ち着きを感じさせる。そして、商品の種類や用途により分けられて、陳列している。
きっと心を込めてしていたでしょう?
農家出身のあたしは地味なイメージの方が好きよ。
中には猫耳が生えている女性が一人カウンターの後ろから声を掛けている。
さっきの少女より少し年上を感じる。姉妹かな?
「いらっしゃいませ。何をご利用でしょうか」
「あの、あたしはこの町に来たばかりだので。良かったら、地図が欲しい」
「わかりました、少々お待ちください」
彼女は店の奥に声を掛けた。
「ミユー! 地図を持って来てくれ!」
「はい! お姉、店長!」
さっきの少女が地図を持って、元気に走って来た。
「あぁ! あなたはさっきの!」
「さっきは助けてくれで、ありがとう」
「知り合いですか? ミユー」
「実は……」
簡潔な自己紹介をした。あたしの設定は遠いから来た旅人だった。
年上の女性はセラ、店の店長である。姉妹二人でこの店を経営している。
でも、おかしいね。こんな時間で、なんであたし以外の顧客がいないの?
「そうですか。デメテルさんが初めてのお客様ですから、地図は半額で500ギルにしましょう」
ギル? ここの貨幣なの?
「すみません。あたしは来たばかりなので、故郷の金しかなかった……」
【SWO】の代金———ゼニを出した。二人はこれを見て、戸惑う表情を浮かべた。
やはり、ゼニは使えないか…… なら!
「まぁ、初めてのお客様ですから。今回だけは無料にしましょう」
無料…… か? このままに借りをしたくないよ。どうしょう?
頭の中にアイデアを思いついた。
「あの、失礼かもしれないが。さっきから、あたし以外のお客様がほとんどいないよね。何故かしら?」
「それは……」
やはり話したくないか。あたしも、何でいきなりこんなの失礼なことを聞くか?
「それはアレクス家のせいだ!」
「ミユー!」
アレクス家———人間族の貴族である。商業ギルドにいる裏のボス見たいな人物であった。半年前に、商店街の店を次々と彼らの傘下に収められた。今残っているのは、このニャーニャー堂しかなかった。
華麗なものが好きな気持ちは誰にでもある。とは言うものの、過度に派手なものを追求しすぎると。本末転倒だと思う。
なら、地図の恩を返さなきゃ。
「収納ボックス」
ボックスから、2カットのメロンを取り出した。
「良かったら、これを味わってもらえないでしょうか?」
「この見たことのない果物は?」
「メロンという名前だ」
これは【栽培】のスキルで、作っていたゲーム内の料理だった。でも、どうしてずっとカットの形なのよ!
初めてメロンを見る二人はゴクリと唾を呑み込む。
二人はメロンを一口食べて、目がすぐピカピカと輝いている。
「何これ! みずみずしい果汁がジュワッと湧き出てきます!」
「口の中に残ったまろやかな甘さ。美味しい」
二人のリヤクションから見ると、結構満足したよね。
それじゃ、本題に入りましょう。
「このメロンという果物は故郷の名産だった。売れると思わないでしょうか?」
「売れますよ! きっと一気に人気商品になれますよ!」
「それでは—— セラさんは貴店で売りたいではないでしょうか?」
「本当にいいでしょうか? どうしていきなりこんなにいいものを?」
「地図の恩を返しだけさ。あたしはそういう人なのだ」
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