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試合の終わりと特別試合

すぐに起きるつもりだったが、目を覚ましたのは保健室のベットの上だった。

「んっ!ふぁああ~~~」

大きく伸びをして、周りを見渡す。

そこまで疲れたとは思っていなかったが、小屋からの移動とさっきの戦いで相当疲れたようだな。

「あら、起きたのね!」

僕の声を聴いたのか、保健室の先生がカーテンを開けて入ってきた。


「まったく。前回のリュウガ君と戦ったときといい、よくもまあ体をここまで酷使できるわね」

酷使、と言われてもなあ…………

「骨が折れないように結構魔力使ってるんですけどね」

「それでもよ!!全く…………」

怒りとも呆れともとれる表情をしながら先生はカーテンを全開にする。


開け放たれたカーテンの向こうのベットにはフォティアが座っていた。

「おはよう。でいいのかな?負けた俺が言うのもおかしいんだけど、体大丈夫?」

フォティアが気にしているのは火傷の事だろう。

「この通り、なんとも無いよ。むしろフォティアの方は体大丈夫なのか?思いっきり蹴りとか入れちゃったけど?」

「えっと…………」

フォティアの視線の先には呆れた表情をした先生がいた。


「二人とも!お互いの体を気にするなら、もうちょっと手加減して頂戴!!私も治すの大変だったんだから…………」

ゲッソリしている、様に見える程先生は憔悴していた。

恐らく、僕とフォティアを治すために相当な魔力を使ったのだろう。

爺さん曰く、切断された腕もギリギリ治せるくらいの治癒魔法を扱えるらしい。

その代わり、2,3日文字通り使い物にならなくなってしまうらしいが…………


「ん!?エイン!さっき、俺の事、フォティアって呼び捨てで言ってたよな!?」

「ああ、そう言えば言った気がする」

まったくの無意識だった。

「何で呼び方変わったんだ?」

とても興奮した様子で質問してくる。

呼び方が変わっただけでこれほどテンションが上がるものなのか?

「ん~~僕自身さっぱりなんだよね。リュウガの時は、呼び捨てでいいって言われたからだけど」

「へ~~」


納得いっていない様子だが、僕もなぜだかわからない。「リュウガは強いって認めてるからそう言ってるんだと思った」と言われてそうかもしれないと思ったが、フォティアにはじめから呼び捨てでいいと言われたらそうしていたのかもしれない。

「二人とも、それだけ話せる元気があれば、もうベットの上に居なくても大丈夫でしょう!」

長居するつもりもなかったし、ここから退散しようかな。

「そうさせてもらいます。お手数をおかけしました」

「ありがとうございました」

「本当だよ!今度はもうちょっと程度ってもんを考えてくれよ?」

「…………善処します」

「はいぃ…………」

歯切れの悪い返事が返ってくるので、保健室の先生は大きなため息をつく。

エインとフォティアはともに、実力が拮抗していればこういうことになるとわかっているため、素直に返事ができなかったのだ。



最悪爺さんがいるからいいとは思ってたけど、爺さんが手を出すまでの中継ぎをこの人がやらされる羽目になるんだもんな…………

「先生以外に僕たちを見られる先生がいればいいんですけどねえ」

これからの戦い方を少し考えないといけないと思ったエインだった。

「本当にその通りなんだけど、私レベルの人ってあまりいないのよね」

捉え方によっては傲慢に聞こえそうだが、事実、彼女ほどの治癒魔法を扱える人はそういない。

アルドルが魔法に適性を持った人を集めているからじきに見つかるだろうと思いながらエインは先生にお礼を込めて頭を下げて部屋を出た。


これからどうしようかと話をしていると後ろからメイさんに話しかけられ、学園長室に向かうことになった。

そう言えば、近況報告をする予定だったんだ…………

すっかりフォティアとの戦いで忘れ去られていた。


学園長室まで移動し、中に入る。

「目覚めたようだね。いや~とても良い戦いを見せてもらったよ」

手を前に出し、大げさに拍手をしてくる。

ワザと吹っ掛けたくせに、と言いたいところだが、今回はぐっとこらえる。

「なぜ、俺とエインを戦わせたのですか?」

最もな疑問だろう。


「ちょうど同じ学年の強者が二人そろったから。それにフォティア君が実際はどう戦うのかを見てみたかったから」

そう言えば、僕と戦う前は爺さんとやり合ったと聞いた。どういう戦いだったのかは知らないが、フォティアの素の戦い方を見ることはできないだろうね。

「それだけですか?」

他にも隠していることがある。僕はそう確信している。なぜなら、この爺さんはそう言う人だから。

「ん~~。あとは私の気分かなっ!」

ホレ見たことか!!

