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アーケードゲーム


 相変わらず外は暑い。


 これならエアコンの効いた部屋でゴロゴロしてる方が良かったんじゃないかと思ってしまうくらいには外はジメジメとしている。


 街行く人の大半は半袖短パンや首元に小型のファンをつけたりと暑さ対策をしている。


 俺もああ言うの欲しい。


 そう言えば志保や美代とサマーランド行く時もここ通ったっけ……。


 ふと入学して早々の事を思い出す。


 あの時は久しぶりに二人に会えて困惑してる反面ちょっとだけ嬉しくもあったんだよな。


 それがまさかこんな事になるなんて。


 俺はこの状況になってからひとつだけひたすら避けていた行動がある。


 それは……。


 「雪殿ぉ〜!お待たせしたでござる〜!早速行くでござるよぉ!」


 円堂くんが猛ダッシュでこちらに走ってくるとそのまま俺は手を引かれ駅前の方へと向かった。


 「あのボランティア活動の日から雪殿少々元気がないように見えまして心配してござったが今日は拙者が最高の一日にするので安心して欲しいでござるよ」


 そんな事を真正面から言われると少し照れてしまう。


 そんな事を恥じらいもなく言えるのが円堂くんの良いところだ。


 「そっか心配かけて……ごめん」


 「いやいや!そうじゃないでござる!それより夏休みどうでござるか?エンジョイしてるんでござるか?雪殿は可愛い妹殿がいて羨ましいでござるからなぁ〜」


 「それがさぁ〜最近……親戚の子が泊まりに来てて!そいつがムンハンやれだのあんぱん買ってこいだのすぐ妹の真似したりしてさぁ〜」


 円堂くんはメガネをクイっとあげる。


 「ほほぉ……それは詳しく聞かせてもらっていいでござるか?なんだか面白そうでござる!」


 そんな会話をしながらついた先はゲームセンターだった。


 もうしばらく来ていなかったが改めて入ると音が体の芯まで響き室内の暗い照明をメダルゲーム機やアーケードゲームのあかりが照らす。


 格ゲーなんかはギチギチに配置されておりかなりの台数が置かれている。


 「雪殿!何かやりたいゲームとか面白そうなのはありますかな?無いのなら拙者のオススメを教えるでござるよ」


 「う〜ん、とりあえずUFOキャッチャーはやりたいかなぁ〜」


 「それならあっちにあるので拙者が極意を教えてるでござるよ!」


 そう言って円堂くんは1000円札を崩し大量の100円を作る。


 まさかそんなにやるのか?


 極意って数の暴力じゃ無いだろうな。


 そんな円堂くんの様子をチラッと見て俺はキャッチャー内にある景品を見る。


 やたらでかいお菓子や50cmスケールの人形に造形が細かいフィギュアまでかなりの数がある。


 え?まさかの一回500円もかかる台なんかもあるじゃん。


 こんなのやる人居るのか?


 「お!雪殿!お目が高いでござるな!それなら簡単に取れるでござるし高度な技術も要らないでござるよ」


 「いやいや!一回500円もするんだよ!?しかも中身は一番相場の高そうなフィギュア物だし絶対難しいって!そもそもこれ家に持って帰れないし」


 妹に何言われるか分かったんじゃない。


 ただでさえこの間ボロクソに色々言わたんだし。


 「そうでござるか、雪殿がやらないなら拙者がやるでござるよ」


 そう言って500円を投入し指定のボタンを押す。まじかよ。


 台の環境は何もない平坦な場所に箱物のフィギュアがポツンと置かれている。


 あれを一体ただの爪アームでどう取るのか皆目検討もつかない。


 俺の知っている知識だとそもそも最近のクレーンゲームは掴んでとると言う固定概念は捨てられタグにかけたり隙間に刺したりアームで押したりさらにそれの応用技でアームを軸に回転させたりなんかもする。


