間
「なぁ、命令した内容覚えてる?」
「…はい」
「これのどこが小さな社会的抹殺よ。むしろいい方向に進んでるみたいじゃない」
「すみません。高村一音が庇うとは思ってなかったので」
「それはイレギュラーではないでしょ。考えれば他にもできることはあったはず。バック捨てるとかさ」
「でも、一人のために誰かを陥れる役なんて、やってる意味はあるのでしょうか…。それに敵になった人間がその後どうなるのか責任が持てるんですか⁉」
「物語は、敵を作らないと何も始まらないの。敵ができて初めて目標ができるの。分かるでしょう?」
「それでは人間以外の敵を作ればいいのでは? これ以上やっていられません」
「あんたは最初からハッピーで何事もなく終わる物語を楽しいって思う? 確かに人間以外の敵を作れば物語は出来る。でもそれはエゴにしか過ぎない」
「どうしてですか? 虫でも熊でもMOBなら作り出せるのに」
「虫や熊は生きるために人を襲う。人間はそれらを社会の秩序を乱す存在として排除する方法を確立してる。排除してもいい存在だと浸透してしまっている! それがいくら強くなったところで、どちらが勝つかなんて目に見えるじゃない。つまらない。それが人間同士だと、転び方によってどうなるか分からないのよ。そこが楽しいんじゃない」
「それこそ、エゴだ」
「なに?」
「もう、嫌です」
「わかった。じゃあこのMOB#351073の出番ってとこか。そこで指くわえて見てな。楽しい物語を作って見せよう」