やっぱり爺さんの気分だったよ!実際は楽しい戦いをできたから良かったけどさ!

もうちょっと事前準備とか必要だったのにいきなり戦わせるんだもん。


「気分で学園長と戦ったフォティアとこっちに来たての僕を戦わせないでください!」

すまんすまんと笑いながら謝られた。絶対に悪いって思ってないこの爺さん!

「それはそうと、君たちには夏休み明けの特別試合に出てもらいたいのだが、どうだろうか?」

いきなり、真面目モードに入った!!

雰囲気が一瞬で変わったアルドルを久しぶりに見たエインは少し驚く。


「特別試合、というのは…………」

フォティアが一番気になっていたことを聴いてくれた。

「一個上の先輩と試合をしてもらうのよ。それが特別試合」

メイさんが割って入ってきた。

「夏休み明けからは実際にモンスターや猛獣と戦ってもらうんだけど、そう言った授業を通してどこまで成長できるのかっていうのを見せる試合なの」

「でも、その授業だけで強くなれるわけじゃないでしょ?現にここに例外がいますし…………」

僕は隣にいるフォティアを親指で指さす。


「そこは、目安としてってことよ。そもそも、授業以外何もしないって生徒の方が少ないでしょうし」

それは確かに言えている。

「俺たちと先輩たちとでは実力差、特に「神の力」の有無で一方的にやられる気がするのですが?」

「そこは気にしなくて大丈夫。しっかりハンデは儲けるから」

「ハンデ、ですか…………」

ちょっと不満そうだな。

先輩たちの戦いをあまり見たことが無いからわからないけど、今のフォティアならハンデはいらないというのが僕の考えだけど…………

爺さんも同じ考えか。


エインがアルドルの眼を見て、ハンデについては本気で言っていないことが分かった。

フォティアを特別試合に出すために発破をかけたのだろう。

「ハンデがいらないというのであれば、事前に申し出てくればいかようにでもできるからね」

「そうですか。では、もうここで言っておきます。俺にハンデはいりません。純粋な一対一で戦いたいです」

「じゃあ、フォティア君は参加ということだね?」

フォティアが大きく頷く。


「大口をたたいていますが、戦う相手は二年生の中でもトップクラスの実力者ということをお忘れなきように」

メイはフォティアが天狗にならない様に釘を刺す。

いらぬ心配かもしれないとは思うが釘を刺すのは正しいと思う。

これほど急激に力を付けた者は少なからず、調子に乗る。これの対策だと思えばメイの言葉もいらないものではない。


「それで、エイン君はどうするのかな?」

「僕も先輩たちには興味があるので出場します。特別試合に」

「そうかそうか!出てくれるか!!」

とても嬉しそうに首を縦に振っている。それも満面の笑顔で。

「用事は以上になります。本日はいろいろとありがとうございました」

メイさんが丁寧にお辞儀をしてお礼を述べてくる。


「いえ、こちらとしても良い経験をさせてもらいました。それに特別試合の選手に選出していただき、光栄です!」

丁寧なお礼には丁寧な返事を。なんて言わんばかりの返しをするフォティアに感心する。

「本当にいろいろありがとうございました。メイさん。これからもよろしくお願いします」

入学した時から、彼女には相当お世話になっているので、軽くではあるが改めてお礼をする。

「おい、私に…………」


「「それでは失礼します」」

何か言いたげだったアルドルお言葉を遮り、二人はもう一度深々と頭を下げて部屋を出ていった。

「……ドンマイです。学園長」

「……………………うん」

エインですら聞いたことが無いであろうアルドルの弱々しい声が静かになった学園長室に弱々しく反響した。

終焉の先の物語を読んでいただきありがとうございます。ブックマーク、評価、コメント等していただけるとありがたいです。


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