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第三話 禁断の天職

「さっきも言ったが、スケルトン作成は『死霊術士』が最初から会得している基本スキルだ。『死霊術士』の恐ろしいのは、経験値を積むことで、取得できる『死霊術士』の専用スキルにある」


 司教様は、『死霊術士』の専用スキルで特に危険とされるスキルについて教えてくれました。




ゾンビ増殖 


 スケルトン作成でできるスケルトンと同じで、生前の技能が反映されない意識のないゾンビを生み出すことができるが、白骨化した死体でなくても効果を発揮でき、さらに、死体にゾンビ化というスキルを付与させる。このゾンビ化を付与されたゾンビに生者が殺されると、殺された者もまた、ゾンビ化を付与されたゾンビとして蘇る。




死者隷属


 死体を、生前の記憶と意識を持つグールとして蘇らせ隷属化させる。死者隷属で作られたグールは、時間と共に肉が腐っていくゾンビとは違い、定期的に生者の肉を食べることで、理性と肉体の腐敗を防げる。ただし、人肉を食べるという捕食衝動に定期的に襲われ、人肉を食らわなければ、理性を失い暴走し、やがて肉は腐り脆弱なゾンビやスケルトンに成り下がる。




「ゾンビ増殖は、冒険者であれば充分に対処可能だが、一般人しかいない街にゾンビを放たれたら爆発的に増殖する。その結果、街一つが一晩で壊滅したと言う例が過去に山ほどある」


 確かに、ゾンビ増殖はヤバいスキルだと僕も思います。キイラ村で使ったら、一晩どころか、一時間もしないうちに、死者の住む村になる気がする。


「死者隷属。これはある意味でゾンビ増殖よりも遥かに厄介じゃ、生前よりも幾らか落ちるが、技能もスキルも使え、ある程度の意識と生前の記憶を持つ死者を自分に絶対服従のしもべとして蘇らせる。このスキルを用いて過去の英雄がアンデットとして蘇り、教会や国に大打撃を与えておる。絶対服従させているためか、大量には隷属化できないが、上級職を数人従えれば大抵のことは正面からゴリ押せる」


 過去の英雄さえも、手駒にできるのであれば、その危険度は非常に高いのは僕でも理解できる。ゾンビ増殖と組み合わせれば、一人で都市も落とせるのは僕でも簡単に理解できた。


 でも、だからと言って、将来危険なスキルを会得する可能性があるからってだけで、即処刑はやはりいくら何でも横暴過ぎる気がする。


「確かに『死霊術士』の専用スキルは危険だと僕も思いますが、そう言った危険なスキルを僕が必ずしも会得するとは限らないと思います」


 スキルの取得は基本的には、経験積み重ねることで会得できる。上位職へのランクアップよりかは、簡単ではあるが、それでも一つ取得するのに、基本的には数年は有する。


 僕はまだ若いので、確かに危険なスキルを獲得する可能性は高いかも知れないが、でも、やっぱり、かもしれないと言うだけで、殺されるのは納得がいかない。


「そうじゃな。確かにかもしれないで殺されるのは、私でも行き過ぎたと思う」

「では!!」


 やっぱり、司教様は、ルクシオン教の教えに従っているだけで、本心から僕を処刑しようとは思ってはいないのではと一瞬だけ、希望が見えた気がしましたが、その直後、怒りに震える司教様の顔を見て淡い希望は霧散しました。


「でも、だめだあああああ!! 貴様ら『死霊術士』は存在するだけで、死刑に値するほどの罪を犯している。『死霊術士』にクラスアップしたと言うことは、それだけ心の闇を抱えた上で、常人がしないような事をしているはずだ!」


 さっきまでの優しかった司教様は消え、僕に対して殺意しか持たない鬼へと司教様は変貌を遂げました。


「報告書には、貴様が一年間、魔物の解体をしていたと記載されておる。一年間も死体を漁っていれば心も歪むだろうよ」


 司教様の怒りようから見て、どうやら、過去に『死霊術士』によって何らかの被害を被ったのは間違いないと思います。でも、流石にその理屈はおかしいと思う。


「それじゃ、冒険者のほとんどが『死霊術士』になってしまうじゃないですか!!」


 魔物の死体の解体など、冒険者の初歩中の初歩だ。『死霊術士』がレアな上位職である以上、司教様の言い分は破たんしている。


それにしても、司教様の雰囲気が明らかに変わったような気がします。と言うか、


「それは貴様が、神の御威光に触れぬ、田舎者だからだ。神の偉大さを知り、常に神にその身を捧げる覚悟のある信徒であれば、魔物の死体を解体しても、魔性に堕ちることはなかろう。クッ! やはり、ダメだ!!神の御威光を全土に知らしめるためにも、取るに足らない田舎でも、教会を建てる必要がある!!!」


 間違いない。やはり、何だか、司教様の様子がおかしい、テンションが高いと言うか、部屋に入ってきた時と比べて別人だ。


「いいか、田舎者! ルクシオン教において、死した魂は等しく全て天上の世界におられる神ルクシオンの元に召されるのだ。それゆえ、神にその身を捧げられた体が死後に動くことなどあってはならない。ましては、生前の人格を取り戻すなど冗談ではない。それは、天上で死者の魂を管理する我らの神の存在を否定するという絶対に許してはならない冒涜に他ならない。そうだ! 死者は絶対に還ってこないのだあああああ!!」


 司教様は椅子から立ち上がり、仰々しくも大声で神は偉大だと何度も叫びます。その声はどうやら、扉の向こうで待機していた騎士達の耳にも届いたようで、慌てた様子で入って来て、司教様を抑えようとします。


「司教様、どうか落ち着いてください」

「今は、異端審問をする時ですぞ」


 騎士達に抑えられて正気に戻ったのか、司教様は、見苦しい所を見せたと騎士達に対して謝罪し、虫けらを見るような目つきで僕の方を見た。


「三日後だ! 三日後の正午に、貴様は広場で公開処刑される。それまで独房で己の犯した罪を反省しろ!!」


 そう言い残すと、僕は昨夜一晩過ごした牢に戻された。


 それからというもの、死に行く人間に食事は必要ないのか、朝と夜に、コップ一杯の水だけが与えられた。


 そして、飢えに苦しみながら処刑の日を迎えました。



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