家族なんだし
俺は結論から入るのが結構好きなタイプだ、だから終始を伝えるが終わりから入ろうと思う。
結果的に妹は許してくれた、しかもあっさり。
俺が悩んで時間は無駄だったのか……。
俺が母親の誕生日プレゼントの話題をした途端「なんだ……覚えてたんだ」とかボソッと呟いてそのあとはいつも通り食事もしたしお風呂も一緒に入ったしシングルベッドで一緒に寝た。
……嘘です、最後の方は捏造です。
つまりは妹は俺と一緒に母親の誕プレを選びたかったらしく俺は母親の誕生日を覚えていない親不孝者だと思われていたらしい。
確かに妹が必要以上に親へ気遣うのは分かるがそんなに感詰める必要はないと思う。
家族なんだし。
「ううん、そんなことない……親に感謝するのは当たり前の事だよ」
妹は何故か俺のベットの上で寝っ転がりながらそう言う。
なに?坂本クリニックなの?0120-1079で始まっちゃうの?
これって地方CMじゃ無いよね?
「でも、まぁそうだよな……時々不愉快にさせられるけど、感謝は心のどこかで必ずしなくちゃいけないよなぁ」
ため息混じりにそう言うと妹は転がりながらウンウンと頷いていた。
あの……シワになるのでやめて下さい。
「別に常日頃から感謝しろとは言ってないんだよ?ただ年に一度の……その人の産まれた大切な日くらいは感謝するべきだと……そう思わない?」
スッと上半身だけ起こすと面と向かって俺の顔を見つめる。
いつものポニーテールが軽く靡くと優しい表情の中にはどこか真剣さを感じさせる目力の様なものを受け取った。
妹は普段はだらけるけどこう言うところは真面目で大真面目だ、だから誰からにでも好かれるし基本間違ったことはしない。
だから妹は家族に愛されるし妹も家族を愛してる。
思いは片入れだけじゃないって事だ、優しくしてくれたから好きになるわけだし、何かしらの形で思いを授けている。
「そうだな、今回はお兄ちゃんが一方的に悪かった……ごめん」
俺は頭を深く下げ両手をついた。
するとその柔らかい人差し指は俺の頬をなぞり優しくさすった。
「良いよ、許してあげる……だってお兄ちゃんだもん、今週の土日は空けといてね?」
俺は黙って頷いた。
ってことはあれ?
「つまりお土産リストって……」
「うん、特に欲しい物とかは書いてない……ただ意味深にお母さんの誕生日の日付だけ書いといた、そしたら嫌でも気になるでしょ?」
確かに印象には残るけどさー。
そこまでしなくても……。
「お兄ちゃんはダメダメだからね〜」
息混じりの柔く掠れた声でそう言うとベットから立ち上がり部屋のドアノブを回した。
「じゃあお風呂入ってくるね〜」
ガチャっと扉が閉まると俺はゆっくりと顔を上げてベットの白いシーツを見つめた。
その淫らになったシーツ上のシワは何か違和感を感じさせ俺は怪訝そうな表情で睨み考察した。
お風呂に入ってないってことは汚れた服のまま俺のベットの上で坂本クリニック決めてたって事?
これはいいように宣伝させられているのか?
そんなわけ無いですね自意識過剰でした。
妹がゴロゴロしていた布団に腰をかける。
……いや、俺のベッドだからいいでしょ?なんでもいですか?そうですか。
本当に鍵を手に入れて使用できたのだろうか?
あの神様的な人にもう一度あって聞きたいことが沢山あるのに。
あの人はいつになったら出てくるのだろう?
それにあの人が救えって言ってきたユンだけど……。
なんか妙に違和感あるんだよなぁ。
懐かしいっていうか。
それに妹もちょい違和感を感じる。
なんなんだろう。
妹に関しては隠し事をしてるって感じがする。
いつも通りなのは志保と美代だけだ。
あの二人はいつだって自分のペースを崩さないからな。
もう一周回って安心感すら与えてくれる。
実際与えてくるのは恐怖と死なんだけどね!
まぁそれは置いといて。
もっと確信的部分に触れていきたい。
やっぱあの人に会うのが最も真実に近づける気がする。
どうすれば会える?
適当に絵を描けば会えるのか?
けどあの人に関しては俺から会いにいったってよりは向こうから無理やり引き寄せたって感じがする。
クレープにチョコなんかなかったし。
辻褄合わせの為に強引なやり方するようなタイプだしな。
一体どうやったら会えるのだろう。
俺はシワのついたシーツの上でそっと目を閉じた。




