嫌な予感がする
「えっと……あれとこれと」
学校帰り、親にはあまり道草するなと言われているが美代は少し本屋に立ち寄っていた。
多少の融通くらいいいじゃないと常日頃から思っている美代にとってはこの時間は至福のときであった。
やっては行けない事、禁止されている事をこっそりやってしまうのは背徳感があって緊張していた。
でも美代にとってはそれがたまらなく気持ちが良かった。
美代の手には最新のファッション雑誌と参考書、そしてライトノベルがあった。
今日はなんだか変な気分だったなぁ〜高橋くんと話すとなんか引っかかるような……。
心の隅にこのモヤモヤをそっとしまい、お手軽料理の本を手に取ると軽くパラパラっとページをめくった。
今度料理の練習してみよっと……。
美代だけにねって。
美代は横目で辺りを見渡した。
さっきからなんだか目線を感じるような……。
本屋の入り口を見てみると向かいのスーパーに急いで駆け込む仲の良さそうな兄妹が見えたが道路を挟んでいるため車が通り視界を遮られてしまった。
「まっ、いっか」
もう一度本屋を一周すると会計を済ませ家の方角へ歩いた。
数分歩くと人盛りが消え辺りも少しずつ暗くなっていく。
美代はスマホで時間を確認すると少し早歩きになった。
そろそろ帰らないと心配するよね。
それにさっきから視線も気になるし。
心拍数が上がる。
嫌な予感がする。
早く帰らないと。
美代が早歩きになると同時に1人の男が通せんぼしてくると後ろからも逃げられないように塞がれていた。
あれ?なんでこの人たち美代の事をジロジロ見てるんだろう。
1人は耳にピアスをして髪の毛は茶髪、もう1人はズボンにチェーンを巻いていた。
その格好は柄の悪さを映し出してるように見えた。
「ねぇねぇ、お嬢ちゃん1人?お兄さん達と遊ばない?お金もいっぱいあるんだけど」
嘘っ……これって美代に言ってるんだよね?
周りを見ても美代以外誰もいない。
美代は戸惑いながらも男の人を刺激しないよう言葉を選ぼうとするともう1人の男も話しかけて来た。
「そうだ、これからカラオケにでも行かない?俺が奢るからさぁ〜」
えっと……えっと……。
「ごめんなさい、そろそろ帰らないと両親が心配するので……」
「え〜!いいじゃんそんなつれないこと言わないでさ〜ちょっとくらい、そうだ!ここで立ち話もなんだから、こっちに来てよ!お兄さん達の面白い話とか聞きたいでしょ?」
美代は腕を掴まれると裏路地に連れ込まれた。
「えっ!でも、私……」
美代は多少の抵抗をしつつも男たちは無理やり引っ張っていく。
「いいからさ〜悪いようにはしないって!君めっちゃ可愛いし……女子高生だよね?めっちゃデカくない?」
「やべえ〜くっそ激ってきたわ!顔もスタイルも良いししかも女子高生とかもう神様が俺たちにご褒美をくれたとしか思えないわ」
ここで下手に対抗しても……どうしよう、警察に電話したいけど2人とも私が何かしないように見張ってるし……。
美代は裏路地の奥へ連れてかれるとどんどん不安になっていった。
「へへっ、お嬢ちゃんすごく可愛いね?どんな人がタイプ?もう経験したことあるのかな?」
え?そんな……
男は胸を触ろうとすると美代は抵抗し距離を置いた。
「おっ?抵抗するの?俺はそっちの方がいいけど」
「おいおい、あんま大ごとにするなよ〜さつは厳しいんだから〜下手すると捕まっちまうぜ〜」
美代は下を向きながら震える手をもう片方の手でぎゅっと抑えると心から願った。
助けて!
雪くん!
「それじゃあいただきま〜す!」
男達の手が美代へと近づく。
その距離あと数ミリと言うところで。
「あの!」
美代は聞いたことのある声がする方を向くと……
そこには高橋くんがいた。
「高橋くん!……」
美代の目にはまるでラノベの主人公のように映っていた。




