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記憶がごちゃごちゃしてきた。


 あれ?おかしい。


 違和感があった。


 白一色ではない……黒でもないがグレー寄りの世界が一面広がっている。


 なんだかいつもと雰囲気が違う気がする。


 そもそも今まであの人と会う時は大体食べ物から渦が巻いてた気がする。


 でも今回はプールサイドの水から出来たものだ。


 それに何より気になるのが……。


 「ここは一体……雪さん……私たち水上公園に居ましたよね?」


 ユンがここに来てしまってる事だ。


 不安そうにジッとこちらを見つめてくる。


 くそっ!抱きしめて安心させてあげたい!


 キラキラとした瞳に保護欲をそそられる上目遣い。


 この子童貞を刺激させるのが上手い!


 「大丈夫だよユン、俺がついてる」


 人生で一度は言ってみたい台詞に入ってたからついカッコつけてしまった。


 「はい、ところでここは何処なんでしょうか?」


 あれ?反応薄くないですか?


 なんか普通に一人で盛り上がっててはずかしいんですが。


 すると声が聞こえてきた。


 いつもとは違う……別の誰かだ。


 「いいですか?これから真実をお伝えします、これは何度も死んできた貴方の始まりの記憶です、こっから全てが始まったのです」


 この声はどうも俺たちに話しかけているようには思えない。


 別の誰かに……。


 「つまりはずっと同じような事を繰り返してきた訳じゃ無いって事だよな?」


 誰かの声だ。


 妙に懐かしい。


 視界がぐるぐると縁を描く。


 なんだこれ?


 場面が移り変わりそこはまだ園内が綺麗で俺と美代や志保が出会って間もない頃の記憶だった。


 その記憶は本来俺が持っている記憶とは一部が違っていた。


 幼少期の俺は砂場で一人一生懸命にその辺の木の枝で線を描いていた。


  「雪く〜ん、何をしているのですか?」


  声の正体はユンだった。


ゆっくりこちらに歩いてくる姿はお嬢様にそっくり、金色に輝く髪の毛は風になびきより一層幻想的なものを感じさせた。


 とても園児とは思えない。


  「ん、今ナスカの地上絵を書いてるんだけど……全然うまく描けなくてさ……ユンちゃん知ってる?ナスカの地上絵?」


  幼少期にこんな事してるなんてぼっちの鑑だな俺。


  「う、うん……知ってるけど……雪くんすごいですね」


  うわっ、多分ちょっと引かれちゃったよ……。


 ギャルゲーだったらもうおしまいだよ、ゲームオーバーだよバッドエンドだよ。


 全く気にしない幼少期の俺、そしてそんな痛い園児にも寛大な心をお持ちのユン。


 既に大きな差が……。


「こことここが少し違う気がします」


ユンは俺の隣で中腰になると絵に指をさした。


「ナスカの地上絵かけるの?」


「ふふっ、まさか、なんとなくですよ違和感ってやつです」


  俺は最後の線を書き終えたのを確認してふと昔のことを思い出した。


 そう、この時志保と美代と俺であの真っ白な世界に連れてかれたんだっけ……。


「うわぁ!眩しい!」


「きっぁ!」


  書き終えた途端、急に光り輝き始めたんだよな……。


  そして再び場面が移り変わる。


 本当になんなんだこれ?


 スライドショーのように場面が移り変わって。


 頭もふわふわして上手く回らないし。


 ただその映し出される妙にリアルな光景に目が奪われる。


 そこはいつもの真っ白な空間だった。


 「なにここ?」


 「怖いです雪さん」


 くそ!あんな幼くて可愛い女の子に手を握って貰えるなんて羨ましい園児だ!ぶっ飛ばしてやりたい。


 その後のやり取りは俺があの時変な絵を描いてしまった時と同じことをしていた。


 けどおかしい。


 俺と一緒に居たのはユンだったのか?


 そもそも俺とユンって幼馴染だっけ?


 この空間は過去の記憶?


 よく分からない。


 視界にもやたらモヤがかかってるのか?


 ピントが全然合わない。


 すると再び視界が真っ白になる。


 またかよ。


 「……さん……雪さん!大丈夫ですか?」


 俺はゆっくりと目を開けるとそこはまたグレーの世界。


 場面がどんどん移り変わる所為で頭がパンクしそうだ。


 けど目の前にいるユンは水着姿で一気に元に戻ってきた。


  「う、うん……大丈夫、ちょっと頭が痛いけど普段に比べたら問題ないから」


 ユンはふらつく俺の身体を支えてくれた。


 ピタッと触れる肌の感触が夏場なのにとても暖かくて柔らかくて……。


 ありがとうございます!


とりあえず辺りを見渡してみたが……。


  昔の事であまり覚えてはいないがまだ小さい頃でよく意識はしていなかったのか明らかにこの世の物とは思えない世界が……歪んだような場所に俺とユンはいた。


 さっきから何度も場面が移り変わってるし。


 と言うかなんで俺はこんな場所に居るんだっけ?


 学校は?志保や美代もどうしてるんだ?


  「雪さん、ここは一体……」


  不安そうにしているユンはめちゃくちゃ可愛くてここは俺が男らしいところを見せなくては!


  「大丈夫、俺がいるから安心して……日常生活で命かけてる男だから」


  「雪さん……それは確かに説得力ありますけど……」


  そう……俺は普段から刃物を持った二人組に毎日追いかけられているのだ、それに比べたらこんなところ……。


すると突然どこからともなく声が聞こえてきた。


 それはいつものあいつの声じゃない。


  「あなたは今、生涯、解けない呪いの絵を描いてしまったのです。彼女の性格はメンヘラかヤンデレと化し、あなたを困らせ続けるでしょ……」


  うん?どうして喋るのやめたの?


  突然声が止まると謎の声は軽く咳払いをした。


  よく聞くと女性の声だな〜しかもめちゃ幼女な気がする……。


  あくまで気がするだけだからね?本気にしないでね?


  「またあなたですか……」


  なんか呆れてるんだけど!?


  「そんなに呪いの絵をポンポン描かれると困ります」


  「……なんか、すいません!」


  そう、まずは謝ることが大切……これは実体験の話だ。


  今度志保と美代の取り扱い説明書でも販売しようかなぁ〜。


  【メンヘラとヤンデレの取り扱い説明書!これであなたも五年は生き残る!】


 割と短いな……フリマかヤフオクかな〜売るとしたら。


  「お、おほん……まあ良いでしょう」


  幼女は再び真面目そうな声を出し始めた……幼女確定してるんだ……。


  「再び描いてしまったあなたにはペナルティーを与えます」


  え?まじで?てか、そもそもなんで俺はまた呪いの絵を描いたんだっけ?


 記憶がごちゃごちゃしてきた。


  「ペナルティー……ですか?その内容は一体どのような……」


  「羽方 ユン……あなたには特に危害を加える気はありませんでしたが来てしまったからには仕方がありません悪くは思わないでください」


おっと……なんだか……。


  俺は少しめまいがしたが、息を飲むと幼女の声を黙って聞いていた。


  「前回メンヘラとヤンデレにした彼女達の記憶を変えさせてもらいます」


  「うん……」


  幼女の声……幼女の声……あれ?今なんて言ったの?


  俺はユンの顔を見ると両手を口に当て驚愕していた。


  「そ、そんな事って……この呪いを解く方法はあるのですか?あれ?でも雪さんにとってはありがたいことなのでしょうか?」


  必死に何かを訴えているユンを俺はただ見つめていた……。


  やばい……なんだか頭がくらくらする。


  「お願いです……ふた…………」


 志保……美代……。

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