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長期休み前日

リュウガの味再現は一日中続き、晩御飯を食べるころまで僕は付き合った。

以前きた時と同じ雰囲気の街中を通り、ミレさんの酒場まで帰宅する。

僕が酒場に着くころには酒場内は冒険者でごった返していた。

今日はミレさんから上がってもいいと言われたこともあり、急がず自分の部屋へ戻った。



「久しぶりにこの時間帯、部屋にいるな……」

(いつもはホールで駆け回ってるからな)

「意外と楽しいもんだぞ?いろんなとこから声が飛んでくるのを全て認識してさばいてくのは」

(お前らしいと言えばお前らしいが……ここでも戦いの訓練してるのかい……)

部屋で特にやることのない僕は手早く風呂を済ませて床へついた。

次の日は特にやることもなかったので一日酒場の仕事をして過ごした。



二日間の休みを終え、再び学校が始まる。

と言っても、もうすぐ長期休みということもあり、特に新しいことを教わるでもなく今まで学んだことの復習が大半だった。

そして、最終日…………

「ここにいる多くの生徒が半年前の自分よりも成長していることでしょう。しかし、皆さんはまだ成長の途中です。明日から始まる長期休みでは、学園に縛られることなく伸び伸びと自信を磨くことができる期間です。有意義に過ごし、今の自分よりもさらに成長し、その姿を私に見せてください。これで学園長(わたし)の話は以上です」

学園長の話が終わり、終業式も閉会となった。

クラスに戻り、担任の先生からの言葉も貰い各自解散となった。



「俺たちはこの後出発だから」

「次に会うのは休み明けだね」

エインの席にフーリアとガウダ、そしてフォティアの三人が来ていた。

「エインはどうする?この前は馬車を予約してなかったけど……?」

「予約は…………多分大丈夫。どうにかなる」

というかしてくれると思う…………小屋には直接いけないから。

「そうか」

フォティアが気にしてるとは思わなかったな。



「今日は訓練室も使えないしもう帰ろうか」

バックを持って席から立ち上がる。

みんなと一緒に教室から出て校門へ向かう。

「それじゃ」

「休み明けで」

「休み楽しもうね~」

フォティア、ガウダ、フーリアは寮へ僕は一人メンストリートへ向かっていく。

「三人ともまたね」

三人が手を振ってくれるので僕も手を振り返す。



三人を見送った僕はミレさんの酒場に向かう…………わけではなく、再び学園の方へ足を向けた。

知り合いに見つからないようにとある場所まで向かう。

知り合いと言っても数えるほどしかいないので誰かに見つかるようなことなく目的の場所まで辿り着いた。

目の前の豪華な扉をノックし、中に入る。

「来たか、エイン」

「さっきはお疲れ様、とでも言っておくよ」

「あなた!学園長に向かって……」

「いいよ、メイ。むしろ、普通に労われたら気持ち悪い」

僕だって普通に労うくらいするぞ!



(それなら、素直に言ってあげればいいじゃないか)

(それは何となく癪に障るからヤダ)

(あはは~)



「それで、ここに来たのは私に用があるんだろう?」

「そうそう、休みの間はゴルドー達の……って、この話…………」

メイさんは知ってるのか?

アルドルに向けている視線を隣にいるメイに移す。

「ああ、大丈夫。彼女はゴルドー達のことは知ってる……」



「ちょっと待ってください!?」

おいおい、この反応…………知らなくね!?

「彼も彼らと面識が!?」

「あ…………」

「爺さん……………………」

伝えていなかったのを思い出したのか、アルドルはエインとメイから視線を逸らす。

そんなアルドルに二人は呆れたという意思を孕んだ目線を送る。


(ははははははは、まさか知らなかったとはなぁ。しかも、アルドルは教えてないときた。)

(うるさいぞ)

(ああ、すまない。でもおもしろっくってな、あははははは)

(ったく……)



「ゴホンっ!……メイ、このことについてはあとで必ず話す。ので、話を続けます」

無理矢理押し通した……

メイさんも話してくれるのなら、と追及することをやめた。

「ややこしくなるから、しっかり話しといてくれ」

「わかったわかった。ちょっとは信用してくれてもいいんじゃないか……?で、小屋に帰るんだったな?」

「うん。特にここに残る必要もないから……」

ミレさんたちといるのも楽しいけど、やっぱりゴルドー達との方が安心できるんだよな。



「はは~ん、さてはずっと学園(こっち)にいたから寂しくなったんだろう?」

「んな!?そんなわけないだろう!!学園に居た時間よりゴルドー達といた時間の方が長いんだぞ?  

寂しいなんて思うわけ……」

ああ、この顔は何を言っても無駄な顔だ…………

エインの反論を聞いてより一層ニタニタした顔に拍車がかかる。



「寂しくなったエイン君は、今すぐにでも帰りたいと?」

「あのな!寂しくは…………もういいや。ミレさん……僕を留めてくれてる酒場の女将さんに何も言ってないから言ってからで」

「そうか、なら何でここに?帰るときに来ればよかっただろ?」

確かにそうだった。

「念のためってやつだよ。爺さんがダメって言ったら、自分の足で帰らないといけなくなるから」

「私がそんなこと言うわけなかろう。……それじゃあ、女将さんに伝えてからということで」

「うん、それじゃ」

用は終わったので踵を返して再び豪華な扉へと向かっていく。



「ちょっと待ちなさい」

呼び止められてしまった。

ゴルドー達のことは爺さんが話してくれると言ったのに、何か僕に用が?

「何でしょうか?」

「ここに来るときは、ちゃんと正規の手続きを踏んでから来て下さい。いいですね!」

ああ、忘れてたよ。そういえば学園長してるからそう簡単に会える人じゃなかったっけ……

小屋の時と対応があんまし変わらないからすっかり頭から抜けてた。

「わかりました。以後気を付けます。……それでは」

軽く返事をしてから、扉を開けて外へ出る。

「本当に大丈夫かしら…………」という声が聞こえてきたが聞かなかったことにした。

終焉の先の物語を読んでいただきありがとうございます。ブックマーク、評価、コメント等していただけるとありがたいです。


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