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当ててんのよ!

 

 スマホの画面に表示された短い文章。


 俺はそれをただじっと見つめる。


  何度みてもこれだけの本文……本来、高校生にもなればあれ?もしかして俺って告白される?みたいな事を想像するだろうが俺の場合は違う。


  そう分かっている……これ以上は何も言うまい。


 こんなにも手元が震え身体中から噴き出る汗を見れば、俺が何を言いたいのかよく伝わると思う。


  そんなわけで俺は隣でルンルンとしている志保と一緒に教室へ向かっているが……。


  俺が学校に行く意味ってあるの?それって命かけるほど重要なの?


  俺は笑顔でスキップしている志保を見ると綺麗な黒髪に赤く澄んだ瞳……つい見惚れてしまった。


  身軽な足取りのステップを決めるたびに揺れるスカート、太ももは細めであの絶対領域を見るためなら俺は命を惜しまない。


  「な、何こっち見てるのよ!別に嬉しくなんかないんだからね!」


  俺の目線に気づくと敏捷な動きで両腕をクラスさせて胸のラインを隠す。


 べ、べべ別に!ちょっと命掛けて太もも見ようとか思ってないし!


  てか!どうしてこんなにデレたんだ?ヤンデレからツンデレに変わってるぞ。


  それに今の発言は……俺のドストライクすぎる!


  下手したら痛恨……いや!会心の一撃まで行ってしまうかもしれない……いや!いや!落ち着け俺!こやつの本性は言うならば狂人。

 

  目的の為なら犠牲を払ってでも、例え女子供でも容赦しない!


  そして……これから待ち受けているのは血祭り。


  「はぁ……」


  ため息が止まらない。


  やっとの思いで学校に着いた。


  面接やら説明会やら含めてもまだ数回しか来たことのないこの学校。


  万が一の為に偏差値低めにしといたのになぁ〜まさかそれが裏目に出るとは……。


  俺はケータイをバックにしまうと一年B組の掛け札を見た。


  ううっ……最後にギャルゲーの攻略でもやっておけばよかった……コミケとか人生で一回も行ったことなかったし。


  俺は重い足をなんとか教室のドアまで運んだ。


  まだ朝早い段階なので静まり返っている教室には多分、美代が1人でいるだろう。


 この扉を開けてしまえば俺は死ぬかもしれない。


 こんな思いをしながら後ろの扉を開ける奴がかつて居ただろうか?いや!いないね!


  ゴクリ……


  俺は息を飲み込むと教室の扉を開けた。


  「どわぁ!」


  すると俺は急に抱きつかれて教室の外に押し倒された。


  そこには涙目で俺のことを見てくる美代がいた……見つめ合う瞳はやがて黒いオーラをまといはじめてる。


  「なんで美代の気持ちが分かってくれないの!?こんなにも雪くんのことが好きなのに……ねぇ……こんな世界やめて2人っきりになろうよ!」


  涙目で薄く微笑む美代の顔はまさに人殺しを何度も経験したことがあるような……。


 涙を流しながら俺の耳や喉元を優しく触る。


  いやぁー!!!!俺はまだ三途の川を渡りたくない!


  「待ってくれ!昨日返信出来なかったのには訳があるんだ!」


  俺はとっさにそんな事を口ばしってしまった。


  「ぐすん……なに?返答次第では仲良く一緒に屋上から飛び降りるけど?」


  そんな可愛く首を傾げても俺は飛び降りたくない!あ……でもこんなに可愛いなら……いかんいかん!容姿に惑わされてはいけない。


  ぐいぐい押し付けてくる美代の下半身に俺のお腹は幸せで仕方ないのだが……息子の方がヤバイ……。


  くそっ!こんなあざとい眼差しで俺を見てきやがって!ありがとう〜ございます!


  っておい!茶番してる場合じゃねえって!


  それに返信出来なかった訳がお前らが怖かったなんて言える訳ないし……。


  どうする俺!


  俺の心臓はどんどん加速する。


 それは美代が決して可愛すぎるからとか、ちょっとだけ胸が当たってるからとか、太ももと股の間をお腹に擦られてるからとかそんなのじゃなく、死にたくないからだ!


  ……いや本当だよ?


  「実はお前らに久しぶりに会えたから色々考えてたんだよ……急に会えなくなったし……雰囲気も変わってたし」


  とっさに出た言葉がこれだった。


  いやらしい意味じゃないよ?どう殺されないか対策を練っていたんだよ?


  しかしきついか?これじゃこいつらを納得させることはできないか?


  すると2人とも顔を見合わせてなるほど〜と理解してくれたようだ。


  「つ、つまり雪くんは夜に色々と考えて溜まっていたと……そして私をお、おかずに……変態なのね……でも雪くんが望むならそれなりの……」


  おい待て、志保は何か勘違いしてる、昨夜のおかずは豚肉の生姜焼きだからな!


 温かい家族と雫と一緒に食べた豚肉の生姜焼きだからな!


  「気持ちよかった?美代の成長した姿を見て想像してすごい激しいプレイとかしたんでしょ?声とかいっぱい出たよね?」


  おい待て!死ぬ!お前らが可愛すぎて死ぬ!胸が当たってる!幸せ!……じゃなかった死ぬ!


  お、落ち着け俺!このバカ!美代も手をしごく仕草をするんじゃない!志保も頬を赤らめるな!


 「ち、ちょっと待て!二人とも勘違いしてるって!」


 「「はぁ?」」


 ひぃ!!


 二人のドスのかかった声がハモる。


 「じゃあ何?私への返信が無かったのには別の理由があるって事なのよね?もし私を納得出来るような理由じゃないなら雪くんが二度と妄想で気持ちよくなる事は無くなってしまうのだけれどそれでも構わないかしら?」


 そう言って四つん這いになってる俺のちょうど股の部分に鋭利な何かが突き刺さる。


 姿形は美代が正面に居るせいで分からないが間違いなく包丁だと俺の直感が訴えかけてきている。


 「雪くん?美代へのエッチな妄想じゃないならなんで返信してくれなかったのかな?このままだと美代のここに当たってる雪くんのはらわたがこんにちはしちゃう事になるけど大丈夫かな?」


 「エッチな妄想してました」


 くそっ!なんで学校の廊下でこんな事言わされてるんだ!


  俺はなんとか理性を保って自分の席に座った。


  カーテンがなびくとそよ風が教室の空気をガラリと変える。


  よく考えたら俺ら3人が同じクラスなんて奇跡だよな……。


  なんとか俺は朝、学校にたどり着き生き残っていたがこれからこんな事が毎日続くとなると……。


 ん?


 こんな事が毎日続くとなると俺はどうなるんだ?


 あっそうか。


  「やっぱ遺書でも書こう」


  俺は心の中でそんな事を思ってしまった。


  まだ学校が高校生活が始まって2日目なのに……。

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