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そしてこの豚をチャーシューにして美味しく二人で食べましょ


 次の日俺は早速ユンの事を聞き込みしようとクラスに行こうとしたのだが、厄介な二人組が何しに行くのとか明日の事についてだとか、新婚旅行の話だとかでなかなか先に進めなかった。


 ……。


 新婚旅行の話って何!?俺まだ結婚してないんだけど!?


 気がつけばもう放課後になっていた。


 タイムリミットはまさかの明日に迫ってきている。


 明日になれば俺は死ぬ。


 突拍子に来る死よりジワジワと迫ってくる方が怖い。


 正直焦る。

  

 だが周りの人達はそんな事お構いなしに普段の生活を送っている。


 今も週間の図書委員の仕事中だ。


 ここは物静かでいつもなら落ち着くのだが今日に限ってはその静寂も俺の脈打つ鼓動がやたら強調されている。


 最近の人は本を読まないのか利用率はかなり低い。


 まぁ電子書籍とかあるしそもそもこの娯楽で溢れている現代に本を読むなんて人は少なくなってきてるのだろう。

 

 お、そういえば今日このすばの最新巻発売日か。


 この図書室にも来週には置かれるみたいだし楽しみだなぁ。


 「そういえば雪く〜ん、ユンの噂聞いた〜?あんまクラスに馴染めてないみたいだよ〜今この読んでる僕は親友が少ないのヒロインみたいだね〜」


 「そうらしいわね、全く……どうして人間って自分より優れた生き物を見ると同じレベルの人間同士で集まって排除しようとする習性があるのかしら……嫌になるわ」


 うんうん、凄くいいこと言ってるんだけど。


 なんで志保が図書室に居るんですかね?


 いや、図書室自体に居るのはいいんだよ?


 けどここ!


 カウンターだから!


 ついでに美代も今日は担当じゃないから!


 「あの……流石に三人も居ると狭いんですけど」


 俺は肩がつくくらい近い距離にいる二人にそう言うと。


 「あら……だ、そうよこの中で一番肉がついている誰かさんが面積を取っているのだから早く出て行きなさいな、前だけじゃなくて横にも広いだなんて可哀想ね」


 「は?……雪くん雪くん、志保みたいな電柱スタイルが美代の事僻んでてかわいそぉ〜電柱は電柱らしくお外で立ってれば?」


 あ〜嫌だなぁ〜この距離で喧嘩されたらいよいよ死ぬなぁ〜。


 俺を挟んで睨み合う二人。


 もう火花とか散ってんじゃないかなってくらい睨み合ってる。


 「え、えっとさ……二人ともユンってどう思う?いや、深い意味はないんだけどさ俺から見ると可愛くて素直な女の子だなぁ〜って思うんだけど」


 「「あ?」」


 二人の背筋が凍りそうな冷たい声がハモる。


 分からない……一体何が二人の琴線に触れてしまったのか。


 「あの猫被りの金髪野郎がどうかしたのかしら?私的には良く人前であんなに甘噛みしたり可愛くメス声を発声出来るか不思議で仕方ないのだけれど雪くんまさかあんなのに惑わされてる訳じゃないわよね?」


 俺は高速で首を縦に振る。


 「美代は〜自分の事を棚に上げてる電柱スタイルさんよりはユンの方がましだと思うんだよね〜あんなに人前でメス声上げたり雪くんに甘噛みしまくってるくせに……クスクス、冗談で言ってるのかなぁ?これってウケ狙ってるんだよねぇ?クスクス……」


 口元を押さえて煽るように顔を志保に近づける。


 もちろん間に俺がいるのでガッツリ乗っかってきてありがとうございます!


 ……ってそうじゃない!俺の命がやばいだろ!ありがとうございます!


 いつも思うけどどうして女の子ってこんなに柔らかいのだろうか。


 これは美代に限っての話なのか?体温もいつも高い気がする。


 「やっぱ太ってるからぁあああ!!!!」


 俺はこの場が図書室だと言う事も忘れて大声で叫んだ。


 俺のシャイな息子が今潰れる寸前に!

 

 「雪くん?雪くんの雪くんを無理やり大きくするために美代が手伝ってあげる、男の子ってこれを握ってあげれば大きくなるんでしょ?」


 違うわ!それは握ってるんじゃなくて握り潰してるんだよ!いぃだぁぁ!!


 「ふふっやっぱ雪くんもそこの豚足が太ってるって思ってたのね、豚は早く養豚場に行けば?あなたいい母親になるわよ無駄にでかいから豚に沢山ミルク飲ませてあげられるんだしクスクス」


 「あ?」


 いだぁい!いだぁい!やめて!もう血管止まってるって!絶対青く腫れてる!


 「雪くん、美代はこの電柱とちょっと話があるから退いてもらっていいかな?」


 ようやく俺の息子から手を離しニコニコと笑う美代。


 女の子にはこの痛みが分からないだろうが本当に痛い!呼吸が止まるくらい痛い!


 「雪くん、後で私が雪くんの……その……あれがちゃんと大きくなるか確かめてあげる!そしてこの豚をチャーシューにして美味しく二人で食べましょ!」


 照れながら言うな!俺も自分の息子が無事か不安なんだから!


 「二人ともほどほどにな……後鍵かけて返しといてな」


 俺は息子を抑えながら図書室を飛び出した。


 後ろからは何やら物凄い音がするが一目散に男子トイレへ。


 ちゃんと息子は無事でした。


 ーーーー


 「あの〜ちょっとだけいいかな?」


 俺は女性に話しかけるのが大の苦手なので幸薄そうなメガネ君に声をかけた。


 特に胸が大きいショートヘアーの子とか黒髪ロングヘアーの貧乳の子とか見かけると身震いしてしまう。


 「はぁ?拙者に用事ですかな?」


 変わった一人称だな。


 聞く相手間違えたかな?


 「ユン……羽形ユンって子知ってる?彼女がクラスだとどんな感じなのか聞きたくて」


 流石にユン呼びだと馴れ馴れしいだろうからフルネームで呼んだ。


 なんか嫉妬とかされそうで怖いし。


 「そうですなぁ……あまり誰かと深く関係を作ろうとはしないですなぁ、もちろん声をかければ丁寧に答えてくれますが……やはりお嬢様というのは近寄り難いのではないんですかなぁ〜」


 意外にスラスラ話せる人だな。


 まぁそれは置いといて。


 やっぱそんな感じなのか。


 「今日見かけないけどもしかして休み?」


 「らしいですな、なんでも体調不良とかではないらしいでござるが」


 今日は休みか……。


 第一来てるならいつも通り俺たちのところに来るだろうし。


 今日でユンの事をなるべく把握して明日解決しよう。


 色んな人に聞いて回って情報を得て答えを導くんだ。


 「なんか困った事とか悩み事とか言ったりしてなかった?」


 「さぁ……拙者には縁もゆかりもない人ですからなぁ……力になれず申し訳ないでござる」

 

 なんだろうこの人。


 すごく良い人に見える。


 「ありがとう、助かったよ」


 「いえいえ、困った時はお互い様でござるよ、また何かあったら声をかけてくれれば力になりますぞ」


 俺はメガネ君に礼を言ってその場を後にした。


 めっちゃ良い奴だったなぁ。


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