エインとフォティアの秘密の特訓
朝食を食べ終え、軽く身支度を整える。
「学園に行ってきます」
「あら?まだ学校は始まってないよね?」
「昨日学園に行った時に友達に会って、今日会う約束をしたんですよ」
「そう言うことね」
ミレさんと見送りに来てくれたアルアちゃんに行ってきますと言って、酒場を出る。
昨日通った道を通り、学園に向かう。
学園の正門をくぐり、訓練室に向かう。
訓練室を開ける鍵をもらってくるのを忘れてと思ったが、すでに扉が開いていた。
中に入るとやはり、フォティアが居た。
「早いな」
5個のファイア・ボールを空中で自在に動かしていた。
「ここの学生寮を使わせてもらってるからね」
それなら、僕より早く来たことにも納得がいく。
「体はしっかり休められたか?」
「大丈夫」
聞くまでもなかったか。
「それじゃ、リュウガ対策始めようか」
「始めるとは言っても、何をするんだ?エインが刀を使うってわけでもないだろ?」
「刀は使えない。けど、動きの模倣ならたぶんできる」
「動きを!?」
速さと動きだけなら、僕でも模倣はできる。今のフォティアなら速さにさえ慣れることが出来れば、初撃必殺なんてことは無くなるだろう。
「僕の腕を防御してくれればいいから、とりあえず始めようか」
お互いに距離を取り、態勢を整える。僕は出来る限りリュウガに動きを近づけるために、無刀で居合の姿勢をとる。
『3……2……』
システム音のカウントダウンが始まる。頭の中にあの試合で見たリュウガの姿を想像する。
『1……start!』
合図と共にブースト・トリプルを発動させ、体中を強化する。原理は理解していないが、自分なりのやり方で、あの神速を再現しよう。
エインの準備が完了したと同時に、フォティアの準備も完了する。
全身に炎を纏う。特に両腕は炎の腕と言っても差支えが無いほどに燃え滾っていた。
「……………………」
「……………………」
二人しかいない訓練室に静寂が訪れる。
さあ、速さに対応できるかな?
左足の裏からインパクトを炸裂させ、急加速。
さらに宙へ浮いた体を加速させるために両足からインパクトで加速。
「ぐううぅぅっっ!?!?」
やっぱりここまでの加速は負荷が掛かりすぎる…………
「フッッ!!」
「!?!?!!!」
フォティアからして、エインの動きは予想よりも遥かに急激なモノだった。
リュウガの居合よりも2段階ほど速さの格は落ちる。
(ピンポイントで、ガード!!)
右腕をさらに炎で覆い、防御力を強化して構える。
しかし、その構えが完成する前にエインの腕はフォティアの首に到達していた。
「がああああああああっ!!!」
ヤバい!
力加減ミスった…………
ブーストが掛かった拳であれば岩を砕くことができる。鉄板であっても拳の型がつくくらいの威力にまで拳が強化される。
そんな状態にある腕の手刀をもろに喰らえば首の骨の一本や二本余裕で砕くことが出来てしまう。
訓練室の床を転げまわり、壁に激突して静止したフォティアにエインは駆け寄る。
「大丈夫か!?意識はあるか?」
「う、うん。首が結構いたいけど、たぶん…………大丈夫」
床に手をつき、ふらつきながらも立ち上がるが、すぐに崩れ落ちてしまう。
「体がうまく動かない…………」
やっぱり、体に影響が…………
「やっぱり保健室に行こう。原因の僕が言うのもなんだけど、結構思いっきりやっちゃったから…………」
「ちょっと、しゃべるのにも違和感が」
神経もやっちゃった!?
「違和感あるから、炎があるところに連れて行ってくれないか?」
「えっ!?炎?なんで?」
フォティアは一旦、エインから目を逸らした。
彼が精霊を宿していることはエインに話していない。ましてや話すこともできない。
精霊を宿した事によって彼らの力の恩恵を受けることが可能になっている。その一つとして、炎の近くにいることで毒などの状態異常、切り傷などの軽傷から骨折と言った重症まで、あらゆる身体のダメージを回復させることができる。
このことを直接話すことができない。どうすればいいのか思索する。
「う~ん…………師匠との修行で、炎の近くで休む、ことで、すぐに回復できるように、なったんだ」
炎の近くで休むと回復…………ちょっと僕の才能に似ている。
「わかった!炎持ってくるからちょっと待ってて」
勢いよく飛び出していったエインだが、すぐに戻ってきた。
「えっ!?もう見つかって……うわあっ!?」
「連れて行った方が速いと思ってね!」
フォティアをおぶさって部屋を出る。誰もいない廊下を走り、炎がある場所を探す。
幸い炎はすぐに見つかった。壁に掛かったトーチ。
普通は魔石をエネルギー源とした魔石灯を明かりとして使用するが、この学園で、生徒があまり寄り付かないような場所では。トーチが使用されているところがある。
エインはそれを知っていたため、すぐに炎を探し出すことが出来た。
「ここでいいか?」
「ありがとう。そこに下ろしてくれ」
指示された通り、トーチの元にフォティアを下ろす。
下ろされたフォティアは目を瞑り、瞑想をしているような格好になる。
「フォティア、本当に回復してるのか?」
「ん~少し時間かかるから、部屋に戻っていて大丈夫だよ」
「わかったって言いたいところだけど、本当に大丈夫か気になるから、ここにいるよ」
フォティアの隣に腰を下ろす。
「心配性だなエインは。それじゃあ、俺が全快するまで話し相手にでもなってもらおうかな」
「そうさせてもらうよ」
フォティアは僕が夏休み中に何をしていたのかが気になっていたらしく、何をしていたのかを聞いてきた。
シュルツ王国とレイヴァンズ王国との戦争に参加、なんてことを言えるはずが無いので小屋での特訓のことを話した。
特訓はゴルドーに相手をしてもらうことが多かったが、小屋でのリーダーということで仕事で開けることが多いため、ギルダやガウダ、セインたちとも訓練をした。
「小屋の人たちとの特訓で新技もいくつかできたから、試すのが楽しみなんだ!」
「俺との戦いではまだ使ってないのか!く~~エインの新技を引き出したいな!!」
新技を使われなかったことに悔しがっている様だが、技自体が特定の行動をする相手に対する対策として編み出したものだから、そう簡単に使うわけにはいかないんだよね。
「ま、新技は後々ね。それよりもフォティアはコロシアムでどんな人と戦ったの?」
「コロシアム、でか。そうだな~印象に残ってるのは…………」
フォティアから聞いた対戦相手はまさに無法者と言われるような人ばかりだった。
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