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怪物

地面が揺れ始めてから1分と掛からないうちにレイヴァンズ王国側から狼煙があがった。

その狼煙を見たレイヴァンズ王国の兵士たちは一斉に背を向けて自陣へ脱兎のごとく撤退していった。

シュルツ王国の兵は不思議に思っていたが、すぐにすべてを理解した。

レイヴァンズ王国陣営側から聞こえてきた、獣の雄叫び。兵士たちは皆、二国の戦闘で刺激させられた魔物が声をあげているだけだと勘違いしていた。しかし、本当は…………

「巨大な、魔物…………?」

「いや、あのサイズは!!!」


「撤退だーーーーーー!!!早くこの場から離れるんだ!」


中央部隊を指揮するカインが周りに指示を飛ばす。歴戦の勘が目の前の怪物が”ヤバい”ということを察していた。

「レイヴァンズ王国のやつら、あんな隠し玉を!?」

「逃げろーーー!!こんなとこで…………」

兵士たちが次々と背を向けるが、その背中たちに向けて特大のブレスが放たれる。

射線上には、兵士だけではなく、シュルツ王国の軍本部もあった。

「あ…………」

ただ迫りくる特大のブレスになす術の無いアルビス達はただ立ち尽くすことしかできなかった。

しかし、その中で一人ブレスの斜線上に立ちふさがる者がいた。


「『イージス・アネモラル』」


円形の盾状に形成された風が軍本部前に現れる。その風の発生源には自身が発生させた風に髪をなびかせる少女、ニウがいた。両手を突き出し、正面から怪物のブレスを迎え撃つ。

全てを消し炭にしながら、地面を抉り轟音と共に迫ってくる漆黒のブレスと風の盾が激突する。


「くっ……何という威力!」

減衰することなく直撃したブレスに風の盾が押され始める。

「一人では、やはり厳しいか……それにこの威力。確実に魔物の域を超えている」

轟々と音を立てる風の盾はさらに押され、ニウも苦悶の表情を浮かべる。

「あまり、頼りたくはないんだが、仕方がない。…………アルド、学園長!!!」


ニウの呼びかけに応じ、アルドルが魔法を発動させる。しかし、相手国にとってアルドルや学園の生徒がいることを知られるわけにはいかない。故に---

「『マジック・ブースト』」

彼が発動したのは魔法の発動を強化する魔法。これは現在発動中の魔法にも有効であり、攻撃力や防御力、爆発力などあらゆる面で魔法を強化できる。

「これなら!」


アルドルによって強化されたイージス・アネモラル。さらにその範囲を拡大させる。

「第二幕の始まりです!!!」

ブレスは風の盾の表面を滑り、空中へと打ち出された。そしてそれは爆音とともに消滅した。

怪物とニウとの攻防を両兵士たちは足を止めて呆然と見つめていた。それほど、目の前で起こったことが非現実的すぎたのだ。


「グおおおおおおおおおおおおん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ブレスを止められたことに激怒したのか、怪物は耳をつんざくような雄叫びと共に、戦場へと降り立った。そして、周りにいる者たちを鬱憤を晴らすように蹂躙し始めた。そこには、この怪物を呼び出した張本人がいるレイヴァンズ王国の兵士たちも含まれていた。


「うわあああああ!?」

「ぐへっ!?」

「ぎゃああああああああ!!」


兵士たちの勇ましい声が四方八方から聞こえてきた戦場は処刑場へと姿を変えた。巨大な足で踏みつぶされ、無残な肉塊と化す兵士が量産され、怪物の三首によって多くの兵士が骨を砕かれ、四肢を割かれながら、養分となっていった。

一瞬にして悲劇の戦場とかしたこの平野には怪物が兵士たちを蹂躙する音と、兵士たちの絶叫が響き渡った。



「逃げろ!!早くここから遠くへ!!」

ベイドが固まってしまっている兵士たちに声を掛ける。時には頭をたたき、背中を押し、全力でこの場から兵士たちを撤退させる。


「奴の視界に入るな!目を見るな!見られたら最後だと思え!!」

ダウパールもベイドと同じく、兵士たちを逃がすために声をあげていた。


幸いなことにベイドやダウパールたちが左右に展開していたことでそれぞれの場所で立ち尽くしていた兵士たちを再帰させ、逃げに展示させることができていた。それでも、目の前の蹂躙に腰を抜かし、体を震わせ、死を待つ生者となるものもいた。



「これは、兵士たちが逃げ切るよりも前に全滅もあり得るぞ!?」

ダウパール側で怪物の蹂躙の一部始終を見ているエインは最悪の未来を考える。

これは、みんなであいつを仕留めた方が得策かもしれない。

そう思うや否や、エインは走り出す。近くにいるダウパール、そしてネシリアに声を掛ける。

「俺ぁたちでやつを倒す。ってことには賛成だが、お前には行かせられねえな」

「僕もあいつの意識を向けるくらいの動きは…………」

「ダメだよ~~。こういうのは私たちの仕事なんだからっ」


反対側にいるベイドとビスタ。そして、後方で先ほど活躍したニウを含めた6人で怪物を相手どるつもりだったエインだが、ダウパールとネシリアに拒否されてしまう。

「僕が、一年だからですか!?」

「そうだ!」

「違うよ~」

どっち!?でも、どっちみち全員でどうするか早く決めないといけない!すれ違う兵士たちも恐怖と絶望でもう動けなくなってる。この人たちが逃げ切るまでの時間くらいは稼がないと。


兵士たちのことを思いつつ、疾走するエインたち。その姿を見た兵士たちは虚ろな目でただ彼らを見ることしかできなかった。

怪物が暴れている戦場中央付近に差し掛かった時、反対側からもベイドとビスタたちが駆けつけていた。

やっぱりあの二人も同じことを考えてたんだ!

エインは心の中でガッツポーズをしながら距離を詰めていく。そして、怪物が蹂躙をしている数十メートル先で集合した。


「みんなで、あいつを…………」

エインが言いだそうとしたとき、それを遮ってベイドが指揮をとり始める。

「俺とダウパール、ビスタは怪物(あいつ)の相手、ネシリアは敵軍の中であいつを手名付けてそうな奴を探し出してくれ」

僕は!?

「エインは、あいつの核を探せるか?」

「核?」

「恐らくあいつは、凶魔の部類だろう。なら首を落とすんじゃなくて核を破壊しなくちゃならねえ」

凶魔、初めて見た。ゴルドー達から聞いてはいたけど、ここまで大きいとは…………。


「あの大きさだと、結構時間が必要になる」

「どれくらいだ?」

「15分は欲しいかも」

この距離からあの巨体の中にある核を探すとなると相当な魔力が必要になる。それに、まだ兵士たちも残っているからそれを排除しながら探すとなるとやっぱり時間が掛かってしまう。


「15……いや、10分で探し出せ。奴の力がわからない以上、長時間の戦闘は避けたい」

5分なんて大して変わらないと思うけどな。

「善処はします。でも、最低でも10分はかかりますよ」

返事は来ない。すでに彼の意識は怪物、凶魔へと向いている。しかしその後姿は信頼の証でもあった。

「よし、行くぞ!!!!」

「おう!」

「…………」

「お~~~!!!」

「了解」

それぞれが自分の役割を全うするために疾走する。

終焉の先の物語を読んでいただきありがとうございます。ブックマーク、評価、コメント等していただけるとありがたいです。


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