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結局俺の思い過ごしって事か


 俺は奇妙な感覚のままとりあえず遠藤くんに電話した。


 だが電話には答えてもらえずメッセージで今は手が離せないらしく、なんなら一日中忙しいと言われてしまった。


 俺は誰もいない……いや誰か分からない人と一緒にいる恐怖に耐えきれず家を飛び出した。


 夏なのに寒気が止まらず鳥肌も立ち続けている。


 エミは?妹の部屋に居ると言ってたが……。


 「あ、そうだ」


 俺は妹に電話した。


 なんでそんな事をするのか疑問に思うかもしれないが、あれが本当の妹なのに俺の頭がどうかして化け物か何かと勘違いしているのかもしれない。


 本当にここ最近俺の精神はおかしくなっている。


 タップしたスマホの画面には妹の呼び出し画面とメロディーが流れる。


 見た目は雫だった。


 けど……くそっ!


 よく分かんないけどあれを妹だと認知するのを脳が拒んでいた。


 メロディーが鳴り止んだ。


 固唾を飲む。


 上手く言葉が出てこない。


 「どうしたの?お兄ちゃん」


 声は間違いなく妹だ。


 じゃあ何故さっきの妹に違和感を感じたのか。


 ……それは目の奥が完全に別人に見えたからだ。


 日本人は特に目を気にしている。


 海外では口元で相手の性格やその時の感情を読み取るらしい。


 だから俺は目で相手を無意識のうちに見ている。


 俺の本能が言ってる。


 あれは……完全にメンヘラか!!ヤンデレの目をしていた!!


 長年見てきた俺が言ってるんだ……間違えるはずもない。


 「お〜い、かわいい妹が電話に出たのに無視ですか〜?」


 おっと完全に忘れていた。


 「あのさ?今朝俺ら階段上で遭ったよな?」


 「うん」


 「……だよな?それでさ……今ちょっと出かけちゃってるんだけど……夏祭り明日からじゃん?」


 「うん」


 自分でもびっくりするくらい言葉に詰まっている。


 繋ぎ合わせようとする単語が合っているのかわからない。


 そんな普段考えた事もない事を気にしている。


 「予定通り明日でいいんだっけか?」


 「ん〜明日は友達と行くかもしれないんだよね〜なんかやたらエミちゃんも寝てるし、ちょっと具合悪いのかも」


 具合が悪い?昨日まではそんな素振り全く見せてなかったが……。


 「大丈夫なのか?やばそうなら病院に連れてった方がいいし必要なもの買って帰るけど」


 「今日は私が見るから大丈夫、それよりお兄ちゃんはやる事があるでしょ?」


 電話越しに聞こえるその声は少し楽しそうに話しているようにも聞こえた。


 「え?なんのことだ?」


 「ちょっと待ってね……お兄ちゃんスマホ見て」


 そう言われて俺は耳元に近づけていたスマホの画面を見る。


 そこにはビデオカメラが写っていて妹と横になってるエミがいた。


 妹はエミの顔に近づき二人でカメラがいっぱいになるくらいに寄せてきた。


 「んー!雫〜!眠いんだから邪魔しないで〜」


 そう言って目を瞑ったまま布団を頭から被る。


 「エミちゃん体調悪いの?」


 「大丈夫よ〜けど今日明日は動け無さそう」


 妹はインカメのまま部屋から出た。


 とりあえず俺はその光景を見て酷く安心した。


 エミと妹の絡みが見れたおかげだろうか。


 コンクリートの影に身を隠す。


 相変わらず今日も暑すぎる。


 ……さっきまでの不安はなんだったのか。


 「じゃ、そう言う訳だからお兄ちゃんは安心して自分の事をしな」


 こいつはさっきから何を言ってるのだろうか?


 「なぁ?今日の雫ちょっと変じゃないか?」


 「変態なのはお兄ちゃんでしょ?エミちゃんの寝顔で一発抜いてやろうとか考えてるのバレバレだから」


 「おい!病人で抜くとか流石にドン引きだぞ!そう言うのは一部の層だけなんだよ」


 ……やっぱいつも通りだよな。


 「はいはい、分かりましたそれじゃあね」


 「あ!おい!誤解は解けたんだろうな!?」


 最後インカメを切る瞬間、今朝の扉がやたら赤く見えた理由が分かった。


 「掛け軸が無くなってる」


 さらに赤ではなくピンクだった。


 恐怖と二階が暗く、色素が濃く映って見えてたせいだ。


 結局俺の思い過ごしって事か。


 まぁ全然あり得る話だ。


 と言うか世の中の大半は勘違いや思い過ごしなんだろうけど。


 ……さてと。


 神崎妹に返信しなきゃな。


 まさかやらなきゃいけない事ってこの事じゃないだろうな。

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