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ありがとう……そしてさよなら

 

  眩しい朝日がカーテンの隙間から入り込んでくる。


 重い瞼はなかなか開かず身体も重い。


 何度も寝返りを打ちようやく意識が戻ってくる。


  「うぅ……あ〜あっ〜……眠い……」


  体をぐっと伸ばすと部屋の時計を確認した。


 はっきりと焦点が合わない視界の中でも時針が6時を刺しているのが分かった。


  「ふぁ〜あ……もう6時か〜顔でも洗ってこよ」


  寝ぼけながらも俺は洗面所で顔を洗いフラフラっと妹の部屋へ向かった。


  ギシギシと歩くたびに廊下が軋む音がする。


 結局昨日の夜は寝つくまでに時間がかかった。


 窓の外から視線を感じる。


 目を開ければもう目の前に居るんじゃないかと。


 そのまま震えた身体を布団にうずくまって何時間も過ごす羽目に。


 子供がお化けに怯えるのと一緒だ。


 部屋の前には可愛い妹の部屋♡の壁掛けが吊るされている。


 確かに顔も可愛いし中身もちょっと思春期で毒舌なところを除けばまぁ悪くないスペックだとは思うが。


  「妹よ〜もう朝だぞ〜そろそろ起きてくれないとお兄ちゃん朝ごはん抜きになっちゃう」


  妹には雫と言う名前があるがなんだか照れ臭くて妹と呼んでしまう。


  呼んでもノックしても返事が返ってこないので俺はゆっくりと部屋を開けた。


  「入るぞ〜……うわっ……なんてだらしない格好だ」


  部屋は雑誌やらなんやらで散らかりベットから転げ落ちながらも布団を抱いて寝ている。


  こいつ抱き癖なんてあったのか……普段の強気な姿勢とのギャップがまぁ一部の層に刺さりそうだ。


 いつもまとめ上げられているサラサラの髪の毛が今は開放的に布団の上を散らばっている。


  俺は妹の体を揺するとどうやら目を覚ましてくれたようだ。


  「むにゃむにゃ?……あぁ……あれどうしてお兄ちゃんが私の部屋に?襲いにきたの?それとも襲いにきたの?寝ている妹の顔に朝から一発ぶっかけてやろうぐへへなんて考えてたんでしょ?流石にそんな朝から付き合いきれないよ」


  「おい、付き合いきれないのはこっちだ、なんで目が覚めてお兄ちゃんの顔見てまずぶっかけられるなんて発想になるんだよ、まじでやるぞ」


 俺は寝っ転がってる妹の前に立ち腰に手を当てる。


  すると妹は体をぐっと伸ばすと目をこすりながら部屋を出て行った。


  「いま朝ご飯用意するから待ってて、お兄ちゃん」


  スルーかよ!まぁいいけど!


  「はいよ」


  仏頂面で相槌を打つ。


  そういえば俺も制服に着替えなくては。


  自分の部屋に戻り制服を取り出そうとタンスの取手部分に手を伸ばし俺の指先はそこで硬直する。


 そういえば昨日の夜タンスが妙に揺れてた気がするけど気のせいだよな?


 震える指先でとりあえずタンスを開け制服を取り出し着替え終えると深い深呼吸を何度もした後にカバンを取り出す。


  カバンの中を開けるのが怖かったが俺は思い切ってケータイを取り出すと本来、緑色のはずの通知ランプが赤く染まっているように見えた。


  「怖い!なにこれ!?」


  俺は恐る恐る受信ボックスのところを指でタップすると+999と表示されていた。


 なんだよこれ!しかも志保と美代両方とも1000以上の通知が来てるって!


 俺は口元に手を添える。


 そうでもしないと今にも恐怖で叫びそうだからだ。


 これの恐ろしいところは最低でも999件以上って所だ。


 下手すると5桁……あるのかもしれない。


 俺は口元に当てた手はそのままスマホの持っている手の親指でそのままスワイプしていく。


 いいのか?今更になって既読をつけても。


  本文を確認すると……


  【もしよかったら明日一緒に学校へ行かない?

  2人で話したいことがあるの 志保より】


  俺はさらに下へスクロールすると……


 【もしかして忙しいのかしら?お風呂と食事中なら仕方ないわね、もし仮に意図して私を無視しているなんて事があるのならきっと次からは速攻でメールの返信が出来るように調教してあげるから覚悟しておきなさい】


 俺はさらにさらに下へスクロールすると……


  【ねぇ?どうして返信してくれないの?もしかしてあなた……いま別の女といるの? もしそうならその女とはもう二度と会えないから最後の言葉を交わしておきなさい……ちぃ!厄介な女が現れたわね……軽く殺して来るから続きは後で】


 もう親指が汗でびしょびしょになりそれがスマホの画面にも伝わっているが俺はさらに下へとスクロールすると……


 【今から会いに行くからぁ!待っててね!】


 【殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す】


  「いゃあー!!!!!」


  俺は頭を抱えながらその場でうずくまった。


  思わずケータイを放り投げる。


  落ち着け俺……なにがまずいかってこれの他にも志保だかじゃなく!美代からもメールや電話がきているところだ……あぁ……命なんて元からなかった。


 行きたくない!行きたくない!生きだい!!


 きっとロビンもこんな気持ちだったんだろう。


 「お兄ちゃん……ついに頭が……」


 「あはは!あははは!!」


 「お母さん!お兄ちゃんが壊れた!」


  誰か……誰でもいいから助けてください。

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