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第二話 異端審問

 教会内にある牢屋の中で一晩過ごした翌日、僕は、同じ建物内にある一室に移動させられました。


 その部屋には、ごく普通の椅子と逃げ出さないようにするためか、手足を拘束するための器具が供えられた椅子の二つの椅子がありました。


 そして、牢屋から僕を連れだした騎士達は強引に僕を拘束具付きの椅子に座らせて、拘束具を使い体を固定します。


「僕が一体何をしたと言うのですか!!」


 僕は、一切理由も告げずに、牢屋に入れるのは不当だと叫びましたが、騎士達は一切返事を返さないで、僕の発言を全て無視しました。


 しばらく喚いていると、部屋の中に見知った一人初老の男性が入ってきました。


「ふむ、強大な悪に染まった者にしては若いな」


 僕もその男性の顔は何度か見たことがある。確かこの街の教会で一番偉い司教様です。噂では、清廉潔白でまさに理想な聖職者と聞いていました。そんな人物なら僕の置かれている今の状況がおかしいことに気づいてくれるはずです。


「司教様、僕は罪なんて犯していません!!」


 僕は、罪を犯していないと懸命にアピールしました。しかし、司教様にはどうやら正しく伝わらなかったようです。


「これは、随分と重傷だな」


 そう言うと、司教様は騎士達を部屋から退室させ、ずっと手に持っていた一枚の紙を見ます。


「キイラ村か、聞いたことはないが、資料には、この街の南東にある村と書いておる。随分と辺鄙な田舎から来たもんじゃな」


「そうです。キイラ村からこの街まで来るのに、歩いて一か月かかりました」


 思えば、随分と遠いところから来たなぁ。


「なるほどな。確かにこんな田舎では、我らの神の御威光は正しく届かんかもしれんな」


 ? 確かに、村には教会はないです。


 村で死人が出た時に、他の街から教会の神父やシスターが来てお祈りを捧げてくれるくらいしか教会関係との接触はないので、当然、ルクシオン教の教えが記された聖書も読んだことはありません。


 でも、ルクシオン教は、この国の国教であるため、国民は全てルクシオン教の信徒です。なので、ど田舎にあるキイラ村出身者でも、何かあった時、祈りを捧げる相手は神ルクシオンです。


「それが、君の認識か、では、キイラ村には神の御威光を知らしめるために、教会を設置すべきだな」


 良く分からないですが、何もないド田舎の村に教会が設置されるようです。これは良いことでしょう。教会は心に迷いがあった時に、相談に乗ってくれるし、何より怪我をした時に、無料で治癒魔法を施してくれる。これで、怪我をしても歩いて一日かかる近くの村にある教会まで行かなくですむのです。


「ありがとうございます」


「ふむ、これは本当に重傷じゃな。この者がおかしいのか、それともキイラ村がおかしいのか、調査しなければな」


 自分の生まれた村に教会を建ててくれたことに、素直にお礼したつもりですが、司教様は何やら、面倒な仕事ができたと頭を抱えましたが、すぐに切り替えたのか、真剣な顔付きになりました。


「君の処刑は三日後だ。しかし、この若さで処刑は不憫なので、最後に何か、欲しい物はあるか?」


 えっ!? 処刑! 何故?! 


「何で、僕は何も悪い事をしていないのに!!」


 僕は慌てて反論しました。しかし、僕の反論に対して司教様は予想していたと言う顔で答えます。


「まあ、そうじゃろうな。神の教えも知らん田舎者では、そう返すだろう。だから、特別にお主が処刑される理由を教えてやろう」


 そう言うと、司教様は自分のポケットから、一枚のステータスプレートを取り出します。僕の名前と昨日クラスアップした『死霊術士』と書かれている。


 間違いなく、昨日ギルドで拘束された時に、没収された僕のステータスプレートだ。


「『死霊術士』、君。一応聞くが、これがどういった天職か知っておるか?」


 司教様の問いに対して、首を横に振った。『死霊術士』と言う天職がどういったものか僕はまだ知らないです。でも、昨日の他の冒険者達の怯え方から見えてただの上位職ではないことは薄々検討がついていました。


「ルクシオン教の教えでは、どのような理由や身分であろうと『死霊術士』の天職を持った者は見つけ次第即処刑と決められておる」


 は? 僕は司教様の言葉を聞いて驚愕します。


 確かに、天職はクラスアップ以外の手段で変更できない。上位職が天職の頂点である以上もう僕の天職は一生、『死霊術士』です。


 でも、いくら何でも、『死霊術士』に就いただけで、処刑は横暴過ぎる。


「そ、それはいくら何でもあんまりです!」


 しかし、司教様は、これは、常識であるとばかりに言います。


「『死霊術士』、五つある戦闘系の下位職の一つ『魔術師』からなれる上位職の一つだが、数ある魔術師系の上位職でも、この天職に至った者は極めて少ない。まあ、こんな天職持ちがゴロゴロ出てきたら大問題だがね」


 やはり、『死霊術士』は相当レアな天職のようです。


 そう考えていると、司教様は、ステータスプレートの裏面を見せてくれました。ステータスプレートの背面には持ち主が所有するスキルが書かれていて、僕のプレートにはこう書かれていました。


魔法性能向上

闇系統魔法性能向上

スケルトン作成


 魔法性能向上は、『魔術師』が最初から会得している基本スキルです。このスキルのおかげで、『魔術師』は他の天職よりも、効果の高い魔法が使えます。


 闇魔法の効果が上がる闇系統魔法性能向上は、この半年前に、ある日ステータスプレートを確認したら、いつの間にか会得していたスキルです。


 上二つは『魔術師』の時のスキルが引き継がれてようですが、一番下にあるスケルトン作成は見たことのない新スキルです。


「スケルトン作成、『死霊術士』全員が最初に持つ基本スキルだ。簡単に言うと、死体を操るスキルだ。まあ、このスキルで操れる死体は白骨化した死体に限られる上、その死体の生前の能力は何一つ扱えない。ゴブリンと同程度の魔物を使役するようなものだから、大して脅威にはならんがな」


 死体を操ると言うのは、確かに好ましい能力ではないかもしれませんが、それでも今の説明では、僕が処刑される理由にはならないと思います。


「ゴブリン程度であれば、そこまで騒ぐようなことに思えないのですが?」


「そう思うじゃろうな。では、特別に何故この天職が危険かを詳しく教えてやろう」


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