 明らかに攻略難易度も上がっているしそもそも知識がなければ攻略出来ないものも多い。


 だから初心者は必然的に店員からのアシストが必須になる訳だが。


 円堂くんは明らか上級者。


 それは500円をなんの躊躇いもなく入れた事ですぐに分かる。


 さて……一体どうこのフィギュアを攻略するのか。


 「って!円堂くん!何の策も無しにただ箱のど真ん中で停めるなんて!基本的にアームで掴むのは無理だ!そんなの初心者の俺でも知ってるのに!」


 あーあ、せっかくの500円が一瞬で……。


 「ふふっ……雪殿はやはり固定概念に囚われすぎているでござる、周りからの情報を鵜呑みするのは控えた方が良いでござるよ」


 なん……だと……。


 まさかのキャッチャーは綺麗なまでにフィギュアの箱をバランス良く掴みそのまま落とし口まで運んだ。


 景品獲得音と共に円堂くんはドヤ顔を見せる。


 「凄いよ!円堂くん!なんでこの台のアームが強いか分かったの!?」


 「ふふっん!それは色々理由があるでござるがまず初めに一回500円もする時点で設定自体は低めにしてあるんでござるよ、さらにこの中に入っている景品は半年前に発売されていたものでござる、まぁとどのつまり在庫処分台ということでござるな」


 メガネをくいくいと上げる。


 なるほど……確かに俺は動画サイトやテレビとかで見るUFOキャッチャーの台ばかりを気にしていてその店がどんな設定をするのかやその置かれてる景品なんかは把握していなかった。


 これが情報量の差かつ自分で見てやってみる事が大切と言う事なんだろうか。


 すると店員さんの声らしきものが聞こえてきた。


 「見て見て〜あのメガネの子また同じ景品取ってますよ〜よっぽどあのフィギュア好きなんですね〜」


 「最近の若い子はああゆうアニメグッズとか好きらしいからねぇ〜」


 なぁ!!?


 「さぁ!!雪殿!!拙者の手にかかればどんな物でも簡単に取れるでござるよ!!拙者の事はクレームゲームの達人とでも言って良いでござるからなぁ!!」


 そう言って高らかに笑う円堂くん。


 その姿はどう見ても小物臭のするモブキャラだった。


 ーーーー


 クレームゲームをで取ったお菓子を貰いその後は二階のアーケードゲームコーナーへと向かった。


 後でメダルゲームもするらしい。なんでもかなりの枚数を持ってるんだとか。


 「お、これは拙者の得意なやつでござる、雪殿申し訳ないが一クレだけこの音ゲーやっても良いでござるか?」


 「もちろん良いよ、俺音ゲーとかあんまやらないから他の人のプレーとか見てみたいし多分円堂くんの事だからプロ並みの実力見せてくれるんだろうし」


 「はっはっはっ!それはいくらなんでも言い過ぎでござるよ!せいぜい店舗ランキングに一桁載るくらいでプロのお方には歯も立たないでござる」


 そう言って円堂くんはディスクとボタンが7個付いてる音ゲーの台に乗った。


 デモ画面を見ている限りこれはどう見ても初心者お断りの音ゲーで、俺がたまにやる太鼓のゲームとは比べ物にならないくらい難易度が高いだろう。


 セッティングボタンみたいなのも沢山あり謎のつまみなんかも存在しておそらくボリュームの設定だろうがそもそもボタンの位置がやや高めなため子供はプレイする事すら不可能だ。


 こんな玄人ゲームをやっているなんてやっぱ円堂くんは変なとこで器用なのだ。


 まず円堂くんが特殊なカードをかざすと大ボリュームと共にパスワードを認証し始める。


 もちろん俺は目を逸らす。


 「あ、別に見ても問題ないでござるよ!まぁでもそう言うちょっとした気遣いを出来るのが雪殿の良いところでござるなぁ」


 音ゲーの音が大きすぎて何言ってるか分からなかったがとりあえず頷いておいた。


 見ている限り最近のアーケードゲームは電子決済が可能らしく円堂くんは硬貨を入れずに遊び始めた。


 最近のアーケードゲームは凄いなぁ〜。


 そんな事を思っていたら円堂くんのプレーが終わった。


 手招きされたので俺も台に乗り近づく。


 「雪殿もやってみるでござるよ!これは一回で四曲出来るでござるから、曲は適当に拙者が選ぶでござるよ〜……えっと……これとかオススメでござる」


 「わ、分かった!やってみるよ!」


 こうして俺は円堂くんのなすがままに音ゲーを満喫した。


 ちなみに選曲は何故か四季 冬だった。


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