分かってますとも
学校生活3日目を迎えようとしていた俺は心地いい朝を迎えていた。あれ?まだ3日しか経ってないの?
静寂の中をフカフカのベッドで寝る、これは俺にとって最高の時間であり、最高のひと時であった。
何者にも縛られず全身を包み込むような羽毛布団は俺の傷ついた心を優しく包み込んでくれる。
いっそ、このまま生涯をベッドに捧げてしまおうか、いや、いやらしい意味じゃないよ?
……本当だよ?信じてよ!あ、そこまで思ってないですかすみません。
俺がそんなバカな事を1人で考えているとガチャっとドアが開いた。
「お兄ちゃん〜珍しく私より起きるの遅いね〜高校生活が忙しくて、疲れてるのかな?それとも昨日の夜はあれだったから遅くまで起きてたのかな?やっぱあれはシてる時より選別してる時の方が楽しくて漁るのに時間がかかるって言うもんね」
部屋の扉を開けひょっこりと妹が顔を出してきた。
朝からテンションが高くニヤニヤ顔が朧げに映った。
全く……相変わらずノックをしないやつだ。
「すまん妹よ、俺は今、修羅場ってやつに突入していてな……」
みだらな格好をしている妹の姿はピンク色のパジャマにダボっとした萌え袖をしていて下は何も履いてないのかよく分からんファッションスタイルをしていた。
う〜ん、可愛い。後ろからそっと抱きしめて頭を撫でたい。
「お兄ちゃんも大変だね〜朝ごはん今から作るから待っててよ〜タンパク質摂りたいと思うから卵多めの方がいいよね?昨日いっぱい出しただろうし」
あくび混じりに妹はそう言って台所に向かった。
「すまんな、俺もすぐ準備する……っておい!なんか勘違いしてるぞ!修羅場って違うからな!この思春期!」
いや〜ん襲われる〜と言いながら階段を降りて行きやがった……朝からツッコミ疲れるわ。
「ふぁ〜っあ〜〜……着替えるか」
ベットを降りて寝巻きのボタンを外す。
ふと部屋の片隅にあった雑誌に目が移った。
【今年も遊び尽くせ!サマーランド!】
俺はその雑誌を拾い上げパラパラっとめくった。
多分妹が勝手に部屋に入っては雑誌を読んで適当に置いていったんだろう……あいついつの間に入って来たんだ。
なになに……サマーランドであなたの思い出を、アトラクション施設にプールや温泉なんかも、さらに去年バズったタワーパフェや面白おかしい迷路館も……へ〜確かに内容だけ聞けば面白そうだな。
軽く目を通して俺はパタンと雑誌を閉じる。
……だがすごく嫌な予感がする、俺の第六感がこの件は危険だから触れないほうがいいと言っている。
分かってますとも、温泉なんて行けば確実にトラブルがある事くらい。
ワイシャツのボタンに苦戦しながら冷や汗を拭った。
最近こう言う事多いいんだよなぁ……。
なんて言うかさちょっとした事でも焦っちゃうと言うか。
それが鎖みたいになっててどんどん嫌な事が繋がって。
ーーーー
「お、おはよう雪くん、別にあなたのために待ってた訳じゃないけれど、たまたま!寄ったから一緒に行こうと思ってね……なに?何か文句でもあるの?あるなら聞くけど?でも私に文句を言うって事はどう言う事か分かるわよね?」
俺が玄関を開けるとそこには志保と美代が待っていた。
つ、ついにバレた……。
本当に鎖のように負の連鎖が繋がっていたのか。
俺は玄関の扉を開けたまま呆然と立ち尽くしていた。
いや、俺は分かっていた、両親のあの発言。
おそらくこいつらは颯爽に俺の家は特定していたんだ。
そして何故か俺には会わずに両親には毎年誕プレを。
全くもって理解出来ない。
まさか俺が気づくのを待ってたなんてオチじゃないだろうな。
「なによ?」
「いや、文句はないけど朝からよく喋るな〜と思って」
「はい?」
鋭い目つきで俺を睨んできた志保はまるで獲物を捕らえる鷲のようだった。
こわっ!
「いえ!なんでもございません!……てか!なんで俺の家分かったんだよ!」
二人とも顔を見合わせてきょとんとした顔をしている。
なんだその表情!可愛いな!
「なんでって美代は中学時代に雪くんの跡をついて行って見つけただけだけど」
「私は電柱に登って双眼鏡で雪くんをたまたま見つけたから跡を追ってたらたまたま貴方の家を見つけてしまったのよ」
こいつら……思いっきりストーカーじゃねえか。
「あら?美代ってばそれはストーカーじゃないのかしら?私はたまたま偶然なのだけれど貴方は意図的に雪くんの跡を追いかけて家まで行ったのよね?それはもう立派な犯罪よ?これから貴方のことは犯罪者って呼ぶことにするわ犯罪者」
志保は美代にビシッと指を刺すと決まったと言わんばかりの顔をしていた。
なんかチラチラこっち見て来るのでとりあえず拍手だけしておいた。
「は?自分の事を棚に上げて何言ってんの?美代は可愛いから許されるけど志保はまず電柱に登ってる時点でアウトだよね?……プッ、あんたのスタイルがそもそも電柱みたいね」
「あ?貴方朝から死にたいなんて随分とご機嫌じゃない?私のスタイルはスリムって言うのよ?貴方はただのデブ分かる?せいぜいホームレスにでもその無駄にでかい母乳分けてくればいいんじゃないかしら?」
すると美代は俺の腕をがっしりとつかみやたら胸を強調するかのよう押し当ててきた。
「雪く〜ん、電柱がこわ〜い、あんなの無視して早く行こ?それでさ〜雪くん昨日の夜はお盛んだったの?ジャンルは?長め?短め?結構ハードなやつとか見る?それとも妄想?」
ハードなのは貴方の性格ですよ。
まぁ俺の人生もハードモードだけど。