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ミレーネの酒場 夜

「今日もお疲れ様……」

ミレーネは疲れを隠しながら働いていた人たちに労いの言葉をかける。

「お疲れ様です。ミレーネさん。」

「ミレーネさんこそお疲れ様です。」

「二人が途中から二人が使ってたあの黒い板って何?」

「あれは彼に貰ったんですよ。」

テアがエインの方を見るとミレーネもエインの方を見る。

エインはテアから黒い板とペンを貰うとミレーネに二人にした説明と同じ説明をする。

「確かに注文を確実に聞けるからいいんだけど、使うんだったら一言欲しかったかな。」

「すみません。良かれと思ってやったんですけど……」

「売上的には上がったからいいんだけど、良かれと思ってやったことが不利益を生むこともあるから気を付けるんだよ。」

「わかりました。」

「それで、これを使ってみて二人はどう思った?」

ミレーネは黒い板を二人に見せながら問いかける。

「私としてはあまり変わらなかったですかね。」

「でも、忙しくなってきた時は結構頼りになったよ。」

「確かにね。、ミレさんはどう思いました?」

「字が読みずらい。」

「「あっ」」

「はじめのうちは読みやすかったんだけど、時間に立つにつれて読みずらくなってった。」

客が増えていくにつれ、注文の頻度も上がり、字を綺麗に書く余裕が無くなってしまい、結局今まで通り、声で注文内容のやり取りをしていた。

「字で注文を取るのは難しいんですね。」

「忙しくなってくるとそうなるね。しかも私たちはメニュー覚えてるからあんま意味ないんだよね。」

「うぐっ……。それを言われるとちょっとへこむな。」

「それでも、エインが食器の片づけ一人でやってくれたから助かったけどね。」

「確かにー。エイン君って私と同じくらいの身長なのにあんなにたくさん運べるなんてすごいね。」

へこむエインをテアとメノンが慰める。

「どっちかと言うと厨房の方が忙しいから厨房関係で何かない?」

ミレーネがエインに意見を求める。

「食器を魔力を使って洗う位しか思いつかないんだけど……」

「それってできるの?」

テアは驚きながらエインの方を見る。

「それが出来るのならこちらとしてはありがたいんだけど。」

「できなくはないですが……」

「ないですが?」

エインはミレーネに近づいていき耳打ちをする。

「確かにそれだと言いづらいのも納得だよ。参考に聞いておきたいんだけど、それを作ったとしてどれくらいの間使える?」

「僕が考えてる大きさだと大体半年くらいですかね。」

「半年……」

「半年なら長い方じゃないですか?」

メノンは機械が半年持つなら長い方じゃないかと考えるがエインから機会を作るのに必要な物を聞き、その金額に唸っている。

ミレーネの店はこの冒険者街では繁盛している方でエインが必要と言った物も買えなくはないのだが、一時的に収入が大幅に減ってしまうのが悩ましいところである。

「ミレさん、食器を洗う機械については僕が勝手に作るのでお金に関しては考えなくでいいですよ。」

「考えなくていいって、学園の生徒が買えるような金額してないでしょ?」

「まあそうですけど……」

「さっきエイン君がミレさんに耳打ちしてた物って何なの?」

「私も気になるー」

二人が話している高額な物の正体を知らないテアとメノンは高額な物に興味津々である。

「隠す必要もないですね。……僕が考えてる機械には魔法石を使おうと考えてるんですよ。」 

「魔法石って⁉」

「そんな高価な物使おうと思ってたの⁉」

「はい、まあ。でも何とかなるんで。」

「何とかなるんだ……」

テアは何とかなると言うエインのを見て苦笑いを浮かべる。

「何とかなるならいいけど、無理だけはしないでね。それじゃあ今日は解散ね。テアとメノンもゆっくり休んで。」

「はいっ!お疲れ様です。」

「お疲れ様です~。」

テアとメノンは着替えをしに控室に戻って行く。

「私たちの手伝いをしてくれようとしてくれたのは感謝するけど、普通に手伝ってくれるだけで十分だからね。それと、夕ご飯出すから待っててね。」

「ありがとうございます。」

(良い女将さんじゃないか。)

(まあね。でも、厨房で料理してるミレさんの顔、必死だった。)

(そりゃそうだろうよ。でもま、エインの気持ちは伝わったからいいんじゃないか?)

(気持ちが伝わるだけじゃ意味が無いんだ。ミレさんにはもう少し楽してもらわないと。)

(エインが他人の心配をするなんてな。)

(他人の心配くらいするよ。フォルトゥだってわかるだろ?ミレさんが頑張りすぎだってことくらい。)

ミレーネはテアやメノン、ハルと言ったアルバイトの()たちとは違い、毎日この酒場で働いている。店内での接客や厨房での料理など一人がやる仕事量としてはとても多く、それを毎日のようにやっているミレーネを見たエインは頑張りすぎだと思ってしまった。

(わかるけど、この国で働いている人たちは大抵そんなもんだよ。)

(そうかもしれないけど、ミレさんには少しでも楽してもらいたいんだ。僕がここに泊めてもらってる以上はね。)

(そういうものか。ま、私としてはどうでもいいことなんだけど。)

「あまりもので悪いんだけど。」

「ありがとうございます。」

「にしてもいきなりどうしたの?あの黒い板でみんなの手助けをしてくれようとしたのはわかったんだけど、実際エイン君が手伝ってくれるだけで十分私たちの助けにはなってるんだけど……」

「前々から感じてたんですが、ミレさんに負担が結構かかってると思うんですよ。アルバイトの()たちや料理人たちに負担がかからないように動いてるせいで。」

「そりゃあ、私がここの女将なんだからそれくらいはするさ。」

「そうかもしれませんが僕としてはもう少し楽をしてもいいと思うんですよ。アルアちゃんもいますし。」

魔導学園の寮で生活をしている『光帝』ことレオンは自分で生活をできているからいいが、アルアはまだ9歳でミレーネなしでは生きていくことはできない。

ならないことに越したことはないがもしミレーネが動けなくなってしまったらアルアを守る人がいなくなってしまう。

今はエインがいるし、いざとなればレオンがいるので何とかなるとは思うが心細いことに変わりはないだろう。

そんなことを思ったエインは何かできることはないかと考え、あの黒い板を作った。

がしかし、そこまであの黒い板が役に立たなかったことにエインはへこんでいる。

「心配してくれるんだね。でも、私はそんなにやわじゃないから大丈夫。」

「そうですか。それでも、体には気を付けてくださいね。」

分かってるさ。といいながらミレーネも自分の分の夕食を持ってきてそれを食べ始める。


先に食べ始めていたエインが先に食べ終わり、食器を片付けて自分の部屋に戻る。

部屋に戻ったエインはベットに横になり、ミレーネに楽をさせてあげるにはどうすればいいかを考えながら目を閉じた。

終焉の先の物語~The demise story~を読んでいただきありがとうございます。ブックマークもしていただけるとありがたいです。

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