全くひねりがないと言うか。
普段ならあり得ないことが起こるからストーリーになって面白いと感じるわけだ、ただ授業中の風景を淡々と書く小説のどこに魅力があるだろうか?
現実じゃありえないことの繰り返し!次々に襲いかかる困難みたいなのが人間面白いって感じるのだ。たまに日常パートもね。
そんな訳で美代をこれ以上喋るとメンタルえぐられそうなので止めときますか。
「ちょっと待って!もっと簡単に簡潔に感想聞いてもいい?」
美代の開きかけていた口を大声でかき消すなり。
「簡単に?えっと〜面白かったよ?」
「それはよかった……ははっ」
危うく異世界ものハーレムものを書いてる人に怒られるところだったよ……。
「美代さ〜んちょっと来てもらっても大丈夫?」
美代は先生に呼び出しを食らうとまた後でねと言ってこの場を立ち去った。
よく見れば辺りに人影はなく、どうやら俺と美代だけがここに滞在していたらしい。
普段なら志保が容赦なく絡んでくるのだが皿洗いやらカレーやらを内心気にしてるのかもしれない。
暇だなぁ……脳内でアニメでも再生させようかなぁ、それか俺が異世界へ行ったと言う程でシナリオを作るか。
俺もしばらくあたりをウロウロしていると他の生徒は友達と楽しそうに遊んでいた。
「さっきのカレー美味しかったね〜」
「やっぱ伊藤の作るカレーは美味しいなぁ、この間も家行った時……良かったらこの間の続きしない?」
「え?ここでするの?でも周りに人もいるし……」
「大丈夫だって……愛してる」
「もう♡んっ♡」
あの〜キックしてもいい?ねえ?キックしても良いよね?
そうですか、そうですか、俺は空気扱いですか……まじで蹴り飛ばしてぇ。
ひとまずバレたら気まずいので撤退した。
何で俺が気を使わなきゃならんのだ、続きなら家でやれ家で、てかやるな。
あれ?もしかしてブーメラン?
周りの人も同じ事を思ってたのか!?
俺は原っぱにいたカエルを見つめた。
あのカエルが擬人化して萌えキャラになったら確実に幼女だな。
緑色のレインコート着たぱっつん系、普段は無口だけど雨の日になると元気で甘え上手。
そんな事を想像しながらカエルに近づくとゲコゲコと逃げて行った。
なんで逃げるの?俺はゆんゆんなの?寂しい。
もう悪魔が友達でもいいよ?だけどメンヘラとヤンデレは勘弁。
その後、俺は1人ポツンと砂場の真ん中に立っていた。
空は晴れて心地よい風を感じる……なんだかいろんな事を思い出すなぁ。
昔……くだらない落書きのせいで志保と美代があんな性格になっちゃったんだよな……。
もう一回書いたらどうなるんだろうか……。
また神様的な人に逢えるのかな?
そんな恐ろしい事を俺は何のためらいもなく考えてしまった。
それくらい暇だと言う事だ。
こんなぐだぐだしてたらぐだぐだエブリデイ流れちゃう。
「何してるんですか?」
あれ?天使?……あぁなんだユンか、ついに人の域を超えて届かない存在になったのかと思っちゃったよ。
「特に何も」
素っ気ない返事に訝しげな表情を浮かべたユンだったがすぐに自然な笑顔を作る俺の隣にしゃがみ込んできた。
あっ……恋しちゃったかも。
「何かあったのですか?相談に乗りますよ?」
やっぱユンは優しいなぁ……でもぶっちゃけさっきのリア充見て落ち込んでるとか死んでも言えないしなぁ。
それに志保も少し心配だ、別に志保が十中八九悪いのは間違いないだろうがいつも絡んで来るくせにこう孤立させられるとなんか色々気付かされる物がある。
「一緒に行きましょ?志保さんと美代さんのところに」
そう言ってユンは俺の手を優しく握ってくれた。
こんなに柔らかい人肌は初めてででもユンの手はヒンヤリとしていて今の俺には気持ちよかった。
あ、鍵のこと聞くの忘れてた。
なんでこう後回しにしてしまうのかは分からんが命かかってるんだから早く鍵を手に入れるべきだろ。
よし、流石に実行しよう。
俺は引っ張られる手を止めユンの目を見つめる。
「あのさ?逆になんか困ってることない?俺もちょっと相談したい事があってさ」
あ、もうちょっと握っていたかった。
ユンが手を振り解き正面を向く。
その姿はいつになく真剣な表情だ。
「構いませんよ、それでは先に雪くんのお話から聞きましょうか」
えっと何から話せばいいのか……。
あの二人に殺されかけてます鍵ください。
うん、意味わからん。
「えっとね、実はユンが何か悩みを抱えているってとある人から聞いたんだよね、そいつはなんて言うか……お、俺の親友でさ!そいつが困ってると俺も困るっていうか……つまり!ユンの悩みを知りたいのが俺の悩みって事なんだよね!」
ん〜!何言ってるかさっぱりだ〜。
ユンも考える仕草しちゃってるよ〜そこも可愛い。
「なるほど……私の事を詳しく知ってる方からご依頼を受けたと……わかりました、そんな大した話でもないのですが聞いて下さい」
俺はコクリと頷く。
「実は私にはお兄ちゃんがいまして、私がラノベに詳しいのもお兄ちゃんのお陰なんです。色んな趣味を持っていてその中でも特にアニメが好きで私もお兄ちゃん子だったからよく真似してたんです、けどある日を境に全く構ってくれなくなったんです……今のブームは妹ものより姉ものなんだよって言ってて」
あーその人多分かなり残念な人だわ。
と言うかこれをどう解決しろと?
俺に何か出来ることはあるのか?
考えろ考えろ……やべなんも思いつかねー。
「分かった、帰ったらお兄さんにこう言ってみて。お姉ちゃんにまっかせなさ〜いって」
いや、自分で言ってても恥ずかしけどユンにそんな顔されたら生きていけないです。
「わ、分かりました!今度やってみます」
あ、なんか分かってくれたみたい。
照れながらもユンは頑張るぞいのポーズをとっていた。
「では相談に乗ってくれたお礼に防弾ジョッキを差し上げます父のお古ですがよかったら使ってください」
は?まさかこれが鍵なの?
ちょっと無理矢理過ぎない?てかそりゃ実用性満載だけどさ?
全くひねりがないと言うか。
「ちょっと、何二人で仲良くしてるのかしら?」
「そうだよ、そこは美代のポジションなんだから」
「は?あなた何言ってるの?いつも寝言は寝て言えって言ってるわよね?そもそもあなたが……」
遠くから二人の声がする。
はっ!鍵は手に入れただけじゃダメだ!
すぐに使わなくては!
俺はユンの目線も気にせず防弾ジョッキを着た。
帰り際のバスは疲れて寝てしまったのだが胸元にはアイスピックが防弾ジョッキ貫通スレスレくらいまで刺さっていた。
なにこれ?




