エインVSライアル
ライアルと別れたエインは会場である闘技場に向かった。途中でフォティアたちと会い、今からライアルと戦うことを言うと、フォティアたちはその試合を見てみたいと言ってきたので一緒に闘技場に向かうことになった。
ライアルと戦うエインは受付に向かい、フォティアたちは観客席に向かった。
「意外といるんだな。」
観客席があるところまで行くとフォティア以外の生徒が二十人ほどいた。そのすべてが貴族であることに同じく貴族であるフォティアとフレムは気づいた。
「確かにね。それに全員貴族みたいだし。」
「多分、ライアルが集めたんじゃないかな?エインの話を聞く限り彼が見せしめに試合をするような感じだったし……。」
「見せしめって……」
「エインは大丈夫なのか?」
フーリアとガウダは弱気なことを言っているが内心ではエインが勝つだろうと思っている。
当然フォティアとフレムも同じくエインが勝つであろうと思っている。
フォティアたちが席について三分ほどしてエインが入場してきた。
エインが入場するまでは静かだった貴族はエインを目にすると近くの貴族たちとひそひそと話始めた。
エインが入場してからさらに二分ほどしてエインが入場してきた入口とは反対の入口からライアルが入場してきた。
「お、おい!あれ……」
「そこまでするか。」
エイン側の観客席にいるフォティアたちはライアルのすぐ後ろに視線が向く。
そこには四人の生徒が歩いて入ってきいた。
「後ろの生徒たちについて聞いても?」
エインはライアルの後ろにいる生徒たちに視線を向ける。
「ルール違反とでも言いたいのかな、君は?しかし、一対一で戦うとは一言も言っていない。それにこれには勝者がすべてを決めると言うルールがあるだけだ。そんなことも知らないのかな君はぁ?」
「ルール違反でないと言うのなら構いませんよ。あなたが権力を振りかざして無理やりルールを改変したと思ったので。」
「なっ!貴様、俺を侮辱するつもりか⁉」
「いえいえ、そんなつもりは。」
「それでは試合を始めたいと思います。両者、所定の位置にまで下がってください。」
この試合を担当する先生のアナウンスが入る。
話を切り上げ、互いに背を向けて下がっていく。
それを観客席の一番上でひっそりと見守っている女性がいる。
「放課後の闘技場で試合が行われるって……やっぱりあなたのことでしたか。それにしてもエイン君一人に対して五人ですか……」
「それでは試合を始めます。」
担当の先生がアナウンス室のマイクの隣にあるボタンを押すと試合開始のブザーが鳴る。
ブザーが鳴ると同時にライアル以外の四人が散開しながらエインに向かって行く。その場から一歩も動かないエインは簡単に包囲されてしまう。
「怖気づいたか!平民!!」
「恨むなら、第一位貴族に勝負を挑んだ自分自身を恨むんだな!!」
四方向から魔法で攻撃し始める。
「『サーチ』、……『シールド』」
死角から飛んでくる魔法の方向をサーチで確認し、シールドを飛んでくる四方向に展開する。
「馬鹿が!!シールドなんてもん、いくら出そうが無意味なんだよ!!」
「そのまま焼かれちまえ!」
展開された四つのシールドに魔法が直撃するが消えたのはシールドではなく貴族たちが放った魔法の方だった。
そのことに驚き、貴族たちは固まってしまう。それをエインが見逃すはずもなく、正面にいる貴族に急接近し、腹に一撃をいれて地に伏せ、左側の貴族をインパクトで吹き飛ばす。
エインの右にいる貴族が我に返り、魔法で反撃するがそれを軽々と避けて懐に入り、足払いをして蹴り飛ばす。
残った貴族は剣を抜き、エインに斬りかかってくる。それに対してエインはシールドを発動させることなく突っ込んでいく。
「叩き斬ってやる!!」
斜め上から来る刃をエインは左腕で防ぎ、空いている右手の正拳突きを腹に叩きこむ。そのまま貴族は吹き飛ばされ、闘技場の壁に激突し気絶する。
四対一と言うはたから見れば絶望的な状況を難なく乗り越えたエインは一人棒立ちしているライアルの方に視線を向ける。
「さあ、ここからは正々堂々勝負しましょう。」
「き、貴様、何をした⁉生身の人間が刃を受けることなど……」
「ブーストを使っていたに決まっているじゃないですか。そんなこともわからないのですか?」
「馬鹿な……いくらブーストを使おうが剣で斬られれば激痛が走るはずだ!!」
エインたちがいる闘技場は特殊な魔法結界が張られているため、いくらで斬られようが切り傷が出来ることは無いがその分、鉄の塊で殴られたような痛みが発生する。それはブーストを使っていても同じことで多少は軽減されるとはいえ、平気な顔をしていられるはずはない。
しかし、エインは剣で一撃を貰ったにもかかわらず何食わぬ顔でライアルを見ている。そんなエインをライアルは恐怖の眼差しで見ることしかできない。
「あなたから来ないと言うのでしたら、僕から行きますよ。」
上体を傾け、走り出す。十メートルほどの距離を一瞬で走破したエインの右手がライアルの顔面に向かっていく。
