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『光帝』VSエイン

エインは懐から球を取り出すと『光帝』から距離を取ってその球を地面に投げつける。

その球から黒い煙が噴射され、観客にいる生徒からエインと『光帝』が見えなくなる。

「何⁉周りが」

『光帝』はエインを見失ってしまう。

会場にいる生徒や先生も全員煙の中のせいで二人の動きが見えない。

一部の生徒はサーチを発動させて二人の魔力を追おうとする。

「おい、魔力が感知できないぞ。」

「お前もか。あの煙のせいでうまく魔力を判別できない。」

サーチを発動させても煙の中の情報を掴めないものがいる中、数人の生徒は、どうにか中の状況を感じ取る。

「『視覚強化』」

エインは魔力を目に集中させ暗視効果を付与する。

魔力の感知を邪魔する粒子が混ざった煙の中では、魔力を使って相手の位置を見つけ出すサーチは使えない。故にエインは自身の視力を強化し、暗い煙の中でも相手の位置を把握できるようにする。

相手の位置を把握したエインは一直線に走り出す。

「『サーチ』発動‼」

対して『光帝』は魔力を感知する魔法を発動する。

しかし黒い煙のせいか、うまくエインの位置を把握できない。

サーチを頼りにできない『光帝』はエインが近づいてくると予想して耳を澄ませる。

「チェックメイトだ。」

『光帝』は後ろにいる存在に気づき反撃しようとするがエインの攻撃の方が早く、『光帝』の喉元を切り裂く。

この闘技場は特殊な魔法結界が張られているため、斬撃や殴打などの身体への直接的な攻撃は届かないようになっているが、衝撃は届くのでダメージは入る。

エインの攻撃で吹き飛ばされた『光帝』は首にダメージを受けたが、ブーストのおかげで何とか気絶せずに済んだ。

しかし衝撃のせいですぐに動くことができず、その場にとどまることしかできない。

正面から近づいてくる人の気配を感じる。

「すみません。あなたの実力がどれほどの物か知りたかったのですが、煙の中での戦いは慣れていなかったんですね。」

聞こえてきたのは煙を出した張本人であるエイン声だった。

「お前何もんだ?戦いにこんな物持ってきやがって。」

『光帝』は声を荒げながらエインに問う。

「戦いはどう自分の土俵に相手を引きずり込むかですよ。ただ、これはフェアではなかったようですね。」

「フェアも何も荷物検査で引っかかると思うんだけどな……。まあいい、負けは負けだ。まさか新入生にやられるとは思ってなかったよ。」

「あなたも全力ではなかったとはいえ、一方的に不利な状況を押し付けてしまったのでこの戦いの結果は、無しにしましょう。」

エインからの思ってもみない提案に『光帝』は目を丸くする。

「いいのか?俺が不利な状況だとはいえ、俺に勝ったんだぞ?」

「本来、全力のあなたと戦いたかったのでこのような形で勝利を得ても何の意味もないので、またこのような機会があったら全力でお願いします。」

「なんかスッキリしないが、そういうことにしておくよ。」

「今までの試合を見る限り新入生は負けておいた方がいい気がするので、魔法でぶっ飛ばしてください。もうじき煙も晴れるので。」

「新入生が勝ってもいいわけなんだがな……。でも、これで俺が負けたとなるとお前への風当たりが強くなりそうだからな、仕方ない吹っ飛ばすから構えろ。」

『光帝』は立ち上がり、両手を前に突き出す。

「ありがとうございます。次は正々堂々戦いましょう。」

「今度は全力でやってやるよ。」

「あ、あとミレーネさんからの伝言です。「一回でもいいから帰ってこい」だそうです。」

「なんで母さんの名前を⁉」

「あなたの実家の酒場に少しばかり縁がありまして。ミレーネさんの言葉しっかり伝えましたからね。」

「しっかり受け取ったよ。うまく受け身を取れよ、『シャイニングアタック』‼」

光の波動がエインに直撃し、煙の外まで吹き飛ばす。

闘技場の壁にぶつかって床に叩きつけられ、動けなくなったようなふりをする。

「エイン君戦闘不能、勝者『光帝』‼」

先生の宣言により『光帝』の勝利が全生徒に伝えられた。

会場からは大歓声とともに『光帝』を称える拍手が聞こえてきた。


『光帝』との試合の後すぐに閉会式が執り行われ、生徒は各教室に戻って行った。

エインは教室に戻るが中に入ると冷たい目線を向けられるのだった。

これは当然のことである。親善試合もそうだがすべての試合において例外を除き武器や防具以外の持ち込みは禁止されているのである。

しかしエインは煙玉を持ち込み、それを使ったにもかかわらず試合に負けた(ことになっている)のだから。

クラスの中は話し声が絶えなかったが、そのほとんどがエインと『光帝』の親善試合のことだった。

全員が揃うとすぐに担任の先生がやってきた。

先生の簡単な自己紹介が終わると次は生徒が自己紹介をする番となった。

「私はアイン・セイルです。よろしくお願いします。」

順番に自己紹介をしていきエインの番になった。

「僕はエイン・クロイルです。よろしくお願いいたします。」

今まで自己紹介で何かしらの反応があったがエインの自己紹介の時は小さな拍手が少しだけ聞こえるだけだった。それからも自己紹介は続いていった。

自己紹介も終わり、学園のことについてに説明を先生がし始めた。


説明が終わると丁度終了の時間となった。

「これで初めの授業は終了とします。エイン君は学園長から話があるようなので至急学園長室まで行ってください。」

エインが呼び出しされると、貴族から「当然のことだ、卑怯者め!」だの、「学園の恥さらしが!」などと、エインに向けた悪口が飛び出した。それはエインにも聞こえていたが、無視する。

エインは学園長室まで行くと扉の前にはメイが立っていた。

メイが扉を開けてくれたのでそのまま中に入る。

「やってくれたねえエイン。」

目の前に座っている学園長は少し険しい表情をしていた。

「すみません。」

「全く、学園での戦いは殺し合いじゃないんだからあんな物を持ち込まないでくれ。」

「一応、『光帝』が勝ったことにしておいたから大丈夫でしょう。」

「まぁエインが勝ったのは見えていたけど、あの煙玉はだめだよ煙玉は。」

「すまん……これからは使わないようにする。」

「「これからは」じゃなくて、初めから使わないようにしてくださいよ、まったく。それで、クラスではどうでしたか?」

「わかっているでしょう?」

「そうなるよな~どうするんだこれから?このままだとやっていきずらいだろう。」

険しい表情から一転今度は疲れ切った表情になる。彼からしたらエインには穏便に学園生活を送ってほしかったのだが、先の『光帝』との親善試合ですべて水の泡になってしまったのだ。

「爺さ……学園長の力は借りないよ。自分でどうにかする。」

学園長の隣に立っているメイが圧のある笑顔を向けてくる。

「これも経験だ。貴族連中には気をつけろよ。何してくるかわかったもんじゃないし、それを処理するのが面倒だ。」

8割がた後者の理由が主だが、とりあえず保険のために貴族とはかかわるなと忠告する。

「わかっている。話はこれだけか?」

「そうだよ。入学早々問題起こしてくれちゃって~私の負担のことも考えてよ~」

「問題は起こさないように善処するよ。」

「ほんとにそうしてくれよ……」

学園長は更に疲れ切った顔でエインを見送る。

終焉の先の物語~The demise story~を読んでいただきありがとうございます。ブックマークしていただけるとありがたいです。

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