悪い……先戻っててくれ
「ありがとうございました〜、またのご来店を〜」
俺はビニール袋を腕にかけて店を出た。
「妹よ……取り返しのつかないこととは?」
俺がそう問いかけるとあざとい目でこちらを見て来た。
「だって……スーパーの特売日今日だったんだもん、ごめんね?」
妹はどうやら荷物持ちが必要だったらしく俺に取り返しのつかないことになる、などと言ったらしい。
あざとい上目遣い。
一般のお兄ちゃんなら失神しているに違いない。
俺は訓練されたお兄ちゃんだからな。
し・か・た・な・い!許そう!スーパーの特売は大切だと思うし!
うん!
俺は頭をかくと妹を撫でた。
「しょうがねぇな〜」
やっぱうちの妹には勝てないな!
「はいはい、それつまんないから髪の毛触らないで」
冷たい!用が済んだらもう俺は要らないというのか!?
その時ふと目に映った光景が俺の鼓動を加速させた。
あれ……美代か?
道路を挟んで正面の本屋から美代が買い物を終えたのが見てた、しかしその後をついて行く男二人組が気になった。
美代は気がついてなさそうだ。
「お兄ちゃん?」
マジかよ……このお決まりのような展開。
まさか俺が出くわすとは思わなかった。
こう言う時は決まってあそこに行くしかないよな……。
「悪い……先戻っててくれ」
俺はビニール袋を妹に渡すとすぐさま美代の後を追った。
「ちょっと!流石に重いんですけど〜!」
裏路地に行くしかねぇよな!
街中は会社帰りのサラリーマンや学生が夕日に照らされながら俺の視界にうつった。
この中から美代の跡を追うわけだが……。
そう上手く行くだろうか、もしかしたら俺の早とちりかもしれない。
そう思うとやはり家に帰ってしまおうかと思う。
俺は物語の主人公じゃない、異世界に転生したり魔王を倒したりするわけでもない。
……でも、幼馴染を守るくらいの力はあるはずだ。
たとえ幼馴染がメンヘラやヤンデレじゃなくなってしまったとしても……。
いや……むしろ前の状態の二人なら俺が余計なことをする必要はないんだが。
余計なことしなくても自力で解決していただろう。
けど今の美代はただの女子高生だ。
大の大人二人を相手にするなんて不可能。
けどいいのか?
今の俺は美代とはただのクラスメイト。
……いや、そんなの関係ないだろ!
そして俺はひたすらに走る事を決意した。