それをギリギリでかわすライアルはバックステップでエインから距離を取る。
「『フレアボール』!!」
バックステップをしながら放たれた六つのフレアボールはエインの周りに着弾して砂ぼこりが舞う。
エインの視界を奪ったライアルはフレイムランスの詠唱を始める。
「炎を纏い敵を穿て。魔を纏いし槍よ。『フレイムランス』」
詠唱を終えたライアルの周りには三つの槍の形をした炎が浮遊している。サーチを発動させ、エインの位置を確認するとそこに向けて二つの槍を放つ。放たれたフレイムランスが着弾すると火柱が上がる。
「クソっ!平民ごときに中級魔法を使わなかなければならないとは……だが、これを喰らって立っていられるはずがない!」
念のために残してあるフレイムランスを消し、エインが倒れているであろう場所に向かって行く。
「さあ、貴様の無様な姿を晒してもらおうか。」
火柱が消え、その中にいるエインの姿が見えてくる。
「なっ⁉な、なぜだ!なぜ貴様は倒れていない!」
「その程度の魔法で僕がやられるとでも?」
「その程度、だと……?」
自分が放った魔法が効かなかったことに衝撃を受け、一瞬固まってしまうが、追撃をするために再びフレイムランスの詠唱を始めるがそれをエインが許すはずもなく、空中に現れた魔力の塊にインパクトを打ち込む。
インパクトを打ち込まれた魔力の塊は爆発し、近くにいたライアルは衝撃で吹き飛ばされる。
「俺の魔法が誤爆しただと?」
「誤爆したんじゃない。僕が爆発させたんだ。」
未だに倒れこんでいるライアルの目の前まで行き、右手を向ける。
「これでチェックメイトです。僕の魔法は貴方の魔法より早い。この意味わかりますよね?」
「きっさまぁーー!!第一位貴族をコケにしてただで済むとでも思っているのか!!?」
「どうでしょうね。でも、平民出身であるレオンさんが『光帝』としてこの学園のトップにいるという事はそういう事じゃないんですか?……この状況でも負けを認めてくれないと言うのでしたら……」
ライアルを足で押し倒してから抑え込み、右手で顔面を掴む。
「こうすれば負けを認めてくれますか?」
「んん!んんーーー!!」
最後の抵抗と言わんばかりに拘束されていない両手でエインを殴るがビクともしない。
「この至近距離でインパクトを放たれたら……どうなるんでしょうね?」
エインの言葉を聞き、インパクトが顔に当たった時のことを考えたのか、青ざめる。
「これで最後です。負けを認めてくれますよんね?」
ライアルはエインを今までにないくらいの眼力で睨むがそんなことお構いなしに右手に力をさらに入れる。
「んんーー!!んん!んんんーー」
悶絶をするライアルの声は観客席まで届き、その悲痛さを感じ取ったのか全員の顔から血の気が引いていた。ライアルは抵抗を続けていたが、無理だと悟ったのか抵抗をやめた。
「それでは降参の意を先生に告げてください。」
ライアルを解放したエインは初めの位置に戻って行く。
ライアルは力なく立ち上がる。
(この俺が平民ごときに負けた、だと……。ありえない。……あってはならない!)
自らに背を向けているエインを睨む付ける。
(俺が負けを認めるだと?そんな訳、あるはずないだろう!!)
ライアルン周りに無数のフレイムボールが発生する。
「…………」
「俺に……貴族に逆らったこと、後悔させてやる。行けぇ!!」
都合十二、すべてのフレイムボールがエインに向かって行く。
「エイン、気づいてないのか⁉」
「エイン君!!」
すべてのフレイムボールが着弾し、エインの姿が見えなくなる。
「ハハハハハ!ハァハハハハハ!!貴族に逆らうこうなるんだ!!」
ライアルの高笑いが闘技場全体に響き渡る。
「この国では貴族が絶対。俺が正しいと言えば正しいんだ!!……さあ先生、勝利宣言を!」
アナウンス室では戦闘中の生徒たちの魔力反応を確認することが出来る。魔力反応が消失するか、魔力反応が一定ラインを下回るとアナウンス室にいる先生が試合終了の合図を出すことになっている。
ライアルはそれを知っており、エインを倒したがゆえに合図を出すように先生に促している。
「さあ、早く!もうすでに勝負はついただろう!!」
終了の合図が未だ出ないことに苛立ちをあらわにする。
「勝手に勝負をつけないでくれるかな?ライアル君。」
「んな!?」
未だに立ち込めている砂煙の中からエインの声が聞こえてくる。
「『ローズストーム』」
そして、エインとは別の女性の声が聞こえてくる。その声と共に砂煙が吹き飛ばされ、エインと女性の姿がはっきりと見えてきた。
その女性を見たライアルは目を丸くする。
「なぜあなたがそこに……?」
「なぜって、この状況を見てわからない?彼を助けるためよ。」
エインを庇うようにライアルの前に立っている女性、それは学園長秘書のメイだった。
終焉の先の物語~The demise story~を読んでいただきありがとうございます。ブックマークもしていただけるとありがたいです。




