リュウガVS師匠
「奇襲するなら、殺気を出すな。」
死角からの攻撃を何事もなく指で受け止めるコトミ。
「まだまだだねぇ~君も。忍者の私に対して奇襲をするなら、殺気を隠せなきゃ攻撃を当てることなんてできないぞ。」
木刀を弾き、リュウガの方を見て立ち上がる。
「なんで、こんなぐうたらしてる人に一太刀も入れれないんだ…」
リュウガは何度目かもわからない奇襲の失敗に肩を落とす。
「私だってただぐうたらしてるわけじゃないぜ。それに、向こうじゃハンゾウ様の弟子だったんだ。これくらいは出来て当然だ。」
満面の笑みでリュウガのことを見下してくる。これも、リュウガにとっては何度も見た光景だ。
コトミが極東にいたころはハンゾウの所で忍びとしての修行をし、修行を終えた彼女はリュウガの祖父の所で剣の修行もしていた。
彼女は極東では珍しい、忍術と剣術を使える存在だった。しかし、極東の一部の者から半端者として扱われたため、国を出て大陸を放浪し、最終的にここに落ち着いたというわけである。
ハンゾウはそんな彼女を探し出し、連絡を取るようになった。結果的に極東出身の学園の生徒は彼女がいることによって大陸に来やすくなったことも事実である。
「はあ~。それじゃあ、剣の指導お願いします。」
「りょうかーい。すぐ準備するから待ってて。」
コトミは居間の奥にある部屋に入っていく。リュウガも木刀をしまい、自分の刀を取りに行く。
彼女は極東で言う忍者の格好をして居間に戻ってきた。
「それじゃあ始めようか。」
コトミはそう言うと、畳を思いっきり踏みつける。畳が回転して二人は畳の裏に吸い込まれていく。
少しの浮遊感の後、地面に着地する。着地音が反響し、そこが広い空間であることがわかる。
「今日は私から行くよ。」
真っ白な空間にたった二人。邪魔するものは何もなく相手の動きがしっかり見える。
真正面から向かってくるコトミ。リュウガは後退することも避けることもせず、刀を構える。
「はあああっ‼」
上段からの一閃。それをリュウガはギリギリで後ろに避ける。
そこからの斬り上げも避ける。さらに横一閃。
リュウガは反撃することなく、ギリギリところで攻撃を避けていく。
上下左右、あらゆる方向から来る斬撃に瞬きをする余裕すらない。
流れるような攻撃は途切れることなくリュウガを襲い続ける。避けることが難しくなるほどの攻撃速度に、リュウガはとうとう刀で攻撃をいなす。
刀身同士がぶつかり合う。リュウガはブースト、極東で言うところの身体強化を使い、何とか捌いてはいるが、次第に攻撃が掠るようになってきた。
(隙が…少なすぎる!)
攻撃と言うのは本来、予備動作から攻撃をするまでに時差が生じる。
しかし、コトミの動作は流れる川のように途切れることが無い。実力が上の相手に対して隙を狙えないリュウガは防戦一方となっていた。
(まだ隙が見えないか~。これでも流れは切ってるんだけど…)
コトミはリュウガに相手の隙をつかせるために極僅かな隙を与えているがそれでもまだ気づかない。
(もう少し、速度を落とそうかな。)
攻撃の速度を落とし、攻撃の流れに切れ目が出来るようにする。リュウガはそれに気づき、流れの切れ目を狙って反撃しようとするがそれをあえて作り出しているコトミは反撃を許すはずもなくすべてを防ぐ。
「これくらいなら反撃できるようになったね。」
「まあね。それでも、師匠の全力にはまだまだなんだよな。」
「そりゃ当然だよ~。私、天才なんだから~。」
「くっそ!否定したいのにできない!」
「へっへーん」
ドヤ顔をしながら嵐のような攻撃をリュウガにいれていく。
コトミの一方的な攻撃がそれから五分続いた。
「さあこれで、私の番は終了。次はリュウガの番ね。」
「お、おう……。はあ、はあ……。ふぅーー。」
乱れている呼吸を深呼吸をして整える。
「これくらいで息切れしてるようじゃ、私に勝つなんてできないぞ~。」
「それくらい……わかってるよ。っていうか、ハンゾウ様と、祖父さんの修行を終えてる師匠に今勝とうなんて思ってないよ。」
「今、ってことはいずれ勝つつもりなんだ。」
「そりゃ当然だよ。そのために師匠に稽古をつけてもらってるんだから。」
「それも、いつになることやら。勝負をするんなら、私が動けるうちにお願いね~」
「言われなくても。」
「休憩もこれくらいでいいよね?」
「休憩も何も、師匠攻撃してきてたじゃないですか……」
ジト目でコトミのことを見る。
「余裕で避けれる攻撃だからいいでしょ?一対一なら休憩なんてできないぞ~」
煽られたリュウガはコトミの攻撃を避けると、喉元に向けて刃を振るう。
「危なっかしいな~ほんと。」
喉元に届くすんでのところでリュウガの刀を弾く。
弾かれた勢いを利用して後ろにバク転しながら蹴り上げる。蹴りを避けられることを想定していたリュウガは足が地面に着くと同時に一気に加速してコトミに接近する。
接近すると同時に横一閃、胴体を真っ二つにする勢いで振るうがコトミはそれをバックステップで避ける。
「ん?……ああ、避け切れなかったか。」
コトミが着ている忍者装束は衣擦れの音を出さないように体にぴったりフィットしている。体のラインがもろに出ているのでリュウガがそれを始めて見たときは目のやり場に困っていた。
そんな忍者装束だが防御力は皆無に等しく、リュウガの斬撃も喰らってしまえば致命傷になりかねない。一撃も喰らうことが出来ない状況でコトミはリュウガの斬撃をことごとく避けてきたが、今回の攻撃は避けることが出来なかった。
正確には避けれたと思っていたのだ。
「先の攻撃、わざと避ける隙を与えたでしょ?」
「回避先さえわかれば後はそれに合わせて攻撃すればいいからね。」
回避先がわかったリュウガは刀の柄を普段持っている位置から下の位置にずらして刀を振るい、コトミに一撃をいれることが出来た。
「一撃貰っちゃったことだし、これで終わろう……」
終わろうとコトミが言おうとしたところで、リュウガに斬られた部分の布がめくれて、隠れていた肌があらわになる。
「っちょ!師匠、見えてる、見えてる!!」
「ん?なんだ、今更これくらいで気にしてるんじゃないよ~。いつもこんな感じだろ?」
「いつもそんな状況であってたまるか!!しかも、今は忍者装束なんだ。もう少し恥じらいを持ってくれ!!」
「ピュアだねぇリュウガは。」
リュウガのことをからかいつつも、コトミはリュウガに背を向ける。
「それじゃあ、上まで行くよ。負けた方が今日の料理担当ねっ。」
コトミは顔だけをリュウガの方に向けて言うと、足に魔力を溜め始める。
「もうちょっと楽な登り方が無いものなのか……」
今から行われることに愚痴を言いながらも足に魔力を溜め始める。
「それじゃあ、行くよ~。…………ゴーー!!」
コトミの合図とともに二人は足に溜めた魔力を解放する。
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