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なんでオペラ?

 

  授業を終えた後俺たちは放課後に何処か会話が可能な安息の地へ赴いた。


  いや……俺に安息の地など存在するのだろうか?答えは残念ながら否。


  中学の三年間もほとんど嫌な思い出続きで小学校も志保と美代にいじめられる日々。


  高校に入れば変わると思えたが再び志保と美代に再開し殺されかける日々。


  そっか〜俺は今まで平和な日々なんて一秒もなかったんだ〜はははっ!


  思わず自問自答で一人泣きしてしまいそうになったが俺は何とか歯を食いしばり涙を堪えた。


  基本学校が終わるのは十六時、移動時間を考慮しても十九時までに帰れば良いと思う。


  約三時間近くも相談に費やすことが可能なのだ、これならグッドアイディアの一つや二つくらい思い浮かぶだろう。


  だんだん日が沈み始めるのがゆっくりとしていく事に実感する。


 まだこんなに明るいのか。


  さて……わざわざこんなところに来たのには理由がある。


  誰にも会話を聞かれることなく騒いでも問題ない!(主に志保と美代が)


 ユンはその辺弁えしてるし。


  「あれ?ここって……」


  志保とユンはイマイチピンと来ていないようだったが美代は性格や対人関係上何度か来たことがあるだろう。


  「そう、カラオケだ!ここなら誰に見られるわけでも聞かれることもない、完全な閉鎖空間だ!」


  まぁ学生という身分で女子とカラオケに行きたいっていう不順な動機も全くないわけではないが、何ならいつでも妹と一緒に行けるし?でもまぁそう言う事だ。


  ーーーー


  志保の表情は鋭いままだったが警戒心ありつつも素直に店内へ入ってくれた。


  部屋は四人にしては広すぎるくらいスペースに余裕があり、初めは部屋を明るくしていたが暗い方が気分が出ると言うことで、今は画面の明かりと他の僅かな光のみが視界を確保してくれている。


  と言うか何の気分だよ……俺とか超気まずいんですけど……こんな贅沢なこと味わったら後で天罰下りそうで怖い。


  ユンはマイクのスイッチを入れ優しく甘い音色であっと声を出す。


  「すごいですよ!声が部屋中に響いてます!」


  その息混じりの優しい声は美代と志保の癇に障ったのか二人ともむすっとした顔をしていた。


  あ〜二人ともあいつ歌うまそうだなって直感で感じちゃったやつですかね?何故か天才は天才を見分けるのが上手い。


  その後もユンは好奇心旺盛で機材やら何やらを適当にいじくりまわして完全に今日の本題を忘れている様子だった。


  ユンに本来の目的を思い出して貰おうと気を引いていたが興味が尽きる事はなくついには一曲だけ歌う事になってしまった。


  それに続き志保と美代も歌い始め何やら勝負事にまで発展しそうな勢いだ。


  三人とも歌い終えると俺は苦笑いで拍手を送り話題を今日の本題へと促そうと試みた。


  でも映画見た後とかってずっとその話題が続くのと同じで一番インパクトのあった記憶が話題になってしまうのは必然的だ。


  つまりは余韻に浸っていたいのだ。


  「どうでした?私の森のクマさん!子供の頃よく歌っていたんですよ!」


  いや……確かに上手かったけどなんで童謡なの?あれだよね?まさかJ-POP知らないとか言わないよね?


  「あなたの歌声は遅すぎて正直イライラしたわ、それより雪くん?私の荒城の月はどうだったかしら?前音楽の授業で歌ったのだけれど」


  いや、なんで滝廉太郎なんだよ、もっと他にあるだろう。


  「美代の奏はどうだった?友達と行くとき歌うと結構盛り上がるんだよね〜」


  確かに!確かにみんな上手いよ!でも大切なこと忘れてるよね!?


  まずいな……。


  これじゃ二の足を踏んでしまっている、三人ともこれじゃ手につかない状態で会話を交えることになってしまう。


  「そうだ!私から一つご提案があるのですがよろしいでしょうか?」


  ユンはそう言うと俺たちに視線だけ送りコホンと咳払いをした。


  「今から私たち三人が一曲ずつ歌います」


  え?まだ歌うの?!せめて知ってるアニソンとかならまだしも……。


  するとユンはテーブルの上に置かれたデンモクを手に取りある場所に指を指す。


  「ですがこの採点機能を使って一番高かった人が雪さんと二人っきりになれる……と言うのはどうでしょうか?」


  ニッコリと俺に微笑むユン。


  それとは対照に何か恐ろしい笑みを浮かべた二人組。


  いやー!ほんと勘弁してください!ユンなら良いけど!この二人と密室はダメ!ダメダメ、ダメ!


  「ちょっと待っ!」


  「雪くん!?私たちの勝負にけちつけるつもりじゃないわよね?これは女同士の戦なの!分かってるのかしら!?」


  ものすごい眼光で睨みつけてくる志保。


  それ以上喋ったら殺すわよ?的な視線を送ってきたため俺は敏捷に首を縦へとふった。


  「美代もそれで良いよ〜、きゃは♡あ〜んな事やこ〜んな事を公共の場で出来ると思うと……きゃ♡そこは駄目だよ〜」


 駄目なのは貴方ですよ美代さん。


 駄目だこいつ早くなんとかしないと。


  三人ともすっかりやる気満々で志保なんか発声練習始めちゃってるよ。なんでオペラ?


  今日は会話が進みそうにない。

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