俺の所持ゴールドでは回復薬一個も買えない
俺が美代に振られて数日経った。
結局バイトもしてないのでお金もない。
そんな訳で家で大人しくする事にした。
メンタル面はだいぶ回復して来たけどそれでも俺のハートには大きなヒビが入っている。
傷の入った心に上から土を被せただけだから見た目では問題なくても実際には大きなヒビが入っているのだ。
つまりは溶接レベルの補修をしなくては俺の心が癒える事はない。
そのレベルとなるとそれはもう実は志保とあいつが付き合ってるのはただの誤解だとか今俺の目の前にいるエミとまだ部屋でグースカ寝ている雫がお兄ちゃん大好きと甘えまくってきて俺はその言葉にやれやれ仕方ないんだからと言って頭を撫で将来はお兄ちゃんのお嫁さんになると言ってくれるレベルの癒しが必要だ。
……もしくは、元の。
「だから〜そこは普通音爆投げてから攻撃するべきでしょう!?それに大剣使うの下手すぎ!このあほんだら!」
「……ん?あ、やべ!ちょっとたんまたんま!……よしレバガチャで急死脱出っと」
なぜ俺がこんなエミにボロクソ言われているのかと言うと大人気ゲームムンハンをプレイしている最中で、俺はとあることからやらされているのだ。
ついさっきエミが「やっとドスジャギー倒せたー!」と大はしゃぎで喜んでいたところを寝起きの俺が素通りして洗面所に向かったら「ちょっと!褒め言葉一つもないの?」と何度もしつこく要求して来たので俺があっさりクリアしてやろうと言ったら大の苦手分野、大剣を使わされてしまったのだ。
変えてくれとお願いしてもフェアじゃないでしょとか言われたし。
大剣苦手だし、エミはしつこいし。
「はよ〜朝から何騒いでるの?」
リビングのトビラが開くと妹が重いまぶたを擦りながら入ってきた。そのまま冷蔵庫を開けコップに牛乳を入れてチビチビと飲み始めた。
「おはよう……相変わらず朝は弱いみたいだな」
「ちょっと!よそ見してるから攻撃されてるじゃない!ほらほら、早く回復薬飲んで〜!」
「わ、分かった、分かったから揺らすんじゃない!ゲーム機と俺が揺れて画面が二重になって見えるから!」
俺はすぐさま四角ボタンを押して回復しようとしたがドスジャギーに攻撃されて上手くできなかった。
「もう〜何やってるのよ〜!」
画面に写っているエミのライフは赤になってしまったので俺は一時撤退することにした。
「よし、一度体制を整えてからにしよう……あれだ、このままじゃ普通に三落ちしてクエスト失敗になる」
俺はマップから逃げようとスティックを前に倒しそれと同時にR1も押してダッシュした。
「は、早く!近づいて来てるから〜」
「こ、こら!揺らすんじゃない!画面が見えないだろ!」
よし、あとちょっとでマップ5から6に逃げ切れる。
【GAME OVER】
「あ……」
「あぁ!!だからよそ見すんなって言ったのよ!このあほんだら!もう所持ゴールド少ないのに!」
俺はこれ以上怒鳴られるのを恐れてすぐさま自分の部屋に退散した。
仕方ない……あとでコンビニ行ってあんぱんでも買ってくるか。自分でやらかした事だし。
あ、そんなん買う余裕も無かった。
俺の所持ゴールドでは回復薬一個も買えない。
椅子に座り課題を進めようとしたが携帯の着信音が聞こえたのですぐさま開いた。
【雪殿!これからどこか遊びに行きませぬか?】
クエスチョンマークのスタンプとともに円堂くんからメールが来た。
……男友達と遊びに行くなんてすげぇ久し振りな気がする、それに家族以外から連絡が送られるのも久し振りだなぁ〜。
俺はウキウキしながら返信した。
【お金ないけどそれでもいいならいいよ、どこ行こうか?】
俺はOKというスタンプとともに送るとすぐさま既読になら返信が帰ってきた。
【それなら拙者に任せるでござる!】
俺はすぐさま支度し念のため課題を……それに財布と携帯にモバイルバッテリーをカバンに入れておいた。
とりあえず妹とエミには一声かけておくか……色々言われそうだけど。
さっきモンハンで負けたこともあるし。
俺はリビングの扉を開けるとエミと妹がモンハンの協力プレイを楽しんでいた。しかし俺に気づくとエミはジト目でこちらを見つめて来た。
「なに?さっき逃げたんだから入れてあげないわよ……それに謝罪しなさい!謝罪!じゃないと許してあげないんだからね!」
「悪かったよ、それより俺遊びに行くから2人とも留守番頼むな、妹よくれぐれもエミを台所に近づけないように、火は使わせるなよ」
「りょ、りょ〜」
妹は敬礼しながらそう言った。
「子供扱いするなぁ!あっ……ちょっと!」
俺は時間もないのでさっさと玄関に逃げた。
「この、あほんだらぁ!もう雪と遊んであげないんだからね……もう……」
……エミのやつナチュラルに訛り使ってるな。
そのうち録音して聴かせてやろう。これ後になって恥ずかしくなるやつだからな。




