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おかしい!フラグは回避出来てなかったのか!?

 

  なびくカーテンに窓の僅かな隙間から差し込む朝日。


  その部屋はいつも変わらずその時を迎える。


  まだ俺は覚めきっていない調子を徐々に戻して行った。


  眠気まなこを擦りながらダラダラパジャマを脱ぎ捨てて学ランに着替える。


  まだ怒ってるかな?朝苦手な妹だし起こせば少しは機嫌そらしてくれるかな?


  隣の部屋に向かうとそこには人影はなくただ淫らになっているベットと雑誌やら何やらが適当に放り投げられていた。


  うわぁ……荒れてんなぁ……。


  少し引き気味になりつつも一階のリビングへ向かう。


  物音一つしない我が家は朝の早い両親がいない事に違和感はなく朝の遅い妹がいない事に違和感でしかなかった。


  先行ったのかな?朝ごはんは置いてあるし、顔を合わせたくないのだろう。


  綺麗にラップで巻かれた卵焼きとウインナーの王道な朝食メニューに鍋の中には暖かい味噌汁が入っている。


  一人寂しく朝食か……トホホ。


  もう怒ってる事は自明の理なのだがこれでどのレベルの怒り具合なのかはっきりしてしまった。


  これは一ヶ月近くは口聞いてくれませんな。


  不安から漏れ出すため息を抑えるため、俺は口の中にご飯を押し込んで食べた。


  ーーーー


  食事も終えて食器を水につけると玄関先で人影が見えた。


  その影は家の前をずっとうろちょろしていて誰か来るのを待っているように見えた。


  憤怒していた妹もきっと何だかんだ言いつつ仲直りしようとしてくれてるのだろう。


  俺は軽く咳払いするとゆっくりと玄関の扉を開ける。


  朝の眩しい日差しと共に写り込んで来たのはカレー焦がし(未遂)の容疑がかけられた志保の姿だった。


  「なんだよ志保かぁ!!!!ぐっ!ぐるじい!!死ぬ死ぬ!」


 「おはよう、今日も暑いわね……そしてさよなら」


 おかしい!フラグは回避出来てなかったのか!?


 正直いつも通りっちゃいつも通りだからルート分岐がどこなのかさっぱりわからない。


 てか死ぬ。


 「は、話を……聞いてください!グハッ!……いや、人影が見えて泥棒だと勘違いしたんだよ!そしたらいつも来てくれてる志保だったからなんだただの美少女かぁって思っただけなんだよぉ」


 俺はかつてここまで早口で話した事があっただろうか。

 

 脊髄と防衛本能に任せて適当に話たが案外行けそうだった。


 「そ、そう言う事だったのね!安心したわ……美少女……」


  いつもそうだが志保は初心忘れるべからずなのか会うたんびにモジモジし始める。


  こんだけ何度もあって見て会話していれば慣れが発生するはずなのだが、志保にはないらしい。


  手癖なのか髪の毛をくるくると回し手提げ鞄で自分のスカート前に伏せた。


  いや、丈が短くて恥ずかしいなら伸ばせば良いじゃん。


  いやね、俺も短い方がいいと思うんですけどね、そんなんで痴漢だの何だの冤罪かけられるくらいなら長くてもいいと思いますよ?


  「ちょっと、見過ぎよ……恥ずかしいじゃない」


  「いや!み、見てないし!全然ほんと!」


  俺が狼狽しながら弁明するとそれが気に入らなかったのか志保は顔を豹変させイライラを露呈させた。


  「は?見てない?あなた今の行動のどこに見てない要素があったの?私個人の見解を述べさせてもらえるなら、まず第一に貴方のその私を舐め回すようないやらしい視線……そんなに嫌でもないのだけれど……が!私の短いスカートの隙間から見える太ももを」


  「嘘です!めっちゃ見てました!ごめんなさい!」


  これ以上志保を喋らせると一時間は過ぎてしまう。


 「そういえば雫と喧嘩でもしたのかしら?今朝すれ違った時仏頂面で挨拶してきたのだけれど?こう……顔をぷくっと膨らませて」


 なにそれ!?可愛い!!チェキいいですか!?


 もちろんお金払います!全財産300円ほどですが。


 「なによ……本当にこんな顔してたのだけれど?まさかクオリティが低いとか思ってるのかしら?なら私の顔を写真に撮って学校終わってすぐに帰宅してみなさい、そしたら同じ顔で雫がキッチンで料理してるから」


 あ、本当にチェキいいんですね。


  そんなやりとりをしている途中に不意に妙な視線を感じた。


  そりゃそうだ、志保がいれば奴もいる。


  裏があれば面もあり、また正義の味方がいれば人々に怯えられる悪もまたいるのだから。


  その妙な視線の位置を把握するとしばらく見つめあっていた。


  見つめあーう、しっせんのレイザービームで〜。


  奴は瞬き一つせずただ俺の瞳の奥にある本心に訴えかけて来た。


  「それ以上話したら分かるよね?」


 気がつけば俺の背後に美代がいた。


 咄嗟に振り向きその恐怖に尻餅ついてしまった。


  いや怖!何で瞬きしてないの?ロボットなの?最近のロボットでも瞬き一つくらいしそうだけど。


  「あ、み、美代じゃないか!おはよう!そろそろ学校だし行こうか、うん」


  俺は慌てふためきながらも二人に有無を言わさず学校へそさくさと向かった。

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