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お兄ちゃん殺すよ?


 「お兄ちゃんが死んじゃった……な〜む〜」


 「雫!何それ!?な〜む〜って!なに!?」


 「これはね?ここに死体があるでしょ?これをしっかり成仏させるために唱えなくちゃいけないの、そうじゃないとお兄ちゃんの霊が色んな人に童貞をばら撒いて少子高齢化がどんどん進行しちゃうの」


 おい、適当言うな……ってつっこむ気力もない。


 二人は俺の周りをウロウロしながら妹は楽しそうにエミは不思議そうに俺の事を見ていた。


 「どうてい?って何?しょうしこうれいかってなに?」


 「お兄ちゃんみたいな人がいるせいで人口がどんどん減っていっちゃう事だよきっと将来は俺は税金だけ払い続ける奴隷なんだ〜とか言い始めるタイプだね」


 「ふ〜ん……くそめんどくさい奴ね!」


 俺はそんなやりとりを赤子のように蹲りながらリビングの端で聞いていた。


 俺は道端に落ちている蝉の死骸と一緒だ。


 せめてアリに運ばれて食糧にでもなるべきなんだ。


 そしたらメルエルみたいな強いキメラアントが生まれるかも。


 俺は美代に告白してフラれた。


 ……はい、それだけです。


 お終いですね。


 何を俺は調子に乗っていたんだ……。


 あんな誰からにでも人気がある女の子と付き合える訳が無いのに……。


 「お兄ちゃん何があったの?話した方が楽になれるよ?そのあとめちゃくちゃいじるけど」


 「雫って……結構鬼ね!」


 あれは鬼なんかじゃ無い……ただのドSだ。


 あんなタレ目で眠そうな顔してるくせに本質は人をいじるの大好きだからな。


 まぁでもいじられるの覚悟で言うか。


 言った方が確かに楽になりそうだし。


 「……お兄ちゃん告白してフラれました」


 「えええええっ!」


 何故か想像以上にエミが大きく反応した。


 妹は特にこれと言って声を上げることもない。


 「一体誰に告白したのよ!教えて!教えて!教えて〜!」


 エミは俺に近づき妹と一緒にリビングの中央側へごろごろと回しながら移動させる。


 どっかのタイヤのCMみたいに。


 ……ちょっと酔いそう。


 「雫!ここで大丈夫よ!それで?誰に告白したのよ!?……これはちょっと予想してなかった」


 俺が口元に親指を当ててモゴモゴしていると妹が容赦なく俺の背中を踏みつけてくる。


 「多分お兄ちゃんはこの間あった美代さんって人に告白したと思う、怖い人たちに囲まれてるところを助けてあげたんだからちょっとくらいエッチなお願い聞いてもらおうか美代ちゃんグヘヘとか脅して告白したんでしょ?そんなんじゃダメだよ」


 「そんなん言ってないわ!……まぁ確かにあの件もあったし?……なんか美代が俺の事を意識してるじゃないかなって思ってない事もなかったけど?何よりあの場の雰囲気が俺を狂わせたんだ!」


 もう全て忘れたい!


 俺は何度も床に頭を打ちつけた。


 「お兄ちゃんが漫画のキャラクターみたいな事してる」


 「止めなくていいの!?雫!?」


 「うん、無視無視……あっ」


 意識が飛ぶくらい何度も床に頭を打ちつけていたら意識が飛びそうになる。


 俺は告白した後の事を思い出す。


 ーーーー


 あれ?美代って俺の事を好きなんじゃなかったのか?


 おかしい……俺の聞き間違い?でもそれならこの変な空気はなんだ?


 「この間助けてくれた事はすごく美代感謝してるんだよ?けど……美代も分からないけどなんか今じゃない気がして」


 美代は体育座りしながら顔は俯き俺と目を合わせようとしてくれなかった。


 手は少し震えてる気がする。


 「だ、だよね!俺みたいな奴と付き合うとか普通嫌だもんな!俺が美代の立場だったらこんな取り柄のない男と付き合うわけないもん!うん!」


 自分を肯定させるために言い訳をしたくなる。


 何言ってるんだか自分でも分からない。


 けどもうこの空気感を作ってしまった責任を感じる。


 なんとか……せめてこれからも普通に友達の関係のままでもいいから繋がりが欲しい。


 そう思って無駄な努力をしてしまう。


 意味の無いフォロー、一方的に俺が悪いから無かったことにしようと。


 「ううん……そうじゃ無いの……美代は……今の高橋くんって志保に感化されて美代に告白したのかなって……違うかな?美代はさっきの高橋くんの悲しそうで寂しそうな顔初めて見たんだよ?もちろん美代もそれを慰めてあげたいし助けてあげたい……けどそのいっときの感情に流されて付き合うだけの関係なら美代は要らない」


 ぷつぷつと途切れなが美代は語った。


 ゆっくりと言葉を慎重に選んでくれているのが伝わる。


 それが申し訳なくて仕方ない。


 きっと気を遣ってくれているのだ。


 俺みたいなやつにも気を遣ってくれる。


 そりゃ人気あるわけだよ。


 なんか自分でももうどうでも良くなってきた。


 とりあえず今はこの重い空気から早く逃げ出したくて仕方がない。


 「だ、だよね!なんかごめん!本当に俺が勝手に告白したってだけの事だから美代は全然気にしないでくれ!……うん!このまま俺たちは知り合いって感じでこれからも仲良くしていきましょ〜!」


 なんかすげぇ変なテンションになってきた。


 顔もすごく熱いし。


 何より心臓が五月蝿い。


 美代の表情は相変わらず分からない。


 ただ俺の勝手な解釈できっと申し訳ない気持ちになっているのだろうと思ってしまう。


 「……うん……そうだね」


 美代の声は震えているように聞こえた。


 ーーーー


 「って感じです」


 俺は妹に馬乗りされながらエミは俺の事を見下ろしながらこっちを見ていた。


 やっぱお兄ちゃんさいこう。


 このままこの二人と一緒に暮らしていくんだ俺は!


