翌日
「さっきの攻撃お前ならどうする?」
「僕なら軌道を反らしてから、膝で腹に一撃入れるかな。怯んだら頭にインパクトを打ち込んで気絶させる。リュウガならどうするんだ?」
「俺なら刀で同じように攻撃の軌道を反らしてからそのまま斬りこんで終わらせる。」
決勝戦を終えた次の日、エインとリュウガの二人は二年生のランク戦の試合を見に来ていた。
「あの二人、二年生の試合見に来て何してるんだろうな?」
「さあな。でもよお、俺たちの戦いなんて見ても参考にはならないよな~」
「俺たち、あいつらよりたぶん弱いもんな~」
「それを言うなよ。悲しくなるだろ?」
昨日の試合を見に来ている二年生はほんの一部でしかなかったが、見に来ていた者は、激しい戦いだったこと、そして最後の逆転劇を見て触発され、破竹の勢いで試合を行っていた。触発された者の中には、二年生トップのルークスとクルスもいた。
二人は熱い戦いを求めるかのように試合を続け、上限の十試合を終えても闘技場で試合をしていた。
そして、この日は三年生のランク戦も始まっていた。二年生同様、昨日の試合を見に来ていた三年生もやる気十分で試合に臨んでいた。
一年生ランク戦決勝から一週間が過ぎ、二年生ランク戦の最終日を迎えた。
「本日は二年生ランク戦順位決定戦を行います。それではクルス・ゼル・テライスさん、カーセル・エスティールさん入場してください。」
この試合に出場していないルークスはクルスに負けはしたが、その後、負けることはなくエインとリュウガの試合を見てからさらに勢いをつけ、クルスにもリベンジを果たし、一位となっていた。
「それでは、試合を始めます。」
試合開始の合図とともに二人は神を自身に宿す。
「なんか雰囲気変わったか?」
「うまく言葉にできないけど変わったね。」
このランク戦をエインとリュウガそしてフォティア、フレム、ガウダ、フーリアの四人も見に来ている。そして、フォティアとフレムは二人の変化に気づいた。
「あれが〈神〉を宿すってことなんじゃない?」
「お前らも、わかるんだな。」
「そりゃあ、エインと一緒にいるから雰囲気の変化はくらいならわかるよ。」
「僕そんな雰囲気変わる?」
何気ない話をしながら目の前で繰り広げられている激しい戦いを六人は見ている。
一年生であるにもかかわらず、二年生の試合を見に来ているのはこの六人くらいでそれ以外は二、三年生しかいない。そのため、エインたちの周りだけ異様な空間となっている。
試合中に舞台を覆っている結界が破損するというハプニングが起きたものの、会場に来ていた生徒には被害が出ることはなくクルスの勝利で試合は終了した。対戦相手のカーセルは守りが固く、クルスはそれを崩すのに手間取ってしまっていた。
「あれで一年しか変わらないって、先が思いやられるな……」
ガウダはため息交じりに今の自分の実力と二年生の実力を比較する。
「神の力抜きにしても僕たちより強いもんね。」
「私、進級できるのかな。」
エインとリュウガ以外の四人は先ほどの試合を見てこれからのことにとても不安になっていた。
もともと四人はここに来る予定はなく、エインに誘われて二年生の試合を見に来たのである。エインとしては今後の参考になるだろうという気持ちで読んだのだが、あまりにもかけ離れていたため思っていた通りの結果が得られなかった。
むしろ逆効果だったのではないかと、四人の反応を見てエインは考え始めていた。
「先のことなんて考えるな。考えてるだけじゃ何もできやしない。極東じゃあ、こんな事日常茶飯事だったんだ。強くなりたいんだったら今以上のことをするだけだ。」
リュウガから強めの言葉が返ってくる。あまり関わりを持っていない四人からすれば、そんなことわかっている、とはねのけたい言葉であったが言い返す言葉が無いため沈黙してしまう。
そんな中、口を開いたのはフォティアだった。
「俺は強くなるためにエインに特訓してもらってるし、授業もちゃんと受けてる。それだけじゃ足りないっていうのか?」
「足りない。」
即答される。
「特訓をするだけなら誰にでもできる。フォティアはその特訓を実践に生かせていると思っているのか?俺はその特訓を見ていないから実践に生かせてるか否かはわからないけど、生かせていないとするならば足りない。それに強くなるためなら他人の戦い方を見るべきだ。」
少しリュウガの語気が強くなる。
「まあまあ、リュウガの言い分もわかるけど、すぐに強くなれるわけじゃないんだから。」
エインが話に割って入り、場の空気を変えようとする。
「リュウガ君はいつも放課後何してるの?」
それを察したのか、フレムが話題を大幅に変える。
「対して面白くもないぞ。放課後は師匠のいる家に帰って家事とか炊事とかをしてる。」
「「「「「え!?」」」」」
何とも家庭的な返答に全員の目が点になる。
「そんなに、驚くことなのか?」
リュウガはみんながなぜ驚いているのかわからない様子だった。
「いや、なんか、こう……家に帰っても素振りとかばっかしてるんじゃないのかなって思ってたから。」
フーリアが何とかみんなの思っていたことを代弁する。
「お前らも家に居たらそれくらいするだろ?俺の場合は、師匠が俺に押し付けてるから結局やるしかないんだけど。」
シャツ一枚の姿で今でくつろいでいる師匠こと、コトミのことを思い出す。
「僕以外は寮暮らしだからやるとしても部屋の掃除くらいだよね?」
エインがそういうと四人が頷く。
「リュウガ君の師匠って男の人?」
「いや、、女性。」
またしても、無防備すぎるシャツ一枚のコトミの姿を思い出してしまい言葉に詰まってしまう。
「なんか師匠って聞くと男のイメージがあるから以外だな。」
「俺の直接の師匠は父親だけど、今住んでる家での師匠は女性。ちなみに俺はその人に一回も勝てたことがない。」
「嘘!?」
「マジか!?」
「ちょっと気になるな。リュウガが勝てない師匠ってのが。」
フレムとガウダが驚く中、フォティアはリュウガの師匠に興味を持つ。
「あんま気にしてほしくないんだよな……」
胸を張って自慢できないコトミのことをぶん殴ってやりたいと思いつつ、人前に出るのが苦手なんだと、小さな嘘をつく。
「話がそれにそれたけど、強くなりたかったら今以上のことをするべきだよ。」
「今以上のことか……」
フォティアたちは何をすべきなのかを考え始める。
何をすべきか考えているうちに寮に向かうフォティアたちと下宿先に向かうエインとリュウガで別れた。
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