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路地の奥の鍛冶師

ジルフはそのまま店のドアを開けて中に入っていった。

店の中は必要最低限の明かりしかなく、武器が並べられていた。

さらに、ここにきてからあらゆるところで響いていた音が聞こえてくる。

「おーい、爺さんいるか?」

誰もいない店内で、大声を出して『爺さん』と呼ばれる人物を呼ぶ。

「なんだジルフ?まだお前らの得物の整備は終わってねえぞ。」

店の奥から出てきたのはジルフにも引けを取らない筋骨隆々の男だった。

「わかってるよ。それより新しい客を連れてきたぜ。」

「どうも。」

エインは短く挨拶を済ませる。

「ふーん、お前冒険者志望かなんかか?」

「ヴァイスさん、こいつは魔導学園の新入生だ。冒険者志望とかじゃねえよ。」

「あの学園の生徒かよ。なんだってそんな奴を連れてきたんだ?あそこの生徒に武器は作らんぞ。」

いきなり作らない宣言をされてしまった。

「あそこの生徒は安くて強い武器を作れだの、壊れない防具を作れだの無理難題を押し付けてきやがる。強力な装備を作るにはそれなりの対価が必要だってことを知らない奴らが多すぎる。」

いきなり知りもしない学園の生徒たちへの愚痴を初対面の人にまくしたてるように言われたエインは面食らってしまう。

「お前もそんな口なんだろ?ジルフ、客を連れてくるならもっと人を選んで連れてこい。」

「す、すまねえな。そこまで学園の生徒を嫌ってたとは思ってなかった。」

ジルフはエインにも「すまん」と小声で言ってくる。

それでもエインは少し不服だった。

国のことを何も知らないエインですら強力な武器や防具の値段が高いことくらい知っている。

とはいえ学園の生徒嫌いのこの人にこのまま反論しても平行線なのは目に見えている。

エインは店の中を見回す。

目に留まったのは一際大きな大剣だった。

以前戦った大男が持っていた大剣より大きいものだった。

近くでそれを見ると鍛冶師であるヴァイスさんの腕がよくわかった。

「とても立派な大剣ですね。この大きさだと力の加え具合にむらが出てくるようなものですがこれは一切それがない。それに、おそらくですがアルマイド鉱石を使っていますか?」

「なんだお前、見ただけで素材がわかるのか。なかなかいい目を持ってるじゃないか。お前の言った通り使ってる鉱石はアルマイド鉱石だ。」

「お前見ただけで武器の素材がわかるのか?もしかしてお前鍛冶師見習いだったりするのか?」

ジルフが聞いてくる。

「いいや、たまたまアルマイド鉱石を使った武器を見たことがあってその輝きに似ていたからもしかしてと思っただけですよ。」

ヴァイスはエインに近づき、ジロジロと見る。

「気に入った。名前はなんて言うんだ?」

「爺さんさっき俺言ったぞ。エインだよエイン。」

「あぁそんな名前だったな。聞いてなかった。」

「今日は顔合わせってことで連れてきたんだ。何か作ってほしいもんができたらこの爺さんに言え。何でも作ってくれるから頼りにしといていいぜ。」

「調子のいいこと言ってんじゃねえ、俺にだって作れないもんがある。それにこいつは得物は使わねえだろうよ。」

「まじか⁉本当かエイン?」

「ナイフくらいは使いますけど、剣みたいな得物はあまり使いませんね。」

「ジルフお前気づいてなかったのか?学園に入学する生徒だったら既に得物をもっていてもおかしくねえ時期だろう。明日くらいだったろう入学式ってのは。」

「そういや、そんなこと言ってたな。」

「ジルフよぉ人を見る目が落ちたんじゃねえのか?」

「それはあんたもだろう?学園の生徒だからっていきなり装備は作らねえって言ってよ。」

「仕方ねえだろあの学園の生徒のイメージってもんが……」

二人はエインを忘れて言い争いを始めたのでエインは店の中を改めて見て回る。

大剣もそうだが、他にも装備としては一級品の物ばかりである。

値段はやや高い気はするがそれでもヴァイスの腕が確かなことの証明でもある。

二人の言い合いが終わるまでエインは店の物を一つ一つ見ていくのだった。


「これからよろしくお願いします。ヴァイスさん。」

「あぁよろしくな。そこのくそ野郎も二日後には整備を終わらせてやるから、忘れるんじゃねえぞ。」

「わあってるよくそ爺。じゃあな。」

ジルフは雑に別れの挨拶をしながら店から出ていく。

それに続いてエインも店を後にする。

「次はどこ行く?つってもあとは貴族街と王宮くらいだけどな。」

「とりあえずそこにお願いします。」

「わかった……」

ジルフはそのままウエストストリートを北上していく。

途中、住宅街と思われる家が林立した区間を通り抜けた。

暫くすると豪勢な門とその前に甲冑を着た騎士が二人立っているのが見えてきた。

「あそこが貴族街の……入口だ。」

「中には入れないんですか?」

「馬鹿言うんじゃねぇあそこは貴族の称号を持ってる奴らしか入れない。俺らみたいなもんが入ろうとしようもんなら、あの門番たちに突き返されるか最悪拘束されて牢屋送りだ。」

「なかなか厳しいですね。」

「当然だこの国では貴族が王族の次に地位は高いからな。ここはこんくらいにして、次行くぞ。」

次に訪れた王宮も似たようなものだったためすぐに貴族街と王宮の案内は終わった。


終焉の先の物語~The demise story~を読んでいただきありがとうございます。ブックマークしていただけるとありがたいです。

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