 「お兄ちゃんさぁ〜前からずっと馬鹿だと思ってたけどもう馬とか鹿とかにも失礼だから何て呼べばいいのか迷っちゃうんだけど……何て呼べばいい?使用済みティッシュ?」


 「おいこらなんでお前はすぐに下ネタに走るんだ使用済みティッシュを馬鹿にするな」


 妹は馬乗りしながら足を俺の顔にペタペタと当ててきた。


 「ほら、こう言うの好きでしょ?ありがとうございます雫様って言ってよ、妹の足に顔を埋めて気持ちよくなってるんでしょ?」


 「俺はドMじゃねえよ!」


 あ〜りがとうございます!雫様ぁ!


 「あんたら兄妹私から見てるとどっちもやばいやつに見える」


 エミは俺たちの戯れ合っているのを見てドン引きしていた。


 「それで話戻すけどお兄ちゃん……美代さんが本当に可哀想で仕方がないよ。お兄ちゃんみたいな使用済みティッシュ野郎にもこんなに優しくしてくれてるのにさ……まぁそれが分からないからいつまで経っても童貞なんだろうね」


 「いや……まじで全然分からん、普通に美代は俺の事好きじゃなくてけど優しさで気を遣ってくれているんじゃ無いのか?」


 妹はやれやれと言ったポーズを取る。


 エミはそれを見て何それと言いながら真似していた。


 まじで分からん。


 妹は再び足を器用に使って俺の顔をペシペシと当ててくる。


 「答えが知りたいの?お兄ちゃんの場合だと公式すら分かってないんだから答えだけ教えても意味ないもんね、一から教えてあげるのはめんどくさいだけど」


 俺は何とか妹の足を引き離しそのまま上半身だけを起こす。


 ……なんかちょうど妹の股のところが俺のお腹に当たっててエロい。


 改めて見るとエロい。


 「お兄ちゃん鼻の下伸びすぎ……伸びすぎてエロ漫画とかに出てくるゴブリンかと思ったくらい伸びすぎ」


 「そ、そんなに伸びてないだろ!」


 俺は両手で鼻元を隠す。


 そんな様子をエミがジト目で覗き込んでいた。


 あ、もうちょいでスカートからパンツが見えそう……エミには今度もっと短いスカートを履かせよう。


 「それじゃあお兄ちゃんには一から説明してあげる、まず大前提として美代さんはお兄ちゃんの事が嫌いなわけじゃ無い……むしろ好意を寄せているってのは分かってる?」


 もちろん分かっていません……なんて言えないので無言で頷く。


 「オッケー、それでこれはタイミングが悪かったけど偶然志保さんって人とその彼氏が仲良くしているところを見ちゃってお兄ちゃんはそれを面白くなさそうにしていたと」


 「……はい」


 隣でエミがやれやれと言ったポーズをとってる。


 なにそれ?気に入ったの?


 可愛いからもっとやって。


 「で、ここから大事なんだけど多分お兄ちゃんはそこで志保さんに嫉妬みたいなものを感じたんだと思う、それでお兄ちゃんは志保さんを見返してやろうと美代さんに告白した……仮にお兄ちゃんにそのつもりがなくても他の人にはそう見えてるからどんなに言い訳しようとしても無駄だから」


 「……なんだよそれ……俺はそんなつもりじゃ」


 そんなつもりじゃないって言い切れない。


 確かに俺は志保に少しムカついてたかもしれない。


 あんだけ俺の事を好きって言ってたのに。


 他の男とベタベタいちゃついて。


 思わず頭を掻きむしる。


 くそっ!冷静になって考えれば美代からしたらそう見えるだろ!


 志保と彼氏を羨んで。


 それで美代に告白した。


 なんて馬鹿なんだ俺は!


 「お兄ちゃんようやく分かったみたいだね、自分が使用済みティッシュ以下の存在で私の靴下をちゃっかり舐めるようなゴブリン野郎だって事に」


 「おい妹よ!答えを教えてくれてありがとう!そのお礼に本当に靴下を舐め回してやろう」


 俺は妹の足をガッチリと掴みそれをゆっくりと口元に近づけてやった。


 すると視界が大きく揺れ俺はそのまま家の天井を見上げていた。


 「お兄ちゃん殺すよ?」


 既に蹴り飛ばされ意識飛びそうなんですが。


 「やっぱ雫って鬼ね!」


 これに関しては俺が悪い。

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― 新着の感想 ―
[一言] 全部読みました!これを言ったらネタバレになるかもしれないので言わなくても大丈夫なのですが、記憶が消えてから不穏な感じで不安なんですが、ハッピーエンドにはなるのでしょうか、、?
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