それなら私を帰して欲しい。
めんど〜な事になっちゃったなぁ〜。
よく分からないけどサッカー部のエースに野球部のエースとテニス部のエースとか他にも沢山来てるみたい。
なんか色んな部のエースが来てるみたいだけど何故か帰宅部の私まで参加する事になってる。
早く帰ってお風呂掃除してお兄ちゃんのご飯作らなきゃいけないのに。
「……殿ー!」
「……くん!」
あれ?今茂みの方で何か声が聞こえた気がする。
後ろを振り向こうとするけど金髪の人が私の視界を塞ぐ。
……邪魔なんだけど。
「雫ちゃんって本当に良いよね!目元のとか凄い綺麗!今日は俺がなんでも奢るから任せてよ!」
「おいふざけんなよ!雫ちゃんの分は俺が奢るって話だったろ!今日はバイト代半年分持って来てこれ全部雫ちゃんにあげようと思ってたんだぞ!」
……めんどくさ〜早く帰りたいのに。
それに……。
私はチラッと数名来てる女子達の方に耳を傾ける。
「あの子ばっかり……どうして男子って馬鹿ばっかりなんだろうね〜」
「本当……つまんないなぁ〜あんなの絶対ぶりっ子してるだけなのにね〜」
「私バレー部のエースなんですけど!なんでこんな除け者扱いされなきゃいけない訳!?顔だってそこそこ良い方だし身体も結構引き締まってる方なんですけど!?」
ああ言うのが一番めんどくさい。
大半の名前も分からないから声掛けようにも困るし。
「雫ちゃん!カバン持つよ?重いでしょ?」
「いえ……それより柔道部と空手部は居ないの?」
「あ〜その辺の汗臭い連中は呼んでないんだよね〜クールに欠けるっていうかさ?分かるでしょ?テニスとかバスケとかと違ってなんかね?」
はぁ……せめてその辺が居てくれればと思う。
「そっか、今日用事あるから早めに切り上げたい」
「もちろん!雫ちゃんの大切な時間を奪おうなんて思ってないから安心してくれ!」
既に奪ってる事に気づいて欲しいよ。
と言うか他の女子達の目線を彼らは気づいてあげて欲しいよ。
街中の商店街の雰囲気は凄くいい。
客引きに声を出すいつもの街並み。
美味しそうな匂いが充満している。
今日の夜ご飯もついでに買っていこ〜。
「雫ちゃん!この先にデパートがあるんだ!好きなの買ってあげるよ!」
「俺もお年玉持ってきたんだ!」
それは使えないよ。
「それじゃあお言葉に甘えて」
私は一週間分くらいの食材を手に入れた。
よく分からないけどラッキー。
浮いた分は私のお小遣いにしよっと。
「あ、あれ?思ってたより家庭的なものを買うんだね……だがそこもいい!」
「本当男子って馬鹿だね〜あんなに家庭的な子がいる訳ないじゃない、アピール乙」
「私もアクセとか欲しいんですけど〜」
擦り寄る女子達に嫌そうな顔をする男子達。
すると男子がヒソヒソと会話を始める。
「お、おい数合わせで呼んだあいつらもう帰していいんじゃないか?普通に鬱陶しいんだが」
それなら私を帰して欲しい。
「あのさ〜ちょっと女子だけで話あるから雫ちゃん借りてもいい?」
「えっ?なんで?」
うわぁ〜嫌な予感する。
ニヤニヤとこちらを見る女子達。
数は五人。
全員スポーツ経験者だけど。
「私は大丈夫だから荷物だけ持ってて」
私は両手に抱えてた袋を男子達に預けて女子達の後を追う。
しばらく経つと人気のないいかにもなところに連れてかれた。
知らないって怖い事だと思うんだよね。
まぁみんな自分の事でいっぱいなんだろうけどさ。
「あのさ〜あんま調子乗んなよ?あんな馬鹿どもにちょっとチヤホヤされて浮かれててキモいんだけど」
「はぁ……」
呆れてため息が出てしまう。
「てかその見下してるような目がムカつくんだよ!帰宅部で特に何もしてないくせに!私たちは普段から鍛えてるからあんたみたいなか弱いし女子なんて簡単に壊せるんだよ?分かってんのか!」
「まぁまぁやめてあげなよ〜怖くて声も出せないみたいだよ〜泣いちゃうんじゃない?」
甲高い笑い声が上がる。
下品な笑い方で嫌い。
「まぁいいや〜実はさっき知り合いの女子何人か呼んであるんだよね〜み〜んな身体もあんたより大きくて強い子達だよ?怖いよね〜震えちゃうよね〜」
「馬鹿な男子達にはあんたはおしっこ漏らして帰ったって伝えとくから〜あとこれから学校でも覚悟しておいた方がいいよ?」
そう言って女子達は距離を詰めてくる。
あんま服汚したくないんだよね。




